玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

棚橋早苗

2018-08-25 22:58:08 | 生きもの調べ
棚橋早苗(地球永住計画・武蔵野美大非常勤)
★はじめに
 数日たった今もまだ、写真を何度も見返して「楽しかったなぁ」と余韻に浸っています。
高槻先生の「伝える工夫」は本当に見事ですね。こどもたちを飽きさせず、心をガッシリと掴んでいましたし、むかし子どもだった大人も思わず笑ったり一緒に夢中になりました。タヌキのウンチの模型までつくってくるとは思わず、おどろきました!リアルで子どもたちも大喜びしていましたね。やはりウンチはみんな大好きなんですね(笑)。
 今回、準備段階からスタッフとして関わり現場をみることができたことに、喜びとともに、とても感謝しています。結果的にたくさんの人に参加していただくことができて本当によかったと思います。あの場にいたひとりひとりがどんなことを感じたのか、拝見することを楽しみにしております。

★玉川上水にて
 あの日は通行人がたまたまとても多い時間と重なり、道を開けるのはなかなか大変でしたが、フン虫トラップの1番から10番までの距離が近めでどんどん次のシールが見つかり、かかったフン虫をみるワクワク感とともとても楽しかったです。
 ほとんどの子どもたちが、ノートにトラップで採集できたフン虫の数(番号と数)をしっかりと記録していたことにおどろきました。

 観察で設置したものをすべて片付ける、ということも子どもたちに教えることはとても大切だと思いました。先生が
「今回は、フンとハシとシールの回収をします」
というと、フンは歳が上の方のいつきさんが引き受けてくれました。
「ハシを担当してくれる子はいますかー?」
と学生が何度か声をかけたのですが、みんなハシ役はやりたがりません。地味でつまらなそうに感じたのかなと思います。
 そこで、私は、歳がちょっと大きそうなかなとくんに直接
「ハシを集める役をやってくれないかなー?」
とお願いしたところ
「地味だなぁ…」
とちょっと体をひねりながら、あまり気が進まないようすでしたが、お父さんの
「地味だけどすごく重要な役目だよ!」
という声に押されて引き受けてくれました。お父さん、ありがとうございます!とても素敵な声かけだなと感激しました。
 今回観察したフン虫は、みんなに「汚い、臭い」と言われる「生き物のウンチ」を肥やしにする生き物で、そういう生き物がいないと、森や林はウンチでいっぱいになってしまう。そうならないのはフンを分解する生き物たちのおかげなのだ、ということと「片付けをする役目にも目を向けること」はテーマとしても繋がっていると感じました。自然環境の中に人工物のゴミを残さない、ということはもちろんですが、今回の企画で片付けることを教えることは、それ以上のものがあったと思います。

★教室にて
 教室では、こどもたちの反応のよさにおどろきました。最近は大学生くらいになると、あのような素直な反応が教室という空間では起こりにくいので、尚更です。大きくなると「空気をよむ」という習慣がついてしまい、それが悪い方向にも出てしまっているような気がします。
 手が動くのが早い子、ゆっくりな子など、みんな進め方が違うことも見ていておもしろかったです。
 みんなが顕微鏡をのぞくことに夢中になっていましたね。顕微鏡やシャーレの中のフン虫を見た後、記憶して絵を描く方法だったので、なかなか難しかったのではないかなぁと思います。できれば手元に1匹ずつフン虫を置いて、それを虫眼鏡で観察しながら描ける方が自然ですし描きやすいし、やはり「しっかり観察して描く」ことにつながりやすいと思います。子どもたちは何度も顕微鏡を覗きに行ったりしていて、それはとてもいいと思ったのですが、黒板のフン虫の絵や、高槻先生の紙粘土模型を見ながら描いたり作ったりもしていましたから、実際に何をみて描いたのかはわからないところです。
 高槻先生の「粘土はやってよかった、粘土の方が作りやすいようだ」という発見は私にとってもとても興味深いことでした。「2次元化する(絵を描く)」というのは、そこに一定ルールの変換が必要です。その点、「3次元はそのままを真似てつくること」ですから、とても自然なことです。大人になると、なぜなのか2次元化が当たり前になってしまい、逆に3次元の「立体はむつかしい」という人が増えますが、実はとても不思議なことです(もちろん確かに、立体は作る方も見る方も全方向から正確につくるということはとても難しいことではあるのですが)。
 改めて、フン虫は可愛くてかっこいい昆虫だなと思いました。黒光りする色と質感、カブトムシのような形、背中の凹み、手足のギザギザなど、とてもおもしろいです。さらに小さな虫が背中に止まっていて、フン虫がとても大きく感じました。
 終わった後ですが、関野先生と学生2名が
「フン虫2匹くらいを手の中でグッと持つとすごくおもしろいよ」
としつこく勧めるので、私も持って見ました。すると…すごい力なんです!グイグイとあの太いギザギザの手足をつかって、手の壁を押しのけてくることがわかりました。関野先生は
「これがフン虫の生命力だ」
と言っていました。納得の実感でした。

★参加者のみなさんへお詫び
 朝の集合場所があんなに日陰がなく暑いとはわかっておらず、とくに早めに来てくださった方には暑い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。
 本当に暑い日でしたが、無事に楽しく終えることができたことは何よりで、みなさんのご協力のおかげと感謝いたします。
 また、教室の状況が整っておらず、皆様にもお手伝いいただいたり、立ったままお待たせしてしまってことは、本当に申し訳ありませんでした。お手伝いくださった子どもたちや親御さんに感謝いたします。ありがとうございました。

★おわりにーウンチについてー
 片付けを終えた後、関野先生が次のフン虫トラップを仕掛けるということで、フンの匂いただよう研究室で、トラップづくりをしながら、関野先生はじめ残っていたスタッフと雑談をしたのですが、そのほとんどが「ウンチの話」でした。「たまに黒いウンチがでる」という学生の発言から、医師でもある関野さんから、考えられる原因の話がでました。その後ウンチの色の話、クダったときの話、トウモロコシはなぜかそのまま出てくるよね?という人の話などで盛り上がりました。
 大げさですが私は「生きている実感」を感じられる瞬間のひとつが「ウンチをするとき」だな、と常々思っています。
「あー、今日も無事に生きているなぁ」
と思うのです。ウンチをするとき、体調や昨日食べたもののことを考えます。さらっと出る時もあれば、力まないと出ないときもあります。ウンチが出なくなったら人は死んでしまうわけで、ウンチを排泄する力がないと、生きていられないということになります。力むときなどは結構な体力を使うので、人生100年時代というけれど「こんな体力をあと何年維持できるんだろう」と思います。
 そして出てきたものを、私は基本的に毎日見ます。そして今日の自分の体の調子や変化と、今日これからの1日についてササッと考えます。出ないならば出ないなりに考えます。
 人が生まれて、最初に生み出す造形物は「ウンチ」なのではないか。ラスコー洞窟、ショーヴェ洞窟の壁画などは、現存する人類最古の壁画として名高いですし、ティム・インゴルドというイギリスの社会人類学者は本「メイキング」の中で「人が最初につくったのは丘ではないか」と言っていますが、私は「ウンチ」こそ最初の造形物としてよいのではないかと、そう思うのです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« リー智子 | トップ | 篠原のぞみ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

生きもの調べ」カテゴリの最新記事