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『真珠湾の日』 半藤一利

2006年12月08日 | 歴史
 

真珠湾の日 半藤一利.jpg



今日12月8日は太平洋戦争開戦、真珠湾攻撃の日です。この日からあの戦争が始まってしまったわけです。


以前、何かの本に歴史家の保阪正康氏が “真珠湾攻撃に関する限り、正確でよくまとまった書物はどこにもない” という旨を書いていました。


その理由として、特に天皇に関する資料というのは、当時、そう簡単に手に入るものではないらしく、そのためもあってか、逆にデマや思い込みによって書かれた書物はあふれるほどあるそうです。

また、政治的にではなく、真剣に歴史研究をしている外国人にとっても、日本が真珠湾攻撃にいたる経緯がどうも腑に落ちないという意見が多く、保阪氏に問い合わせてくることもあるようです。その中で信頼できる一冊として、本書を挙げていました。


このブログでも、半藤氏の著作は数冊紹介しましたが、中でも、『聖断』 と本書が、私には大変印象深い内容です。膨大な資料と関係者に対する直接取材によって、事実を丹念に読み取り、比較、検討し、見事に全体像を描ききっていると感じます。


小林よしのり氏ではありませんが、戦争はもちろん、日本国内の『いわゆるA級戦犯』 だけがはじめたのではありません。しかし、また逆に、ハルノートABCD包囲網など、日本が諸外国から受けた冷淡な扱いだけを取り上げても開戦を理解することができません。

国内、海外の情勢を見聞きし分析し、名も無き国民を含めて、無数の誰かが何かを決断し、意見を衝突させながらも、結果としてはあの悲惨な戦争にいたったわけです。


本書で描かれる開戦を決断するまでの日米のかけひきの場面、また連合艦隊司令長官の山本五十六氏の言動など、身震いがする思いがしました。また当時の日本国民の心境も挿話によって、とてもリアルに想像することが出来ました。

ルーズベルトの人格(ちなみによく聞かれるルーズベルト陰謀説は明確に否定しています)、東条英機の考え、外務省(アメリカ大使館員)の体たらく振りなど、実にさまざまな要因が絡んでいることを実感します。半藤氏のライフワークは本書ではないのかとすら感じました。


以前申し上げましたが、私は、『殉死』 を書いた司馬遼太郎氏に、明治ではなく、昭和や太平洋戦争の人物を描いて欲しかったのですが、やはり天皇に対する資料不足なのでしょうか、なぜか氏は手を出そうとせず、亡くなってしまいました。この一冊が代わりになると感じました。


司馬氏の小説を読むように読み進められますし、政治的な片よりも感じません。生徒諸君にもぜひ読んでもらいたいと思う一冊です。




http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】





P.S. 実はですね、もうお一人、相互リンクの気安さで、昭和を書いていただきたいと思い、しつこくお願いしているのが、真島先生。名著 『「浪士」石油を掘る』 の著者。こちらもお薦めです!

浪士石油を掘る.jpg

『「浪士」石油を掘る』 真島節朗
 共栄書房:243P:1800円




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