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津田塾大学のタヌキの糞分析(2016年3月分)

2016-04-02 03:08:33 | 生きもの調べ
津田塾大学のタヌキの糞分析(2016年3月分)

 麻布大学 高槻成紀

はじめに
 津田塾大学のタヌキの糞組成のうち2016年2月分はすでに報告したが、その後3月にも13サンプルを得て分析したので、報告する。
 糞は大学構内に発見したタメフン場で回収した(付図参照)。方法などの詳細は前報に記した。

結果と考察
検出物
 一部の糞から哺乳類または鳥類の骨が検出された(図1-1)。いずれも微細な骨に粉砕されていた。


図1-1タヌキの糞から検出された脊椎動物の骨

また鳥類の羽毛も検出され、資料16-3-9からは鳥類の脚の皮膚が検出された(図1-2)。


図1-2タヌキの糞から検出された鳥類の羽毛と脚の皮膚

 昆虫は量は多くなかったが、頻度は高かった。資料16-3-6からはハネカクシ類とマグソコガネ類が検出されたが、これはタヌキが食べたのではなく、タヌキの糞を食べに来た甲虫である(図1-3)。


図1-3 タヌキの糞から検出された昆虫類

 資料16-3-10からは貝殻(軟体動物)が検出されたが(図1-4)、これは野生の巻貝、二枚貝ではないと考えられ、あるいは人の食べ残しなどかもしれない。


図1-4 タヌキの糞から検出された貝殻

 種子がギンナン以外に少なくとも4種が検出されたが、種名は不明である(図1-5)。一部はイネ科、1種はアカソの可能性が大きい。またほとんどの双子葉植物の葉は枯葉が粉砕されたものであったが、一部にイネ科の葉があった。


図1-5 タヌキの糞から検出された植物

 またポリ袋などの人工物も検出された(図1-6)。これは残飯などの包装に使われたものかもしれない。


図1-6 タヌキの糞から検出された人工物


組成
 糞の組成を図2に示した。順序は日付順であるが、時間的な変化はみとめられなかった。番号4, 5, 12, 13はほとんどギンナンだけに占められていた。それ以外の糞は多様な組成であり、昆虫、鳥類、哺乳類、植物の葉などが少量ずつ含まれていた。哺乳類としたもののほとんどは毛であり、ネスミなど小型哺乳類と思われるものもあったが、それよりは太い毛も多かった。後者はタヌキの毛づくろいしたものである可能性がある。鳥類は哺乳類よりは程頻度であり、量も多くなかった。人工物は3例から検出され、微量であった。


図2 2016年3月のタヌキの糞組成

2,3月の比較
 2月の糞組成と比較すると、葉と脊椎動物(骨)、鳥類が減少し、昆虫、哺乳類、果実・種子が増加した(図2)。2月に多かった脊椎動物の骨は鳥類で、全体として鳥類が少なくなった。これはギンナンへの依存が強くなったためである。ギンナンが含まれていた資料はほぼギンナンだけであり、それ以外の糞試料との違いが大きかった。それらの糞には雑多な成分が少量ずつ含まれており、タヌキの食糧事情がよくないことを示していた。


図3 タヌキの糞組成の2月と3月の平均値の比較

まとめ
 3月は果実類は乏しく、ほぼ唯一の果実であるギンナンだけが含まれていた糞試料が4例あったが、それ以外の糞では占有率の多い食物成分はなかった。このような異質な糞が得られたのは、一部のタヌキがギンナンの場所を知っていれくりかえし利用し、別の一部のタヌキはそれを知らず乏しい食物を少しずつ食べていたのかもしれない。2月のように鳥だけが集中的に食べられていたという例はなかった。1例であるが糞虫(マグソコガネ類)が活動を始めたことがわかった。
 3月下旬からは植物が芽生えはじめ、4月になれば昆虫類も増加すると考えられるから、その推移をとらえたい。


付図 タメフン場においた自動撮影カメラで撮影された排糞するタヌキ(2016.3.13)
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