強引に10本選んでみた。最初に「マイフェイバリット本」で書いていたら、すごい数になってしまったので、カテゴリー分けしてみたら、「海外ミステリー編」「時代小説編」「NF編」「科学系編」「国際謀略編」とキリがなく、そしてめんどさくなった。
「オールタイム・ベスト10」だと言いたい所だが、それに近いラインナップということでご容赦を。また「ミステリー」とは何か?は別の機会に。
「火車」宮部みゆき
この小説を読んだときに、ああ俺は日本人に生まれて良かったと思った。この作品が直木賞の候補に挙がったときに、選考委員の一人のドグサレ大物小説家が「最後まで、ある人物が出てこないから」という理由で却下したそうだ。出てこない所に、この小説が今までになかった、新しいあり方を示してくれたこと、それがこの小説の意味だと言うのに。直木賞と言う賞が近年、日本が世界に誇る「ムダ賞」だということがよく分かる。
読み進めて行く内に、この本が終わってしまうのが寂しいと思った。
宮部みゆきは、初期の名作「魔術はささやく」や、「龍は眠る」などが、むしろ最近の物よりオススメかも。
「占星術殺人事件」島田荘司
いわゆる「新本格」ミステリー時代を切り開いた先駆者的作品。本格ミステリーというのは、殺人事件が起こって、誰がやったのか?どうやってやったのか?という謎解きを読者に対して、フェアーにヒントを与える作品(=俺の定義)その本格ミステリーが停滞気味になっていたのが、この作品を起点にして綾辻行人、有栖川有栖、我孫子武丸、等によって90年代初頭頃に「新本格」ブームを迎えた。
この作品がすごいのは、謎解きがシンプル。「そうだったのか!」「どうしてそれが思い付かなかったんだ!」そして「そうきたのかよ!」と驚愕させてくれること。かなり設定に無理があるミステリーの場合、そう思わせてくれないので(例:「硝子のハンマー」貴志祐介)
たかがバラバラ殺人なのに・・・ここまで・・・ぶっ飛んだ・・・
「愛を乞うひと」下田治美
映画にもなっているので、見た人もいるかもしれない。
ストーリーについてもあまり語りたくない。
「語るに落ちる」になりそうなので。
ただ、言えるのは、この本を読んでいる途中で涙がポロポロこぼれて止まらなかったこと。加えて、小説を再読することはめったにないのだが、この小説は繰り返し読んだ。
「カディスの赤い星」逢坂剛
逢坂剛は、ライフ・ワークにしている「スペイン内戦もの」、「脳神経学方面からのミステリー」、「警察小説」、「マカロニ・ウエスタン」とかなり多彩である。
どんでん返しの嵐に巻き込まれる「百舌シリーズ」かこの作品にするか迷ったのだが、このシリーズは順番に読まないと全く意味がないので、あえて一冊ということでこれにした。
スペイン内戦+ギター+現代との時間のクロスオーバー
ドキドキハラハラに知的興奮。プロット、キャラクター造形。何も文句のつけようがない。そしてある意味こういう作品がすごく「ちから」を持つのは、それまで全くスペイン内戦に興味がなかったのが、読んでから、猛烈に興味が沸いて来たこと。
Aを読んだら→B,Cまで読みたくなる
こんな連鎖を引き起こす作品こそ、出会ってよかった作品だ。
余談ながら、主人公が恋愛をするのだが、その相手の女性は、俺の中で、小説に出て来た「理想の女性」第一位だ。
「白昼の死角」高木彬光
かなり古い。その内に「わが読書体験」でも書こうとは思っているのだが、中学1年のときにこの本に出会ってから→活字中毒者へまっしぐら。その意味で敢えて入れた。
実在の事件「光クラブ」を下敷きにした小説。最近この事件を振り返る本が出てきた。
この小説ではかなりデフォルメされてる(ことがだいぶ後になって分かった)
「悪いやつ」がどうやって悪いことをするのか。
ドラマ「クロサギ」で詐欺の手口紹介的なことをやっていたが、手形のパクリやかご抜け詐欺など、既にこの本に載っていた(と思う)こんな本中学生から読んでるから、こんな大人になっちまった・・・
今でも覚えているのが、この本分厚い。そして角川文庫で定価500円だった。
当時文庫で500円はなかなかない。
「影武者徳川家康」隆慶一郎
これは時代小説+ミステリーと言ってもいいかもしれない。「このミステリーがすごい」で確か1位になってたと記憶してる。
設定は、実は家康=影武者だった だけなのだ。
そしてストーリーは関が原以降の家康。日本史でもそれほど波乱万丈の時代じゃなく、面白みにかける時代じゃないかと思っていたら、
全然違う。面白すぎる。この際影武者であろうがなかろうがどっちでもいいってぐらい、息子や嫁その他の裏で蠢く勢力・・・
この作者はもう鬼籍に入ってしまった。
デビューがかなり遅かったので、作品はそれほど多くない。
亡くなったことが本当に惜しい小説家だ。
上に書いた「読書連鎖」というリアクションは、→隆慶一郎の他の作品を読み漁る→「真田太平記」をなぜか読むだった。
「雨鱒の川」「翼はいつまでも」「ららのいた夏」川上健一
近頃の「泣ける」というような薄っぺらな小説とは訳が違う、寡作で知られる川上健一の傑作3冊。何も語りたくない。
「美味礼賛」海老沢泰久
品切れなのが残念だが、フランス料理のシェフとして辻料理専門学校を作ったことでも有名な辻静雄の壮絶な人生を描く。
これを読むと、「食い物なんてたかが生きるために必要な栄養だろ?」という俺の考えすら変わってしまった。
伝記という名のかっぱえびせんがヤメラレナイ&トマラナイのは、たまにデカイ鉱脈に出会うからだ。俺が(大嫌いな)巨人軍の昔のオーナー正力松太郎は、ナベツネよりは、遥かにまともな人間なんだろうとずっと思っていたら、佐野眞一の「巨怪伝」を読むと、大間違いだったと気づく。
「俺たちの日」ジョージ・P・ペレケーノス
ワシントンサーガ4部作の第一部。ぜひ4冊とも手にとってもらいたい。
「LAコンフィデンシャル」「ブラック・ダリア」のジェームズ・エルロイのLA4部作がちょっと、と言う人にも薦められる。ギリシア系移民の親子三代に渡る物語。犯罪ものというジャンル分けもできない。ハードボイルドにやや近いだろう。
ミステリーファンならご存知の40年に渡る事件解決への大河警察小説ともミステリーの傑作とも言えるスチュワート・ウッズの「警察署長」ぐらいしか比較できるものが思いつかない。
10冊に絞るつもりだったが、約10冊にになったし、10という数字にあまり意味がないだろう。
江戸川乱歩がどうして入らない?横溝正史は?R.D.ウイングフィールドの「クリスマスのフロスト」は?どんでん返しの連続のフィリップ・マーゴリン「黒い薔薇」、業界人なら「嘘ちん」と呼ぶデビット・マーティンの「嘘、そして沈黙」は?いやいや「ドグラ・マグラ」だって。なにぃ!横尾忠則「インドへ」は!「アヒルと鴨のコインロッカー」はどないしたねん!ブライアン・フリーマントル先生も、フレデリック・フォーサイス師匠も、マイケル・バー・ゾー・ハー御大もミネット・ウオルターズ姉さんもお怒りだぞお!!
あー。
仕方ないので
スパイ小説界に燦然と輝く大巨匠ジョン・ル・カレ様に聞いてみた。
そしたら、
ヨ・カレ
ってことだったので。
いや、実はこの記事書いては直し、どれ選ぶか、数ヶ月かかった。
記事書くのは常に早い俺にしては異例中の異例だ。
で、結局決まらないので、エイヤっと出してしまったのが真相だ。
特に好評でなくても、も少し本については語る。いや語らせろ。
いいえ、語らせて下さい。
余談ながら、このブログで何かのレビューをするときに、なるべく「オススメ」という言葉は使わないようにしている。
今日の教訓
だって
おすぎじゃ
ないもの
※追記:マイ・フェイバリット【映画10本】
「オールタイム・ベスト10」だと言いたい所だが、それに近いラインナップということでご容赦を。また「ミステリー」とは何か?は別の機会に。
「火車」宮部みゆき
この小説を読んだときに、ああ俺は日本人に生まれて良かったと思った。この作品が直木賞の候補に挙がったときに、選考委員の一人のドグサレ大物小説家が「最後まで、ある人物が出てこないから」という理由で却下したそうだ。出てこない所に、この小説が今までになかった、新しいあり方を示してくれたこと、それがこの小説の意味だと言うのに。直木賞と言う賞が近年、日本が世界に誇る「ムダ賞」だということがよく分かる。
読み進めて行く内に、この本が終わってしまうのが寂しいと思った。
宮部みゆきは、初期の名作「魔術はささやく」や、「龍は眠る」などが、むしろ最近の物よりオススメかも。
「占星術殺人事件」島田荘司
いわゆる「新本格」ミステリー時代を切り開いた先駆者的作品。本格ミステリーというのは、殺人事件が起こって、誰がやったのか?どうやってやったのか?という謎解きを読者に対して、フェアーにヒントを与える作品(=俺の定義)その本格ミステリーが停滞気味になっていたのが、この作品を起点にして綾辻行人、有栖川有栖、我孫子武丸、等によって90年代初頭頃に「新本格」ブームを迎えた。
この作品がすごいのは、謎解きがシンプル。「そうだったのか!」「どうしてそれが思い付かなかったんだ!」そして「そうきたのかよ!」と驚愕させてくれること。かなり設定に無理があるミステリーの場合、そう思わせてくれないので(例:「硝子のハンマー」貴志祐介)
たかがバラバラ殺人なのに・・・ここまで・・・ぶっ飛んだ・・・
「愛を乞うひと」下田治美
映画にもなっているので、見た人もいるかもしれない。
ストーリーについてもあまり語りたくない。
「語るに落ちる」になりそうなので。
ただ、言えるのは、この本を読んでいる途中で涙がポロポロこぼれて止まらなかったこと。加えて、小説を再読することはめったにないのだが、この小説は繰り返し読んだ。
「カディスの赤い星」逢坂剛
逢坂剛は、ライフ・ワークにしている「スペイン内戦もの」、「脳神経学方面からのミステリー」、「警察小説」、「マカロニ・ウエスタン」とかなり多彩である。
どんでん返しの嵐に巻き込まれる「百舌シリーズ」かこの作品にするか迷ったのだが、このシリーズは順番に読まないと全く意味がないので、あえて一冊ということでこれにした。
スペイン内戦+ギター+現代との時間のクロスオーバー
ドキドキハラハラに知的興奮。プロット、キャラクター造形。何も文句のつけようがない。そしてある意味こういう作品がすごく「ちから」を持つのは、それまで全くスペイン内戦に興味がなかったのが、読んでから、猛烈に興味が沸いて来たこと。
Aを読んだら→B,Cまで読みたくなる
こんな連鎖を引き起こす作品こそ、出会ってよかった作品だ。
余談ながら、主人公が恋愛をするのだが、その相手の女性は、俺の中で、小説に出て来た「理想の女性」第一位だ。
「白昼の死角」高木彬光
かなり古い。その内に「わが読書体験」でも書こうとは思っているのだが、中学1年のときにこの本に出会ってから→活字中毒者へまっしぐら。その意味で敢えて入れた。
実在の事件「光クラブ」を下敷きにした小説。最近この事件を振り返る本が出てきた。
この小説ではかなりデフォルメされてる(ことがだいぶ後になって分かった)
「悪いやつ」がどうやって悪いことをするのか。
ドラマ「クロサギ」で詐欺の手口紹介的なことをやっていたが、手形のパクリやかご抜け詐欺など、既にこの本に載っていた(と思う)こんな本中学生から読んでるから、こんな大人になっちまった・・・
今でも覚えているのが、この本分厚い。そして角川文庫で定価500円だった。
当時文庫で500円はなかなかない。
「影武者徳川家康」隆慶一郎
これは時代小説+ミステリーと言ってもいいかもしれない。「このミステリーがすごい」で確か1位になってたと記憶してる。
設定は、実は家康=影武者だった だけなのだ。
そしてストーリーは関が原以降の家康。日本史でもそれほど波乱万丈の時代じゃなく、面白みにかける時代じゃないかと思っていたら、
全然違う。面白すぎる。この際影武者であろうがなかろうがどっちでもいいってぐらい、息子や嫁その他の裏で蠢く勢力・・・
この作者はもう鬼籍に入ってしまった。
デビューがかなり遅かったので、作品はそれほど多くない。
亡くなったことが本当に惜しい小説家だ。
上に書いた「読書連鎖」というリアクションは、→隆慶一郎の他の作品を読み漁る→「真田太平記」をなぜか読むだった。
「雨鱒の川」「翼はいつまでも」「ららのいた夏」川上健一
近頃の「泣ける」というような薄っぺらな小説とは訳が違う、寡作で知られる川上健一の傑作3冊。何も語りたくない。
「美味礼賛」海老沢泰久
品切れなのが残念だが、フランス料理のシェフとして辻料理専門学校を作ったことでも有名な辻静雄の壮絶な人生を描く。
これを読むと、「食い物なんてたかが生きるために必要な栄養だろ?」という俺の考えすら変わってしまった。
伝記という名のかっぱえびせんがヤメラレナイ&トマラナイのは、たまにデカイ鉱脈に出会うからだ。俺が(大嫌いな)巨人軍の昔のオーナー正力松太郎は、ナベツネよりは、遥かにまともな人間なんだろうとずっと思っていたら、佐野眞一の「巨怪伝」を読むと、大間違いだったと気づく。
「俺たちの日」ジョージ・P・ペレケーノス
ワシントンサーガ4部作の第一部。ぜひ4冊とも手にとってもらいたい。
「LAコンフィデンシャル」「ブラック・ダリア」のジェームズ・エルロイのLA4部作がちょっと、と言う人にも薦められる。ギリシア系移民の親子三代に渡る物語。犯罪ものというジャンル分けもできない。ハードボイルドにやや近いだろう。
ミステリーファンならご存知の40年に渡る事件解決への大河警察小説ともミステリーの傑作とも言えるスチュワート・ウッズの「警察署長」ぐらいしか比較できるものが思いつかない。
10冊に絞るつもりだったが、約10冊にになったし、10という数字にあまり意味がないだろう。
江戸川乱歩がどうして入らない?横溝正史は?R.D.ウイングフィールドの「クリスマスのフロスト」は?どんでん返しの連続のフィリップ・マーゴリン「黒い薔薇」、業界人なら「嘘ちん」と呼ぶデビット・マーティンの「嘘、そして沈黙」は?いやいや「ドグラ・マグラ」だって。なにぃ!横尾忠則「インドへ」は!「アヒルと鴨のコインロッカー」はどないしたねん!ブライアン・フリーマントル先生も、フレデリック・フォーサイス師匠も、マイケル・バー・ゾー・ハー御大もミネット・ウオルターズ姉さんもお怒りだぞお!!
あー。
仕方ないので
スパイ小説界に燦然と輝く大巨匠ジョン・ル・カレ様に聞いてみた。
そしたら、
ヨ・カレ
ってことだったので。
いや、実はこの記事書いては直し、どれ選ぶか、数ヶ月かかった。
記事書くのは常に早い俺にしては異例中の異例だ。
で、結局決まらないので、エイヤっと出してしまったのが真相だ。
特に好評でなくても、も少し本については語る。いや語らせろ。
いいえ、語らせて下さい。
余談ながら、このブログで何かのレビューをするときに、なるべく「オススメ」という言葉は使わないようにしている。
今日の教訓
だって
おすぎじゃ
ないもの
※追記:マイ・フェイバリット【映画10本】
繰り返し何度でも読める小説との出会いがどのくらいあるか、それが幸せの尺度でもあると思います。私、購入した本は全部残しておきたいので、莫大な量になってしまって・・・でも、その中から発掘して何年かぶりに読んでまた感動を新たにするという繰り返しが死ぬまで続くと思うとそれもまた幸せです。さて、発掘しようかな、「白昼の死角」そして、本屋さんに行きたい病がムクムクどうもありがとうです
買ったのは6年くらい前なのに、先月まで気付きませんでした。うちの本棚はカオスです。
隆慶一郎の「死ぬことと見つけたり」の上巻も2冊あります。
カオスです。
好きなミステリーはロバート・ブロックの「サイコ2」です。映画を見た後に読むと更に面白いという、稀有な小説です。映画はくそでしたが。
じゃ、ピーコ??
ふるさんはなかなかインテリな方ですね。
チョコひとは、最近は医療関係の
本ばかり。
昔は推理小説好きだったけれど、もう
ずいぶん読まなくなったなあ。
“このミス”で一位になったという、「影武者徳川家康」が読んでみたいです。この流れから『真田太平記』は行っちゃいますよね。
私も年末に『影武者~』読もうかなー。ふるちんさんにこれを教えてもらわなかったら、今年の年末もまた司馬遼太郎になっちゃうとこでした。
『ドグラ・マグラ』は3ヶ月前に買ったんですが、まだ読んでないですね。
なんとなくふるちんさんは清水義範なんかも好きそうな気がしましたが入ってないですか。・・・
「火車」は、衝撃でした。日本人でもこれだけのミステリーが書けるんだ、と見直すことになった作品です。「ブレイブ・ストーリー」(ミステリーじゃないけど)はいただけなかったですけどね。
「白昼の死角」が出ましたか。わたしは新書版で読んだと記憶してます。たぶん高校の頃です。ピカレスク・ロマンに憧れました。
んー、全部読みたい!
チャンドラー先生どうでしょう?
こいつちっとも読まずに、つんどらー。
コメントありがとうございました。
しかしあの超ローカルブログにどうやっていらしたのか激しく気になるのですが・・・><
それと、あの記事は悪意などは決してなかったのですが、ご本人に失礼なものだったかもしれない、と反省しました・・・もし気分を害されましたら申し訳ありません。言って頂ければ削除しますのでお願いしますm(;´`)m
川上健一さんの本読んでみたいと思っていたので、ふるちんさんのぶろぐにあってなんだか嬉しかったです!
と、ふるさんの記事を読んで思いました。
なんだか、感性がどんどんリアルにとらわれて
貧相になってきているような気がします。
実益を考えないで、心を豊にする本を
久しぶりに読んでみようかなぁ~♪
悲しいです。
悲しむこともないか
これから読めばいいのだ
ってふるさんなら いいそーーーw
ステキな本の紹介ありがとうございます