本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『アメリカの戦争の仕方』 Jr.ハリー・G.・サマーズ

2006年10月16日 | 外国関連


Amerika 戦争の仕方.gif


少し前であれば、大ニュースになるできごとでしょうが、テレビで自民党の幹部が『日本も核武装する可能性を検討する』 というような旨の発言を平然としていました。正直、防衛庁などが極秘に検討をするくらいだと思っていた私には、結構ショッキングでした。

もちろんそんなことが、マスコミで言え、それが大ニュースにならない環境にしたのは、北朝鮮の核実験ですね。隔世の感を禁じ得ません。国民の生命と財産を守るという、政府にとっては、風雲急を告げる状況なんでしょう。確かにありとあらゆる可能性に検討を加えてもらわなければなりません。


一方で、沖縄の嘉手納基地に配備する最新鋭の地対空誘導弾パトリオットミサイルの配備に反対する市民団体メンバーが座り込みをし、米兵や港湾作業員が車で入るのを阻止したと報道されました。これにも驚きました。意図がいまだにつかめません。


以前、『日本の戦争力(小川和久)』 などでも触れたように、とにかくアメリカ抜きでは、日本の防衛ができないのが現状ですが、そのアメリカの軍事的思想などを紹介した一冊です。

本書はアメリカ軍の教授が書いたアメリカの戦略をまとめたやや専門的な内容です。アフガニスタン空爆や、イラク戦争(2002年)当時に出版されたもので、筆者自身が1999年に亡くなっています。 つまり、9.11テロが起こる前に書かれているのは承知しておいた方が良さそうです。

さらに、その後のイランや北朝鮮問題、さらに米軍再編などがいわれましたので、現在は修正されているかもしれませんね。ただしパウエル元国務長官は、発売当初「現代アメリカ人必読の書」といったそうです。彼も軍人でしたね。


当時のアメリカ軍が目指す装備というのは一度に二ヶ所で地域紛争を十分戦えるというものだそうです(本書では不可能であると指摘していますが)。冷戦後に次々現れた国際社会の紛争、混乱は、ソ連崩壊によって、核戦争の可能性がほぼなくなったことに起因していると主張します。

独立戦争から現代まで、アメリカの戦争に対する考え方、世界戦略などを解説しています。 目次を紹介しておきましょう。


第1章 軍と国民の特殊な関係
第2章 アメリカの戦争の仕方
第3章 新しい世界の混乱
第4章 戦闘のさまざまな側面
第5章 戦闘のドクトリン
第6章 戦闘部隊の組み換え
第7章 戦闘の技術と作戦
第8章 アメリカ軍事政策の“十戒”

最後の十戒ですが、これがアメリカの戦闘の哲学といえるようなもので、こちらもご紹介しますと

1.“三位一体”の戦争を忘れるな
2.核による戦争抑止力を強めよ
3.海外の核防壁を維持せよ
4.通常兵器こそがカギである
5.敵をおびえさせよ
6.自国の力を錯覚するな
7.技術の罠に陥るな
8.軍隊は平和維持活動地域の周辺を固めよ
9.軍事政策の方向性を設定せよ
10.何よりも、戦闘拡大能力の優位性を維持せよ

以上です。


北朝鮮のおかげで、日本人は、緊迫感を持って、軍事や平和のことを考えるようになった気がします。それ自体は良いことだと思うのですが、ソフトランディングできるかどうか、政治家はここ最近では、非常に重い使命を背負っているわけですね。



http://tokkun.net/jump.htm
 

アメリカの戦争の仕方

講談社

詳   細





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『マンガ金正日入門』 李友情(著) 李英和(訳)

2006年10月09日 | 外国関連

金正日入門.JPG

ついに、北朝鮮が核実験を成功させてしまったようですね。東アジアはこれで、一気に緊迫した場面を迎えましたね。

韓国も核を持つと言い出したら(実際、極秘に開発していたと報道されましたね)、日本はどう対処すべきか、まだまだ日本では議論すらされていません。

せっかく日中・日韓関係が修復できそうな雰囲気で、さてこれからという段階での、核実験でした。安倍さんも、総理就任早々、この大きな不安が現実のものとなりましたから、いきなり指導力、危機管理能力を試される問題にぶつかったわけです。うまく対処してもらいたいものです。


これまで、外交や北朝鮮関連の本 を何冊かご紹介しましたが、中には、アメリカが北朝鮮に武力行使することを明言していた『アメリカの世界戦略を知らない日本人―日高義樹』 もありました。イランやイラク問題で忙しいとは思いますが、最悪、ミサイル攻撃なんていう可能性があるのでしょうか。

ともかく、中国、韓国の政府、国民も、やはり北朝鮮より日本の方が信頼できると感じてくれて、今後、いろいろな点で協力して行動できると良いのですが…。 その意味では、皮肉なことに核実験をしてくれたおかげで、日中韓はぐっと接近できるかも。


本書の目的は “韓国民に金正日の本質を知らせること” だそうですが、韓国では発売直後に出版禁止になってしまいましたが、日本ではとても売れた一冊です。

北朝鮮関連の本を読んでいる人は、北朝鮮体制の残酷さや、政治指導者達の非人間性は百も承知だと思いますが、本書は金正日個人にスポットをあてています。  私にとっても、金正日個人に対しては、はじめて触れる情報が多く、興味深く読みました。

その生い立ちから描かれており、金日成の後継者の座に着くまでの権力闘争などは想像していたよりずっと激しいものでした。思想的な理想があるわけではなく権力と富を独占したいというだけの男として描かれています。

筆者が韓国で本書を出版したころ、タイミング最悪で、金大中政権の太陽政策が実施されていました。今の盧武鉉大統領も同様の太陽政策ですが、今回の核実験で大幅な政策転換があるんでしょうか。

筆者は、同じ太陽でも、北を焼いてしまうような、“太陽政策”を取らねばならないと主張します。確かに本書の内容が真実であれば、このような体制は一日も早く無くなるべきだと感じますが、残念なことにこの体制の存続に貢献しているのは、これまでは他ならぬ日本であったということを考えると複雑な気持ちです。



とりあえず核実験のニュースを受けて、予定外の記事UPでした。


P.S. 世界史受験生諸君!予定外でも、せっかくだから、勉強しよう!
太陽政策といえば、第二次世界大戦前のイギリスによる宥和政策です。チェンバレンやミュンヘン会談、大丈夫かな。確認を!

→『入試に出る!!時事ネタ日記


http://tokkun.net/jump.htm 


『マンガ金正日入門』 李友情(著) 李英和(訳)
飛鳥新社:342P:1260円

マンガ金正日入門-拉致国家北朝鮮の真実

飛鳥新社

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『親日派のための弁明2』 金完燮(キムワンソプ)

2006年10月07日 | 外国関連

 
安倍総理が中国、韓国を訪問し、首脳会談が実現するようです。不思議なのは、あれほど“小泉首相が、日中、日韓関係を悪くして、首脳会談もできなくなった” と強く批判していた人々が、安倍総理のこの決定を、よくやった!と褒めないことです(笑)。

いずれにせよ、どんな話になるのか、北朝鮮問題が中心だとは思いますが、靖国や教科書、歴史認識などを取り上げるのか、今後とも首脳会談を継続するように持っていけるのかがポイントでしょうか。

韓国では盧武鉉大統領とも会談します。いつの間にやら、対日強硬姿勢に転じてしまった感のある韓国政府ですが、しばらく前の新聞に“韓国で初めて、ソウル大学に日本研究所が設立”と出ていました。多くの反対を乗り越えて、やっとできたようです。

そうした動きを見ていますと、本当に日韓関係は大きな曲がり角を迎えているのだなと思います。

以前、『そして日本が勝つ(日下公人)』 の中でも、韓国民のアンケートをご紹介しましたが、友好に向かうのか、反日を強めるのか微妙な時期なのでしょう。その意味で今回の日韓首脳会談は日中に劣らず注目しています。


本書は、『親日派のための弁明』 の続編に当たるものです。前書は、韓国では有害図書に指定され、日本では大きな反響を呼びました。正確をきすためか、細かく書かれていましたが、2の方はそれに比べて非常に読みやすく、刺激的でした。

日本、韓国、北朝鮮の関係がとてもわかりやすく解説されていますし、日本の人々に韓国の歴史の民主化を応援して欲しいと思っているようです。韓国政府が日本に突きつける歴史認識では、韓国は世界から相手にされなくなるという危機感があります。

いろいろな本を読みますと、まだまだ現実問題としては、あの韓国でさえ、言論の自由があるとは言い難いようです。実際に、“親日派” というだけでかなり危険なようですし、こんな本を書いてしまった筆者自身も身の危険を感じているようで、家族を出国させていると記憶しています。


そして、教育関係者には、巻末に注目して欲しいのです。教科書問題を取り上げています。

当教室 などでも、講師間でたびたび話題になる歴史教科書ですが、実際、韓国がどのように注文を付け、日本政府がどう回答しているのかということまでは知りませんでした。

本書には、日本の教科書の記述(主に扶桑社)・韓国政府の修正要求・日本政府の回答・そのやり取りの解説が付けられています。非常に参考になります。ぜひ多くの方にお読みいただきたい一冊です。


http://tokkun.net/jump.htm 

親日派のための弁明2

扶桑社

詳  細


『親日派のための弁明2』金完燮(キムワンソプ)
(文庫も出ています)



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『ロスチャイルド家―ユダヤ国際財閥の興亡』横山三四郎

2006年09月30日 | 外国関連

 
ロスチャイルド家は世界でもっとも知られている財閥ですが、しばしば金で国家をも動かす力すらあるといわれます。そしてロスチャイルドといえばユダヤ人。世界の金融を支配し、全世界の富を独占しようとしているという、陰謀説もあとを絶ちません。

日本の歴史にも深い関係があります。日露戦争というのは、外から見れば到底勝てる戦争ではありませんでしたが、ロスチャイルド家がユダヤ人社会に、日本への巨額の融資の根回しをしました。ロシアはユダヤ人を迫害していたために、日本を応援したかたちです。


本書はロスチャイルド家の歴史を、ユダヤ人や世界の歴史と重ね合わせて解説したものです。

ロスチャイルド家の物語は、今から200年以上も前、ユダヤ人がゲットーと呼ばれるスラム街に強制的に押しこまれている時期、初代マイヤーが起こした古銭業から始まります。それに成功し、やがて高利貸しになるわけです。

そして、マイヤーが、その死に臨んで5人の息子たちに、束ねた5本の矢のように結束し家業を発展させるように遺言します。その5人はヨーロッパの主要都市、フランクフルト、ナポリ、ロンドン、パリ、ウィーンへとそれぞれ渡り、遺言と ユダヤ教 をしっかり守りながら、ロスチャイルド家をヨーロッパ一の金融王国に育て上げていきます。

それを可能にしたのは、兄弟の結束の固さもさることながら、彼らが引いた情報網です。現代こそ、情報の価値は認識されていますが、当時からそこに目をつけていたんですね。日露戦争時に伝わった情報はどんなものだったか知りたくないですか?それで巨万の富を得たと言われているのですから。

おもに政府の起債を担当したり、鉄道などの大規模事業に投資したりすることによって、拡大していきますが、この200年は革命や戦争も多く、また何といってもユダヤ人ですから、さまざまな迫害や、存亡の危機も経験します。ヒトラーにもやられました。

しかし、何とかそれを切り抜け、戦後イスラエル建国に力を尽くし、現在も世界中に影響力を保ち続けていることは本当に驚異的です。

本書にはその過程と「こんなところもロスチャイルドか」というような例がたくさん紹介されています。


ダイアモンドで有名な『デビアス』、アメリカ最大のタバコ会社『フィリップモリス』、コーヒーの『ネッスル』や、紅茶の『ブルックボンド』、新聞の『タイムズ』と『ザ・サン』、通信社の『AP』や『ロイター通信』、アメリカの三大ネットワーク!さらに数多くの銀行などなど…。ちょっと信じられないほどですね。


以前ご紹介した『 ユダヤ人とローマ帝国(大沢武男) 』も非常にわかりやすい良書でしたが、本書とあわせて読むと、中東情勢への理解がより深まると思います。

イランやイラク、パレスチナとなぜイスラエルが血みどろの戦いを続けるのか、日本人とはまったく異なる、宗教、歴史がそうさせるということが痛感されます。興味のある方にはお薦めできる一冊です。



P.S. すぐに勉強と結びつけると、生徒は引いてしまいますが(笑)、ユダヤ人迫害と中東に関して、genio先生にお願いしてまとめてもらいました。

受験生は要チェック! → 『入試に出る!時事ネタ日記_


http://tokkun.net/jump.htm
 

ロスチャイルド家―ユダヤ国際財閥の興亡

講談社

詳  細


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金持ちけんかせず  ■■
 

と言いますが、ロスチャイルドの歴史は、戦いに次ぐ戦い。ユダヤ人は優秀だとも言われますが、その血塗られた歴史がそうさせるのか、その闘争心と執念、信心深さは日本人とは異質ですね。イスラエルが安定するには、あと何百年かかるのでしょうか?

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『不肖・宮嶋 in イラク―死んでもないのに、カメラを離してしまいました』

2006年09月20日 | 外国関連



つい先日も、NHKのBSニュースで、ある専門家が、『アメリカもイラク政府も絶対に、認めないが、すでにイラクは内戦状態にあるのではないか』 とまで言っていました。自衛隊は無事に任務を終えて帰国しましたが、イラクの状況は一向に先が見えませんね。

実際に新聞の一面にこそ載りませんが、いまだに、テロで死者が出たと繰り返し報道されています。ニュース番組でも、ハンカチ王子や飲酒運転ばかりで、イラク情勢が詳しく報道されることはぐっと減ってしまいましたが、日々殺し合いが続いている現実があります。

本書はイラク戦争開始から4週間かけて撮影した写真集です。テレビのニュース映像とは違い、凄まじい光景が出てきますので、小さなお子さんにはすすめられません。ただ、高校生以上であれば、こういう悲惨な戦争の実態を直視しても良いのではないかと思います。

常々、死んでもカメラを話さないと言っていた宮嶋氏ですが、滞在するホテルの隣のビルに トマホーク が直撃したとき、思わずカメラを投げ出し、防空壕に逃げ込んだそうです。隣の部屋が血の海になり、それも写っています。

途中に宮嶋氏のレポートもあります。一部抜粋しますと・・・

『不肖宮嶋、血と硝煙の匂いには慣れている。しかし、同業者の血を、しかもできたてのホヤホヤを目の当たりに、しかも大量に踏んだのは初めてである。頭の中がまっ白になったのも初めてであった』

『コミック・ジャーナリストだ、カメラをかついだ渡り鳥だ、ゴロツキ、一発屋、ヤマ師やと、愛や平和を全面に押し出されるマトモなジャーナリストからもマユをひそめられる。しかし、そんなこと私も百も承知。オノレがいかに無知かなんて、毎日新聞のカメラマンより、ずーっと自覚しているのである。平和ボケの日本で口にするヒューマニズムなんぞ、バクダッドじゃあ、250ディナール札1枚の価値もないのである』

『カメラマンは写真を残してこそ存在価値がある。ノーガキはいらない。この写真をどう評価するかは見る人間次第である。カメラマンは現場におって初めてカメラマンたりえるのである』

宮嶋氏自身のカメラマンとしての生き方に共感する人もいるでしょうが、何よりもイラクや、そしてアフガニスタンでも、一向に出口が見えていないということを忘れないようにしたいものです。

戦争
不肖・宮嶋inイラク―死んでもないのに、カメラを離してしまいました。

アスコム

詳  細

 宮嶋氏のHPで、いくつか写真を見ることができます。     
  →  http://www.fushou-miyajima.com/



http://tokkun.net/jump.htm 


『不肖・宮嶋 in イラク―死んでもないのに、カメラを離してしまいました』  宮嶋茂樹
アスコム:1980円



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 クーデターまで!  
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タイでクーデターというニュースには驚きました。でも、kazuさんの、いつにない(失礼)、冷静な分析記事を見て、少しホッとしました。さすがです。情報量が違います。クーデターが起こって欲しいのは…、あっ、いけない。

ランキングにクーデターはありませんので、地道に登ってまいります。できましたら、応援のクリックを、お願い申し上げます。

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『毛沢東を超えたかった女』 松野仁貞

2006年09月13日 | 外国関連


中国には二人の神がいる。一人は毛沢東、もう一人は私、劉暁慶

と語った、この女性をご存知でしょうか?


女優で中国の国民的スターです。私は映画をあまり見ないので知りませんでしたが、ハリウッドでも日本でもいくつかの映画に出演しているそうです。彼女の出世作は「 西太后 」という映画だそうです。

西太后自身が、中国三大悪女の一人とされ、非常に貪欲、残酷な人物であったそうですから、劉暁慶にぴったりはまる役だったのでしょう。

冒頭の言葉からもわかるように、とてつもない気宇壮大な発想の持ち主です。医者の治療費すらままならなかった貧乏な家の娘が、女優として、あるいは不動産ビジネスなどで大成功を収め、巨万の富を得た「改革開放」の申し子のような存在です。


最後には政治にもかかわるようになるなど、チャイニーズドリームという言葉があるのかどうか知りませんが、毛沢東の “文化大革命” から、小平の “改革開放” への時代変化を表わす、象徴的な人物です。

しかし、社会主義国の中国では、あまりの経済改革のスピードに、それ以外の社会制度も国民の意識も付いていけません。すべてが農村社会の枠組みから脱皮する前に起こってしまったのです。

劉暁慶は、食料を “配給” してもらう立場から、一気に資本主義の権化のような姿になってしまったのですが、“納税” という意識すらありませんでした。

結局、当時の 朱鎔基 首相の逆鱗に触れ、脱税容疑で逮捕されてしまいます。

利用できるものは何でも利用し、頂点を極めたかに思えた直後の逮捕。この事件の衝撃は日本では予想の付かないほど大きなものだったようです。

一人の尊大、不遜な女性が中国建国以来の混乱や文化大革命、改革開放をしたたかに生き抜いた半生を描くことによって、現代中国の等身大の姿を映し出す、興味深い一冊でした。

先日も 『 中国暴発 』 をご紹介しましたが、生徒には、こうした個人にスポットを当てたものの方が、中国の様子をよく理解できるでしょう。



P.S. たまたま、タイミングよく、仲間の “genio” 先生が、中国(毛沢東) についての時事問題に関して、書いております。受験生は絶対にチェックするように。中国時事はどこかで必ず出題されます!

→ 『 入試に出る!時事ネタ日記 』

毛沢東を超えたかった女

新潮社

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『毛沢東を超えたかった女』松野仁貞
新潮社:250P:1575円

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『ブッシュの戦争』 ボブ・ウッドワード

2006年09月11日 | 外国関連
チョムスキー が批判したアメリカの本質的な攻撃性。そのアメリカ政府がテロ後、どのような形で動いたのか、9.11テロ当日からアフガニスタン攻撃、そしてイラク攻撃へという流れの3ヶ月を生々しく描いています。アフガニスタン空爆は、2001年9.11テロからわずか一ヶ月ほどで実行されています。

本書は、2003年2月、今まさにイラク戦争が始まるのではという時期に、出版されました。雑誌や新聞の書評には 『最高の著者による最高のノンフィクション』 というようなことが書かれていました。

アフガン攻撃の前から、イラクなど多方面への攻撃を進めるラムズフェルド国防長官(ネオコン)、それに賛成ながらやや控えめなチェイニー副大統領、国際協調を主張し、イラクなどへの攻撃の正当性に疑義をはさむパウエル国務長官、ペンタゴンと対立を続けるテネットCIA長官。

そして、それらの調整役であり、ブッシュが最も頼りにする、当時ライス安全保障担当補佐官(現国務長官)と主役のブッシュ大統領。これらの人物の動きをテロ後の一日ずつが議事録あるいは日記のように書かれています。

ウォーターゲート事件で、ニクソン大統領を追い詰めた、大物ジャーナリストであるがゆえに許される要人との接触を通じ、実に丹念に取材したことがうかがえる一冊。内外の対立やジレンマを克服しながらブッシュ政権の政策が決定される過程が手に取るようにわかり、臨場感があります。

日本の政界にもこうしたノンフィクションが書けるような土壌が欲しいと思わざるを得ません。暴露的要素もあり、良く書けたものだと感心します。ブッシュのリーダーシップはすごいですね。戦争を決断するという次元ですから、日本にはなじまないのですが、日本の政治家のスタイルとの違いを痛感しました。

ただし、本書を読んでもブッシュの勉強不足は残念ながら事実なようですから、その並外れたリーダーシップは逆に、パウエルが去った今、かなり危険ともいえそうです。

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ブッシュの戦争

日本経済新聞社

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■■ 平和あってこそ  ■■  ブッシュ大統領個人だけでなく、アメリカという国の政府の特徴が感じられます。平和あってこその繁栄なんですが… クリックしていただけるとうれしいです。
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P.S. どうしても、もうひとこと!
500ページ近い長編なのに、ほとんどアフガン問題に割かれ、イラク、北朝鮮関連の記述がほとんどないのが大いに不満でした。というのも、↑の写真ご覧下さい。本書の帯にはでかでかと 『イラク攻撃はこうして決定された 』『 「金正日は大嫌いだ」とブッシュは叫んだ 』 と書いてあって、アフガニスタンのことは全く触れていないんです。

本書の発売の少し前、2002年に日朝首脳会談が開かれていますので、当然、アメリカの北朝鮮に対する政策に日本人の関心も高いですし、イラク攻撃直前ですから、そちらも気になります。なのに、本書の内容はほとんどアフガニスタン。

以前、ご紹介した、"『「ドラゴン桜」わが子の「東大合格力」を引き出す7つの親力』親野智可等 は書名自体がひどいものでした。帯や書名にだまされる方が悪いのですが、嫌いですね、こういう売り方は。

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『9・11-アメリカに報復する資格はない』ノーム・チョムスキー

2006年09月10日 | 外国関連


2001年9月11日から5年が経つのですね。今では、あのアメリカでさえ、イラク戦争の大儀が疑われ、ブッシュ大統領の支持率は急落していますし、イギリスのブレアー首相の退陣まで発表されました。

日本は、結局、自衛隊の海外派兵までして、アフガン空爆、イラク攻撃を支持したわけです。自衛隊は立派に任務を遂行したようですが、肝心のイラクの状況は相変わらず、自爆テロなどが頻発し、なかなか安定した政権ができず、イラク戦争はすでにベトナム化とさえ言われます。

しかしです。9・11当日の、旅客機がビルに突っ込み、やがてビルが崩壊する、あの衝撃的な映像を私もはっきり覚えていますが、その後のアメリカでは星条旗が大量に掲げられ、マスコミは一致して愛国心を高揚し、国が対テロ戦争一色に染まり、アフガニスタン空爆はあっという間に決まりました。

当然、ブッシュ政権批判や、反戦運動など報じられる余地は少なかったはずですが、その中で、テロ直後から、孤独な戦いを繰り広げていたのがチョムスキーです。

本書はそのために緊急出版されました。 アメリカは正式文書にテロの定義を

政治的、宗教的、あるいはイデオロギー的な目的を達成するため、暴力あるいは暴力の威嚇を、計算して使用すること。これは、脅迫、強制、恐怖をしみこませることによって行われる」 としています。

チョムスキーもそのように理解し全く妥当な定義だとしています。ところが、もしその定義を当てはめると世界最大のテロ国家はアメリカになると主張しています。実に見事なロジックです。

第二次大戦後アメリカが戦争または爆撃を行った国を列挙すると、

中国、朝鮮、ガテマラ、インドネシア、キューバ、コンゴ、ペルー、ラオス、ベトナム、カンボジア、グレナダ、リビア、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、イラク、ボスニア、スーダン、ユーゴスラビア、

そしてアフガニスタン、(今またイラクとなります)もこれに加えるのかという訳です。 さらにチョムスキーはもちろん精緻な議論で「テロ国家アメリカ」という指摘をするのですが、このように国名を挙げるだけで、アメリカの本質をわかりやすく指摘したわけです。

今となっては、あの情報洪水の中で、筆者の勇気、先見の明、知性のすばらしさを示した、価値ある一冊になりました。



P.S.緊急出版したためか、残念ながら、翻訳がいまひとつで、読みやすいとは言えませんので、最高レベルの英語力を身に付けたい大学受験生などは、原書にチャレンジしてもらいたいですね。

http://tokkun.net/jump.htm 

9.11

文藝春秋

詳  細



『9・11-アメリカに報復する資格はない』ノーム・チョムスキー
文藝春秋:157P:1200円(文庫本も出ています。590円)

■■ 真相 ■■ まだまだ9.11に関する論争は続きそうですが、信頼できる情報を見極めるのがいかに難しいか痛感します。なるべく良質の書籍をこれからも紹介できればなと思います。よろしければ  クリックしていただけるとうれしいです。
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『韓国の軍隊 徴兵制は社会に何をもたらしているか』 尹載善

2006年09月04日 | 外国関連

『 そして日本が勝つ 』 の記事で、韓国における、日本人気の高さをご紹介しましたが、アジア以外から見ていると、きっと日本と韓国は同じように見えるでしょうね。国旗は似ていますし、近くですし、何と言っても、ワールドカップサッカーを仲良く共催したんですからね。

しかし、『 日本人らしさの構造 』 でも触れたように、日韓の文化には大きな隔たりがあります。韓国には徴兵制があることも、今の日本との大きな違いです。

韓国の首都ソウルと北朝鮮の軍事最前基地の間は、最短48km、車だとほぼ40分の距離だそうです。かつて“ 戦闘開始から数分でソウルを火の海にする ” というような北朝鮮からの発言もありました。

当然のことながら、万一不穏な動きが認められた場合の危機感や市民の恐怖感は、海を隔てた日本とは比べ物にならないはずです。現在は表面上、平時を装ってはいますが、国家の備えとしてまだまだ、徴兵制は韓国では不可欠のようです。

日本人にとっては、徴兵制ほどおぞましいものはないという感覚ですが、ドイツでも徴兵制があり、“国防” という意識がみなにあるので、徴兵制はもっとも公平で民主的だと考えていると聞いたことがあります。単純に言えば、納税と一緒で、いやなことはみんなで負担しようということです。  

本書は韓国軍の簡単な歴史的経緯や、構造、その使命を解説した上で、“徴兵制は社会に何をもたらしているか”というのを考察した一冊です。しばらく前に、韓国プロ野球選手50人ほどが徴兵逃れのために、違法な薬を使ったことが報道されました。

やはり誰も好き好んで人格を無視されるような厳しい軍隊訓練を望みませんし、一流アスリートにとって、20歳前後の伸び盛りの二年間を軍隊で過ごすのは何とも残酷です。が、国防は何にも変えられないという意識でしょう。

北朝鮮の拉致問題が明らかになって以降、日本の中にも、“平和はただじゃない” という意識が高まってきましたね。中国の日本側水域付近の油田やガス田の開発問題、ロシア軍による日本船員銃撃と、韓国との竹島問題。最近はそういうニュースも多くなりました。

国防を強烈に意識する安倍さんが政権に付くと、これからさらに論争が始まり、イヤでも意識せざるをえなくなりそうです。

筆者は、軍隊のない平和なアジアを理想とします。だからといって韓国の徴兵制廃止を主張したり、軍や武力そのものを否定したりしません。徴兵を終えてこそ大人として認められるという韓国思想というか、軍隊文化というか、そういうものを紹介し、多くの兵士達の生の声を伝えています。

軍隊がいかに厳しいものかということもわかりますし、正直、彼らに同情の念さえわいてきてしまいます。日本の自衛隊を取材した『 兵士に聞け 』 と読み比べますと、日韓の軍人の意識の差も興味深いです。


http://tokkun.net/jump.htm 

韓国の軍隊―徴兵制は社会に何をもたらしているか

中央公論新社

詳細を見る


『韓国の軍隊』 尹載善
中央公論新社:249P:798円



■■ 日本は恵まれています ■■

多くの国にとって、平和も水もただじゃないんですね。徴兵制もなく、とりあえず勉強をしっかりしていればOKの日本の18歳の受験生は、それだけで幸せ者なんですね。だから、文句を言わず、しっかり勉強しようね(笑)。ハイ、わかった人は、どうか  クリックして下さい。<m(__)m>

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『中国暴発』 中嶋嶺雄 古森義久

2006年08月24日 | 外国関連
  
いきなり『中国とはなんなのか』 と始まっています。大規模な経済発展の真っ最中の中国ですが、やはり一党独裁の体制ですから、国内で何が起こっているのか、分かりにくいですね。

ひとつには、日本の新聞が『中国の実態を書かない』 と強く批判します。どういうわけだか、マスコミにも政治家にも中国を刺激してはいけないと信ずるグループがいて、それが日本人の中国観をゆがめていると指摘します。

ビジネスマンが愛読する日本経済新聞、かつてはエリート層が読むといわれた朝日新聞、この大マスコミ2社は、中国の人民日報と業務提携しているというではありませんか。

実態はわかりませんが、提携というのですから、中国政府の意見を伝えることには役立っても、都合の悪い記事が書きにくくなることは当然でしょう。確かに、アメリカなどが盛んに取り上げる、中国国内の人権問題などは、日本では大きく取り上げられていない気がします。

お二人の意見では、中国の経済は、これまで日本や他のアジア諸国のような発展段階を踏むとは考えられないそうです。安い賃金は貧しいからというよりも、政府の政策で安く押さえつけているからで、その不満はかなり中国を不安定な状況に追い込むと。

地方で、また貧富の格差の問題で、遠からず暴動が起こるとか、不良債権が顕在化するなどの指摘は、マスコミなどで時々目にします。このブログでも、これまでも数冊、中国関連の書籍 を含めて、外国を扱ったものを紹介しましたが、本書が一番、中国に批判的かつ悲観的です。


軍事にしてもこの時代に異常な軍拡路線をとり続けているのは、(アメリカさえ何とかなれば) 本気で台湾を取りに出るつもりだとも指摘しています。北京オリンピックか台湾かの二者択一を迫られれば、中国は台湾を取ると…。う~ん、どうでしょう。

私自身は、そう言われても、まだ、他の国と違って、全体像がイメージできない気がします(勉強不足なんですが…)。アジアカップサッカーの時の反日ぶりに驚き、デモの投石に驚き、それを謝らないという態度にさらに驚き、反国家分裂法に驚き、潜水艦に驚きという程度の理解度です。

確か、石原慎太郎だったと思いますが、『中国の歴史、文化には敬意を払うが、今の共産党政権はダメだ』 というようなことを言っていました。私も中国文化には大変な敬意と興味を持っていますが、日本に対する今の中国の態度は、やはり属国に対するそれむき出しのように見えて、正直、好きになれません。実は個人的にはすばらしい中国人を知っておりますので、現在の険悪な両国関係は残念です。


日中の経済は順調だと報道されますが、この尊大な隣人と政治的にどう付き合うか、本書を読んで、ますます難しいと実感します。


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『中国暴発』 中嶋嶺雄 古森義久
中国暴発―なぜ日本のマスコミは真実を伝えないのか

ビジネス社

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ビジネス社:198P:1565円



■■ ランキングお礼 ■■ 

にほんブログ村 本ブログへ   おかげさまで、1位です。も~う、後ろからかわるがわる、新しい魅力的なブログに追いかけられて、終わりのないマラソンを走っているみたい(笑)。本当にありがとうございます。

 わ~ すごい、今この瞬間、わずか10点差(1クリック差)で、3位です! (^_^)v。 感謝・感謝。でも2位の“ハムリンさん”は、私の倍!以上の得点。1位の“お玉おばさん”は、さらにその倍!!すごいですね。 これからどうしましょ? かわいくないとダメですから、“ビバりん”、とか “おビバおじさん” とでもしてみますか。あるいは、キムタツ先生にあやかって、ビバタツ とか? 

あは、ちょっとはしゃぎ過ぎですね(^_^;)。どうせ一時のことだと思いますので(笑)お許し下さい。

本当にありがとうございました。これからも生徒、ご父母の役に立てるよう、精進いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
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『アメリカの鏡・日本』 ヘレン・ミアーズ (伊藤延司 訳)

2006年08月15日 | 外国関連
  
先日、雑誌『 正論 』編集部の牛田久美さんから、私が 『 聖断(半藤一利)』 をご紹介したのに対し、

“『正論』にてマッカーサー米議会証言録を連載しています。よかったら、そちらもご見物下さいませ。”と、わざわざ拙ブログにコメントをいただきました。

(ところで牛田さんが“ 多芸多才・異端異彩 ”で紹介されていて驚きました。お若く、すてきなママさんです)

それはともかく…
すぐに拝見しました。マッカーサーの証言を牛田さんが、連載形式で翻訳・解説されていますので、ぜひご覧下さい。

さて、ご存じの方も多いと思いますが、実はマッカーサーのこの時の証言は非常に興味深く、いくつか当時の日本の状況、国民性を述べたうえで、

『彼ら(日本人)が戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障の必要に迫られての事だったのです』 と証言しています。

つまり、マッカーサーは、日本では東京裁判 をやらせ、徹底的に戦犯を裁いておきながら、自国の議会では、日本の戦争は、侵略戦争ではなく、自衛の戦争だったと、ある意味日本を弁護しているわけです。

ところが、それと似た主張をしている本書を、その同じマッカーサーが、東京裁判当時には、“公共の安全を脅かす” という理由で、出版を許しませんでした。著者のヘレン氏は戦後、GHQ の労働諮問委員会11人のメンバーの一人で、戦後日本の労働基本法の制定にもかかわっていました。

日本、中国にも長く滞在し、当然アメリカ軍の占領政策を実行する側の一員です。本書で、日本がなぜこのような戦争を行なったかを冷静に分析したうえで、自分たちが裁く側にまわったことに、“アメリカ人の信奉する法と正義の哲学に著しく反している” と直言します。

本書は東京裁判の判決の年(1948年)に書かれたものですが、アメリカ側の一部に、こうした考えがあったことも、マッカーサーの議会証言同様、注目に値します。本書の存在が、広く知られるようになったのはつい最近です。内容からして、当時のマッカーサーが出版を許すはずもなく、日本では長く伏せられていたためです。

日本が残虐行為をしていないなどと主張するのではありません。日本のそれを裁けるというのなら、原爆投下はどうなのか。まして投下する必要などまったくなく、ソ連との政治的駆け引きのために、原爆を用いたのだから、というような意見です。

日本は、ペリーによって開国させられ、アメリカやヨーロッパ列強を見習えと教えられ、そのとおりにしてきたが、ついにアメリカなどの利害とぶつかったために、日本だけが野蛮な国として裁かれようとしている、そのことを痛烈に批判しているわけです。

訳者は、日本が戦争にずるずると引き込まれていく過程、悲惨な戦争被害などの場面を、何度も泣きながら訳出したそうです。確かに、大国に日本が翻弄されているさまは、悲しみを誘います。

歴史的資料としても、大変貴重な一冊で、興味のある方には一読をお薦めします。戦争を二度と起こさないためにも、しっかりと実態を知っておいた方が良いはずです。


アメリカの鏡・日本 新版

角川学芸出版

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P.S.本書は完訳版ですが、私が最初に読んだのは、抄訳版で角川書店の新書(328P:781円)です。そちらだけでも十分刺激的でした。
抄訳版 アメリカの鏡・日本

角川書店

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■■ 8月15日がやってきました。反戦教育は日本より、アメリカや中国でやってもらった方が、ずっと世界平和に効果的だと思うんですが…。60年以上経っても、解決しない戦後問題があることに、あらためて、戦争の悲惨さを思い知らされます。ご賛同いただけましたらクリックをお願いします。 m(__)m ■■
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『ぬりつぶされた真実』 ジャン=シャルル・ブリザール、ギョーム・ダスキエ

2006年08月13日 | 外国関連
  
 
イギリスのヒースロー空港での、旅客機テロ計画で犯人グループが24人も逮捕と報じられ、7人の実行犯が1人ずつ英国発米国行きの旅客機に乗り込み、大西洋上で自爆テロを実行するという、想像を絶する、大規模な計画だったというではありませんか。

仮に1機だけに絞っていたら、テロは成功していたのでしょうか。恐ろしいことです。

“ウルトラダラー”を書いた手嶋龍一氏は、テレビで、これに関し、『アメリカでさえ、防げなかっただろう、まして日本なら、完全にムリだ』 というような衝撃的な発言をしていました。

日本には、Eメールや電話の盗聴など、諜報活動に強い制約があるし、タテ割り行政では、対応できないためだそうです。イギリスの、テロと戦ってきた歴史や失敗の教訓が、今回の逮捕につながったという分析でした。

本書は9・11テロの首謀者といわれるビンラディンの人物像と、テロの背景に迫ります。フランス最高の諜報機関が依頼し、3年を費やしたという大作です。スイスではビンラディン一家の圧力で発売禁止になったそうです。 

そもそもあの規模のテロ活動というものは、かなりの組織でなければ不可能なことはわかりますが、いったいその莫大な活動資金はどこから出ているのか。さらに、ブッシュとビンラディンが石油利権や金融ネットワークで、つながりがあるというではないですか。

本書を要約すると、

①アメリカはテロ以前から、企業のパイプライン建設のため、アフガニスタンの地理的重要性に目を付けてタリバンと極秘に交渉していた。空爆までもほのめかす強い調子で。その交渉失敗がテロに結びついた可能性が高い。

②ビンラディンはアメリカ軍駐留を許しているサウジに対して、強い非難を浴びせているが、ビンラディンを育て、活動を可能にしているのはサウジのオイルダラーである。そしてその関係はテロ後も続いている。

③FBIは明らかに様々な機関によるイスラム過激派への捜査を妨害していた。

④世界中にイスラム過激派の豊富な資金源がある。それは、ニセのNGO組織から正規の企業まで数多い。しかもそこには西側政府の要人たちがかかわる多岐にわたる利権も存在する。

これらのことが実に細かく、図や資料などで主張を補強しながら述べられています。ベストセラーとなっていましたが、まるで専門書のようで、決して読みやすい一冊ではありません。

私のような、のんびりしているごく普通の日本人には、にわかに信じられないほどの規模の、利権や犯罪のネットワークが世界には存在していることに驚かされます。ハンチントンの 『 文明の衝突 』 とは違った意味で、衝撃的です。

日本での、いわゆる盗聴法は、反対の声が吹き荒れました。私もあやし気な法律だと思っておりましたが、テロが起こってから、政府や警察の無策を批判するわけにもいきませんね。

日本のテロ対策は『途上国レベル』 (手嶋氏)だそうですから、テロリストに本気でねらわれたら…。ただでさえスパイ天国などと言われ、今日は、実際に、自衛官の自殺も詳しく報道されました。

こうして記事にして、危機をあおるのは本意じゃありませんが、だからといって、日本とは無関係だとはとても言えません。今のところ、いろいろ本を読んで勉強し、判断するしかないのでしょう。


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ぬりつぶされた真実

幻冬舎

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『戦争倫理学』 加藤尚武 

2006年07月31日 | 外国関連
 
イスラエルによる空爆で、子どもたちを含め、非戦闘員の多くの命が奪われています。避難所を空爆するなんて、平和慣れした日本人の感覚ではとても理解できませんよね。憎悪を呼び起こすだけですし、これこそ戦争犯罪じゃないのかと、怒りたくなります。

本書は、アメリカによるアフガニスタン空爆やイラク戦争が歴史的に、倫理的にどう位置づけられるのかの論点を明確にするために、2003年当時に緊急出版された一冊です。

完全平和主義としてカント、平和は人を堕落させると主張するヘーゲル、またマキャべリ、東京裁判で日本無罪論を主張し、戦争は国家の権利であるというパル判事、さらに当時の小林よしのり、西部邁などの考えを紹介、あるいは批判しながら戦争、戦争概念の歴史を振り返ります。

戦争に対して現代人が犯す誤解や善悪二元論の不毛さ、慣れの恐ろしさに警告を発します。

「戦争を論じ、いつか合意を作り出そうというのであれば、その前に互いが了解すべき基本的論点をしっかり確認しなければならない」という明確な意図で書かれています。

なぜ兵士は迷彩服を着たり、派手な軍服を着るのかという具体的、基本的なものから、上述の思想の変化、日本政府の憲法解釈の変化など内容は多岐にわたっています。

筆者も前書きで「戦争について考える上で必要な論点はすべて示したつもり」と述べています。既出の論文などを集めた上で、構成されていますので、全体を通すとやや雑な印象を受けますが、戦争を知らない我々には興味深い指摘が続きます。

加藤氏自身は平和主義者ですが、武力行使が認められる場合はあるという立場です。日本で一番有名な倫理学者だと、加藤氏を紹介しているサイトもありました。

とても、一度で本書のすべてを吸収できたとはいえませんが、戦争に関して考えるいくつかの座標軸のようなものをもらい、今後も参考にするであろう一冊です。



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戦争倫理学

筑摩書房

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『日本はもう中国に謝罪しなくていい』 馬立誠

2006年07月30日 | 外国関連

日中関係も、今、最悪だといわれますが、生徒たちに接していて驚くのは、あっという間に、子どもたちの中に、中国嫌いが広まったことです。問題意識の高い子ほど、そうなってしまった印象を持ちます。

きっかけは、靖国問題や教科書ではなく、あの反日デモと、何といってもサッカーアジアカップです。決勝戦は胸のすくような日本の勝利でしたが、やはり中国のファンの応援態度は、日本人にとっては後味が悪く、生徒たちに強い嫌悪感を植え付けたようです。

田中角栄首相のころは、パンダも送られるなど、日中友好ムードは確かにあったと思いますが、今いったい中国政府は日本をどのように自国民に伝えているのでしょうか。筆者は中国“人民日報”の元高級評論委員です。

以前、このブログで書かせていただいた、『 〈反日〉からの脱却 』の著者です。前作で、馬氏は3本の論文を載せ、そのうちの一つで、反日感情を植えつけることは中国の利益につながらないと訴えました。そちらも非常に興味深い一冊でした。

氏の立場上、国の内外で非常に注目を集めた一冊でしたが、本書はさらにその根拠などを明確にしています。本書の原題を訳せば『謝罪を超えて』となるそうです。

現在の中国政府は、一応型どおりに、靖国問題や教科書問題に対してコメントするものの、基本的には日中関係の改善を望んでいるように思えます。『 中国が「反日」を捨てる日 』清水美和 を読んだ後もそう感じました。

日の丸に似たデザインの服を着たアイドルが、ステージから引きずりおろされ、糞尿をかけるなどという事件が起こるようでは、中国は

『ずうたいばかりはでかいが、脳みそは子供のまま』

と痛烈に反日感情を批判します。

国際社会における“謝罪”というものを定義し、天皇や首相を含め、日本は公式に20回以上も謝罪しているとして、そのすべてを列挙、その上で、日本に“土下座”を求める愚を指摘します。

そのように国民を教育したのは、間違いなく中国政府に責任があるのですが、毛沢東を含め、小平、李鵬、江沢民など、共産党の歴代の指導者たちに対して一言も批判していないのがまた特徴的です。

日本で話題になり、韓国では有害図書扱いになった『 親日派のための弁明(金完燮) 』のように、自国政府の無知、悪意を暴くという本とは対照的です。アジアカップで暴走しそうな国民を何とかなだめようと必死になっていた、中国政府の考えがわかるような気にさせる一冊です。


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日本はもう中国に謝罪しなくていい

文藝春秋

詳  細


『日本はもう中国に謝罪しなくていい』馬立誠
文藝春秋:223P:1500円


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『誇りと抵抗』 アルンダティ・ロイ

2006年07月24日 | 外国関連

インドという大国に、ここ数年、ますます注目が集まってきました。IT先進国として、経済が発展すれば、10億の人口があるだけに、底知れぬパワーがあるでしょうし、グローバル化の中で、英語が通じるという強みもあります。

先日は、テレビのサンデープロジェクトでも “インド社会と日本企業” の興味深い経済特集がありました。日本からの投資も急増しているようです。

政治的にも、日本にとっては、中国に対するけん制という意味もあるでしょうし、相性も今のところ、中国よりは良さそうです(笑)。実際、ビジネスや観光でインドを訪れる日本人は増える一方のようです。私もあこがれます。

しかし、政治家やマスコミが喧伝する “発展” や “正義” という言葉の裏には、いつも表に出にくい残酷な現実が隠されています。中国でも地方は悲惨なものだということをよく聞きますよね。

アメリカでの9.11のテロ直後、ノーム・チョムスキー は“アメリカには報復する資格がない” と言って、報復一色に染まっていたアメリカ世論の中で、政府相手に孤独な戦いを繰り広げました。彼は、戦後アメリカが行なった戦争の相手国を列挙することによって、非常に分かりやすくアメリカの本質的な攻撃性を示しました。

インドでは、ブッカー賞 を受けている大物作家である筆者が、現政権に必死の抵抗を続けています。本書で、アメリカの帝国主義的性格がインド社会の腐敗と結託が招いた、残酷な現実をアピールします。ロイ氏の示す未来像では、仮に経済発展が現実のものとなっても、貧富の差の激しいインドでは、最貧層は家、土地を奪われ、文盲のまま放置され、電気や水が供給されず、餓死者は増加するというのです。

外国巨大資本には莫大な富をもたらし、インドの役人が私服を肥やすだけ。巨大ダム建設と電力事業のために立ち退きを求められる住民には、意見を聞かれるどころか、保証金や代替の土地すらなく、建設決定の事実さえ知らされていないというのですから。

世界のダム建設の相当数がインドに集中しているそうですが、すでに建設されたダムを詳しくルポルタージュし、ちょっと信じられないほどの惨状、また環境破壊などのすさまじさも告発します。

本書の序にチョムスキーが、本書とロイ氏を 「屈服と死をひたすら拒絶する」「あっぱれな戦いぶり」だと賞賛しています。

核兵器を持ち、カースト制 もある、日本とはまったくしくみの違う社会ですから、安易に我々の基準で判断できませんし、私はインドについてほとんど知りませんが、 “インドは狂っている”、 正直、そう思わせるほど鮮烈な印象を与える一冊でした。


P.S. 夏期講習 に突入しましたが、力が入ってついつい長くなってしまいました(笑)。夏休みの自由研究で、インドを調べてみたらおもしろいかもよ。



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誇りと抵抗―権力政治(パワー・ポリティクス)を葬る道のり

集英社

詳   細


『誇りと抵抗』アルンダティ・ロイ著
集英社:173P:693円


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