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伊坂幸太郎「マリアビートル」

2011-12-06 | 小説
酒浸りの元殺し屋「木村」。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」「檸檬」。運の悪い殺し屋「七尾」。物騒な奴らを乗せた新幹線は、北を目指し疾走する! 
元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線“はやて”に乗り込む。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み―物騒な奴らが再びやって来た。『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲

 

伊坂さんらしい作品で、満足!しばし、伊坂ワールドに浸り。非日常を味わいつつ。物騒な男達の個性がひかる!

脇役の塾講師「鈴木」さんと中学生にして正真正銘の悪「王子」とのなぜ人を殺してはいけないのかの問答は、興味深い。

殺し屋達のそれぞれの質問に対する答えで失望していた「王子」がただ一度言い返すことができなかった。

蜜柑と檸檬の死はとっても残念だったけど、福引きの景品として復活させたのが、せめてもの伊坂さんのユーモアと暖かさだ。

檸檬のトーマスのキャラクターへの思い入れも、トーマスファンだった私にはとっても楽しく読むことができたし、あれをまさか…。人生の教訓のように生きる殺しや。。に親しみすら感じました。

何はともあれ、最強の悪。峰岸と王子の結末が、銭形平次や遠山の金さんのように安心して眠れそうな結果になってホットしている。

人生まったくついていない七尾だけど、そんなunluckyな人間は、生き残り、辛く嫌なこと、ばかりの人生でも、生きていけることが大事だって。感じる。

アル中の木村が助かってよかった。できの悪い息子だけど…人情があって。我が子は可愛い誰だって。

現代は、親子関係が歪で、犯罪に親子の事件も多いけど、木村3世代のからっとした親子関係と何よりいざというときの判断力。行動力。ほっとする。私たちは、本当は、何が大切なのか、大切にすべきものは何か。

王子の分析~人間には自己正当化が必要だ。自分は正しく、強く、価値のある人間だ、と思わずにはいられない。だから、自分の言動がその自己認識とかけ離れたとき、その矛盾を解消するために言い訳を探し出す。他人に屈服させられた場合にも童謡だ。自己正当化が発生する。自分の無力や非力、弱さを認めないために、別の理由を見つけ出す。相手は優れた人間に違いない、このような状況になれば誰であろうと抵抗はできないと納得する。

世の中に、正しいとされていること、は存在しているけど、それが本当に正しいかどうかはわからない。だから「これが正しいことだよ」と思わせる人が一番強いんだ。

アーサー~恥ずかしがり屋で赤紫のきかんしゃです。とても仕事熱心で、事故を起こしたことがないのが自慢です。(お守りかわりの福引きのうらに描かれた機関車)

トーマスに騙されて事故を起こしたことがあるアーサーだけど。やんちゃなトーマスの「記録なんて壊されるためにあるのさ!」もあるいみ深い。

天道虫レディバグ、レディbeetle。の由来がよいな。マリア様の七つの悲しみを背負って飛んでいく。~あの小さな虫が、世の中の悲しみを黒い斑点に置き換え、鮮やかな赤の背中にそっと乗せ、葉や花の突端まで昇っていく。これより上には行けない、というところまで行くと、覚悟を決めるためなのか、動きを止める。一呼吸空けた後、赤い外殻をぱかりと開き、伸ばした羽を羽ばたかせ飛ぶ。

天道虫の話は、ちょっとメルヘンでよいな。自分の悲しみをその虫が持ち去ってくれた、と想うことが出来るって…。

 



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