河合 まさにそのとおりで、一家言どころか、何家言もあるんですよ(笑)。というのは、僕の職業も幸福に非常に関係する職業と思われているわけです。言うなれば不幸な人がカウンセラーに会って幸福の道を見出すというのがいちばんみんな考えていることでしょう。だから僕も自分の仕事をしていて、「幸福とは何か」というのは常日頃とても考えさせられる。本当に大事なことでね。<o:p></o:p>
そのときに、われわれのところへ訪ねてくるクライアントの考えられている幸福というのが漠然としている。漠然としているけど、いまの人は「幸」というのが相当入っているんじゃないでしょうか。それはいまの世の中を見ていると、何かお金のある人は幸福そうに見える。ところが、実際は大変面白いことに、お金を持っている人でそう幸福な人がいません。これもまた非常に面白いところですよね。<o:p></o:p>
中沢 本当ですねえ。<o:p></o:p>
河合 僕、その例でよく出す事例は、本当に来られた人があるんだけど、見すぼらしい恰好して、もう完全にデプレッション(抑うつ症)の症状で来られた。聞いてみたら、思いがけないとてつもない遺産が入った。そのために、みんながたかりに来るわけです。<o:p></o:p>
中沢 親戚とかが来ちゃうんでしょう。<o:p></o:p>
河合 うん。それで金出しても誰も喜ばないんですよ。当たり前みたいな顔をする。そして出さなかったら「ケチや」と言われるわけです。<o:p></o:p>
中沢 うん、わかります(笑)。<o:p></o:p>
河合 そうでしょう。それで寄付しようと思いついてぱっと思い切ってしたりすると、「金があると思って、えらそうにしている」とか。一つもいいことがない。<o:p></o:p>
そのうちだんだん何も生きている面白味がなくなって、もう死のうかと。それで来られた人があるんですけど。講演のときなど、この例を出して、よく言うのですが、「診断は明らかである。〈イサンカタ〉である」(爆笑)ってみんなを笑わせている。<o:p></o:p>
中沢 最高!<o:p></o:p>
河合 その話をすると、誰も言うことは「おれもいっぺん〈イサンカタ〉になりたい」(笑)。ところが、みんなそう言うけどね、実際はなったら大変ですよ。<o:p></o:p>
中沢 ねえ。<o:p></o:p>
河合 僕はそのときに痛感したのは、大きい遺産をもらってしっかり安心して生きてる人は、もらわなくても安心している人です。そうでなかったら絶対何かおかしくなる。ところが、みんな漠然と幸福を考えていてよくわからないから、何か金がぼーんと入ってきたら幸福になるというイメージを持っています。現代人は金イコール幸福と考えすぎです。<o:p></o:p>
ところが、これもよく言うんだけど、『マクベス』にいい言葉があるんですよ。<o:p></o:p>
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