今回は、これまでと変えて、当教室で発行しているメルマガの記事から、『入試に出された本』をご紹介します。私以外にも、いろいろな先生が書評を書いてくださったのですが、お名前は勝手に出せませんので、無記名です。いつもと違いますが、一冊ずつ、ご紹介するより、こちらの方が見やすいと思います。今回は中学入試編です。
【14歳からの哲学】 池田晶子著 (トランスビュー 1260円)
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本書は2004年~6年の中学入試出典数第1位です。私が読んだのは2003年で、第一のお薦め!としましたが、小学生ではなく、書名のように中学生に薦めていました(笑)。『生きていることはすばらしいと思いますか』という問いかけから始まり、『すばらしい』『つまらない』『どちらでもない』の答えに対して、さらに問いかけ、どこまでも考えてみようと呼びかけます。考え抜いていくと今まで自分が思っていたことと全く逆の結論になったりします。哲学ですから、軽いノリではありませんが、アリストテレスだのカントだの、難しい人の名前や専門用語は出てきません。イチローなどを例にとり、幅広く、わかりやすく人生を語ります。考えて考えて考え抜いた上で『自分』を確認できれば、何も恐れることはないんだと教えてくれます。大人やご父兄にもお読みいただきたい一冊です。
【ぼくらのサイテーの夏】 笹生陽子著 (講談社 381円)
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大人が読んでも十分に楽しめるというか、もしかしたら大人の方が楽しめる作品なのかもしれません。「階段落ち」なんていう無謀な遊びも、思わず昔を思い出して懐かしくなってしまいました。主人公は引きこもりの兄をもつクールな桃井(自称ハードボイルドな小学6年生)。斜に構えていた彼も、複雑な家庭環境の栗田と接することで人を思いやるようになっていきます。ひと夏の「サイテー」な体験が人を成長させるものなんですね。本書は著者のデビュー作で、日本児童文学者協会新人賞を受賞しています。東邦大学付属東邦中、豊島岡中などで出題されました。
【キッドナップ・ツアー】 角田光代著 (新潮文庫 420円)
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5年生の夏休みに、主人公ハルがユウカイ(=キッドナップ)される。ユウカイしたのはだらしなくてどうしようもない父親。その父親がハルを無理矢理連れまわす。デパートに行ったり、夜の海に行ったり、肝試しをしたり。その連れまわしている間の細かい話一つ一つ、女の子の感じることが伝わってきます。時間を置いてもう一回読んでみたい本です。
【わが子に伝える「絶対語感」】 外山滋比古著 (飛鳥新社 1260円)
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「問題な日本語」に似た、誰もが陥りやすい日本語の間違いを指摘するような作品ではないかと思っていました。確かに巻末に一覧があったりもしますが、それが主題ではありません。子どもが幼少期の音楽教育において絶対音感を身につけていくように、幼い頃に母親が子どもに繰り返し読み聞かせていく事により正しい日本語をかぎ分ける感覚を身につけさせることが重要であると記しています。なるほどと思われる反面、言葉の変化を積極的には承認しないこと、少々具体性にかける部分が気にはなりますが、幼少期の日本語教育の重要性を知らせてくれる作品です。また、外山氏は国文学者ではなく、英文学者であることも興味深いところです。
【先生はえらい】 内田樹著 (ちくまプリマ―新書 798円)
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今までに出会った先生の中で、えらいと思われた先生は何人ほどいらしたでしょうか?しかし、簡単にえらいと言っても具体的に何がどうして、えらいのでしょう。では先生の中にはえらくない方もいらっしゃるということでしょうか?そうした半ば抽象的な問いに対する回答を中高生に向けて解説したのが本書です。先生はえらい、という意味や先生に対する思いもきっと変わると思います。また、学ぶことやコミュニケーションについての解説もあり、とても有意義な1冊だと思います。いい先生に恵まれないと嘆いている生徒諸君には特にお薦めです。
以上とりあえず5冊にしておきました。いかがでしょう。
http://tokkun.net/jump.htm
(当教室HPへ)
トラックバックありがとうございます。
「キッドナップ・ツアー」に、
とても興味を持ちました。
機会があればぜひ読んでみたいです。
「14歳からの哲学」に興味を持ちました。
哲学は難しそうですが、さわりだけでも、
馬鹿にも分かるような本でしたら、読んで
みたいです。
トラバ・コメント、リンクなど、大歓迎です。
今度、こちらのお気に入りリンクに登録させて
いただいて、よろしいでしょうか?
上州あられさん:もちろんです。私のほうでも、入れさせて下さい。
トラックバックありがとうございます
すごい読書量に圧倒されました。しかも、いろいろなジャンルの本を読んでいらっしゃるんですね。
私は新聞の紹介で知った本や、映画の原作の本を読んだりしているのですが、どうしてもジャンルが狭まってしまいます。
また訪問させて頂いて視野を広げ、おもしろい本を読んでいきたいと思います。
こちらで紹介されているの、どれも読みたいです。「数学ができる人はこう考える」も、買って手元にきたけど、まだ読めてない(沈)。仕事が忙しいのに加えて、超読むのが遅いんです、私。早く読むコツってないでしょうかねえ。