ロンドンで FSB(KGBの後継機関) 元幹部のリトビネンコ氏が毒殺された事件に、プーチン大統領率いるロシア諜報機関が関与していたと言われています。そもそも、プーチン大統領自身がKGB の出身です。
命を狙われるのは、政敵だけでなく反政府の報道をするジャーナリストも同様です。ソ連崩壊後、これまで50人近くが暗殺されているという話もあるのですが、拙ブログでも、殺害された、アンナ・ポリトコフスカヤ氏が書いた衝撃的な一冊、『プーチニズム』をご紹介しました。
一方のアメリカでは、イラク戦争が争点になった中間選挙の敗北を受けて、ラムズフェルド国防長官が辞任。後任には、こちらも諜報機関、CIAの元長官のロバートゲーツ氏が権力の座に付きました。
日本はスパイ天国と言われ、スパイ防止法や“日本版CIA” を作れという声もかなり出ました。ところが、何でも出来るはずのそのCIAも、9.11のテロを防げなかった…。
本書の著者、ロバート・ベア氏は、もとCIAの中東における最高の現場担当官でした。つまりCIAスパイのエース格。氏がCIAに入り、20年以上に渡って中東などで行なった工作員としての活動を主に述べています。
10年ほど前からアメリカ政府やCIAの方針が変わり、スパイ活動やそれで得られた情報を重視することができなくなってしまい、その結果、9.11のテロを防ぐことができなくなってしまったと悔やんでいます。
元CIA職員というのは当局が検閲しなければ引退後も本などを出版できないそうで、本書ではあえてCIAの検閲が入ったところをそのまま残し、墨で塗りつぶされた状態で出版されています。(工作対象、交渉相手(エージェント)の名前に関するところが多い)
あからさまな批判は抑えているのですが、行間から氏のCIAの方針転換に対する忸怩たる思いが伝わってきます。二段組で、300ページほどのかなりの分量ですが、シリア、ベイルート、イラク、アフガニスタンなどでの命がけの活動場面はスパイ小説ようで、迫力があり、ついつい引き込まれます。実際、本書は映画化されるようですね。
本書が明らかにした、当時の新たな事実としては、CIAは96年当時、ビンラディンとイランが、対アメリカテロに関して契約を交わしていたことを知っていた。95年イラクでクルド人と反サダムフセインの軍幹部にクーデターをたきつけておきながら、最後に見捨てた。というようなことです。
いずれもクリントン政権時の出来事ですが、ブッシュはどうなのでしょう。パパブッシュ当時のCIA長官をラムズフェルドの後任にしたのですが、『ブッシュの戦争』を読むとブッシュはクリントンの武力の使い方を相当皮肉っているので、CIAの動きがまた活発になっているのかも知れません。
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相互リンクの、“すかいらいたあさん” が、私より、ずっとすばらしい書評を書いておられますので、ご覧下さい。
また、ロバート・ベア氏の興味深いインタビューをネットで見つけました。よろしければどうぞ。
『CIAは何をしていた』ロバート・ベア
新潮社:292P:2415円