「白光」 とはいっても全く明るい話ではないし、壊れていく人間関係、大人の男女関係を題材にしていますので、生徒にはちょっと…(笑)。ですが、大変すばらしいミステリーだと思いますので紹介させて下さい。
連城三紀彦氏は、『恋文』(直木賞作品)に代表される恋愛小説を書いている作家だと思っていましたが、デビューはミステリーだったそうです。本書は新聞か何かの書評を読んで購入しました。
ある家庭に起きた、4歳の子供の殺人事件からすべては始まります。
その家族や親戚など、事件にかかわる数人が、それぞれすべて独白という形でストーリーが展開していきます。その語りの中で、家族に投げかける疑惑など、微妙な心理描写などにひきつけられ、ずっと緊張感が続きます。
モノローグとはいっても、意味ありげな冗長な背景説明もなく、ある程度のスピード感がある上、そこでの疑心暗鬼からうまれる告白によって、別の人物の考えが誤っていたり、だまされていたりしていることを知り、事件の様相が変移します。
崩壊する家族、ぬぐいがたい不信感、まるで360度見渡せる、殺人事件という山の頂上があって、それを前後、上下、左右、さまざまな角度からの映像で、ショーのように次々と見せているかのようで、幻惑されます。子ども、老人、男、女あらゆる視点が交錯します。
それでいても展開自体はわかりやすいですし、“ムリすじ”などもありません。素直にそのどんでん返しに何度も驚くことができました。
いよいよページ数が残り少なくなり、いくつかの矛盾するような考えが重なったまま終盤、いったいどうやって話のつじつまを合わせるんだろうと思っていると、驚くべきラストが待っていたんです。
ちょっと悲しい最後ですが、抜群におもしろい、すごいなぁ~と感じた一冊で、もちろん一気読みでした。(^_^)v
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P.S. あの、ふるさん がミステリー小説のお気に入り10冊をTBしてくれました。私はこれまでミステリーはほとんど取り上げていないので、ちょこっとやってみました。
そういえば、同じく家族の殺人(少年犯罪)を扱った、ミステリーの秀作、『さまよう刃(東野圭吾)』を以前ご紹介しましたね。かなり趣は異なりますので一概に比べられないでしょうが、この “すごいなぁ~” という点で、やはり連城氏の練達の筆に軍配をあげたいですね。
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『白光』連城三紀彦
朝日新聞社:262P:1575円