tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

第4回 なら観光サロン「奈良の魅力」  

2011年03月06日 | 観光にまつわるエトセトラ
2/23(水)、「第4回なら観光サロン」を開催した。今回の講師は武中千里さん(NHK奈良放送局 放送部長)で、演題は「奈良の魅力」だった。同僚・友人・知人から募った参加者は、過去最高の27人に上った。私は武中さんとは、昨年11月の「奈良まちおこし結び会 元気フォーラム2010」で初めてお会いした。パネルトークのコメンテーターとして同席させていただいたのをご縁に、今回の講師をお願いしたものである。

昨年の平城遷都1300年祭は、大成功に終わった。その大きな原動力となったのが、NHKが放送された数々のテレビ番組である。ドラマ「大仏開眼」、6時間の「あなたの知らない奈良」、「やまとの国宝」、今も再放送されている「日めくり万葉集」など、金字塔ともいうべき番組が目白押しであった。今回は、その舞台裏を含めてお話しいただこうという趣向である。



武中さんは、関東のご出身で、1983年(昭和58年)入局。初任地は神戸。その後は関東地方でプロデューサーとして番組を制作されるほか、「クローズアップ現代」のディレクターなどをお務めになった。3年前、奈良放送局に着任され、数々の奈良関連番組を手がけられた。以下、お話と質疑応答の概要をN先輩にまとめていただいたので、かいつまんで紹介する。

A.講話「奈良の魅力」
Ⅰ.制作者・取材者の視点から
社寺や仏教美術に恵まれた奈良への赴任は、友人・知人から羨ましがられた。奈良着任に伴い、昨年の大学のクラス会(いつもは東京)は、友人の提案で奈良で開催し薬師寺を案内して、好評を得た。



1.「あなたの知らない奈良(10月17日(日)6時間生放送)」のテーマ
「①これまでの奈良」「②今年の奈良」「③この日の奈良」「④これからの奈良」

②以外は、今年もある。④はこれからも続々とある。「最後の…」「最初の…」「何年ぶりの…」なども。今後も、奈良の美と風景を再発見していきたい。ポスト1300年祭も、奈良にはいろいろな「これから」が目白押しだ(興福寺中金堂など)。



2.「やまとの国宝」
国宝の仏像126件のうち、70件は奈良県にある(=日本一。奈良市46、斑鳩町18、宇陀市3、明日香村1、桜井市1、吉野町1)。国宝の建造物215件のうち、64件は奈良県にある(=日本一。うち法隆寺に18件)。案外知られていない奈良県下の国宝を、分かりやすく紹介しており、後々アーカイブとしても利用していただける。

3.「奈良まほろば散歩」
寺社を歩くのが「かっこ良い」という位置づけ。40代~50代にとって懐かしいポップな音楽との組み合わせ。



視聴者は、全く知らないものには興味を持たない。少し知っていることを深掘りすれば、喜んでもらえる。知っていそうなことを、手を変え、品を変えて提供する。つまり視聴者は「知っているものの知らない側面を知りたい」のであり、「知っているものを、より深く・違った組み合わせで知りたい」のである。お寺の案内でも、「ここだけ」のトリビア情報を伝えることが大切。「温故知新」で、現代的な側面を見せることも有効である。

4.NHKスペシャル「“邪馬台国”を掘る」
邪馬台国の現在の決定版、案外なかった遺跡発掘のドキュメント。番組制作者の2人が、「遺跡マニア」だった。そのため徹底的な詳細情報を、発掘当初からの取材で伝え、ご好評いただいた。映像は、抽象概念を伝えにくいという弱点を持つ。具体的な「モノ」を見せると理解してもらえる。



Ⅱ.関東地方出身者の視点から
1.奈良は田舎ではない。元「都(みやこ)」である。東京人は、奈良を田舎だとは思っていない。奈良市内の居酒屋に行くと、あちこちから関東弁が聞こえる(来訪者が多い)。むしろ京都人や大阪人が、田舎扱いしているのではないか。よく「どうやって行くの」と尋ねられる。京都から30分そこそこなのに、遠いところと思われている(名古屋から近鉄に乗るとか思われている。PR不足では)。奈良模様の小物や正倉院ハンカチ、阿修羅ストラップなどは喜ばれる。

2.奈良には「生きている歴史」がある(=京都と共通)。しかも「歴史のタイムカプセル」である(=奈良だけ)。京都の歴史は重層構造で、1000年分(平安、室町、戦国、江戸、明治時代まで)の歴史が重なり、連なっている。奈良は「歴史のタイムカプセル」として、古いものが残っている(興福寺・薬師寺の法相宗、平城宮跡など)。京都は観光もすべてビジネス化しすぎているが、奈良は組織的なビジネスになっていないことが、かえって魅力である(組織的でない奈良 vs ビジネスとなっている京都)。

アジア(=奈良 国宝は仏像と堂塔)vs 日本(=京都 国宝は絵画と庭)という構図が分かりやすい。奈良(奈良市・奈良県・奈良時代)は日本の始まりであり、原型である。奈良は広い(お寺の境内も広い)。長年かけて回りたい。先日、龍王山に登ったところ、山頂に多くの年配者がハイキングに来られていて驚いた(名古屋方面からの団体バス)。あとはお城(高取城、宇陀松山城など)、古い町並み(今井町、五條新町、高取土佐など)にも興味がある。

奈良観光に、計画・目標・ガイドが必要。「大和十三仏佛霊場」巡りなど。西山厚著『奈良の寺寺』(品切中)、昨年の「祈りの回廊~奈良大和路・秘宝秘仏特別開帳」のパンフレット、『奈良大和路の古寺』JTBパブリッシング、NHK奈良放送局の「ならナビ」(金曜日)などが参考になる(「ならナビ」は4月にリニュアル予定)。

3.今後は「長期滞在したい」または「豪華旅行がしたい」というニーズが出てくる。「定年退職した団塊の世代」も、「中国人富裕層」も、どちらもターゲットになる。しかし奈良では施設が不足している。

4.歴史好きの若い世代…歴女、仏女。パワースポットブーム。「奈良学ナイトレッスン」などで対応。小学生の世界遺産学習にも注目…薬師寺では、育てた菜種の油から灯明を作っていた。「奈良の豊かな魅力」をどう伝えていくか…口コミの重要性、奈良応援団の養成・継承、自ら感じ学んだネタを伝えることが大切。口コミ、ツイッター、フェイスブックなども活用しよう。



B.質問および意見
県職員・Yさん:2011年以降の放送予定を教えて下さい。
武中さん:今年の「“邪馬台国”を掘る」もそうでしたし、「歴史秘話ヒストリア」(2/16)では、「感動!万葉集ヒットパレード~なぜ日本人は歌が好き?」を放送しました。今後もどんどん取り上げる予定ですので、ご注目下さい。
※tetsuda補足:NHKネットクラブ「番組表ウォッチ!」という便利なサイトがある。私はここの「キーワードウォッチ!」という無料サービスを利用していて、「奈良」「歴史」「ドキュメンタリー」などのキーワードを登録してあるので、関連番組があると、放送日の1週間ほど前にメールが来る。

奈良市職員・Kさん:ポスト1300年祭、これからの奈良の素材は?
武中さん:薬師寺東塔大修理、東大寺仏教美術館、興福寺中金堂など、まだまだいろいろ計画がある様子。素晴らしい仏像の数々をはじめ、放送素材は多くあり、楽しみです。

スルッとKANSAI・Hさん:観光プランとして、関西周遊の中の奈良か、奈良ピンポイントか、どちらが良いでしょう。
武中さん:京都とのセットプランは多いようですが、宿泊施設不足を何とかしなければ、皆さん京都に泊まられます。「奈良ピンポイント」のリピーターは増えていますので、南都七大寺めぐりとか、いろいろ企画すれば良いと思います。



奈良朱雀高校・Tさん:山川出版の「日本史」教科書が売れています。前半50頁ぐらい、テキストと対比しながら奈良時代までの場所や歴史を案内するような番組を作って下さい。
武中さん:著作権の保護期間は、死後50年まで。縛りがなくなれば(会津八一、堀辰雄、和辻哲郎など)、文学書に基づいた史跡めぐり、文学散歩の番組などにトライしたいと思います。

有限会社エンデル社長・Yさん:欧米で日本が紹介され、それが逆輸入されるケースがあります。欧米で注目されるような番組の制作を期待します。
奈良まほろばソムリエ・Kさん(東大阪市在住):「ならナビ」など、奈良ローカルで流れている奈良関連番組は、ぜひ大阪や全国でも放送していただきたいと思います。
翼果舎・Aさん:以前出演したBSの番組では、「ウラ奈良」がテーマだと聞いたので、中世・近世・近代・現代の歴史遺産を「奈良きたまち」を例にあげて説明しましたが、ほとんど取り上げてもらえませんでした。奈良にも歴史の重層構造が残っています。ぜひ中世や江戸時代なども深掘りして紹介して下さい。



以上が当日のお話と質疑応答である。後日、当サロンに参加された奈良市職員のKさんからメールをいただいた。《関東人にとっての奈良、ということで、奈良を地元とする者とは異なる視点で奈良をご覧になっているのが、よく分かりました。関東の方にとって、「奈良は田舎ではない」というのは、ある意味納得しました。私にとっては「どうして関東の方は奈良に憧れるのだろう、こんなところなのに」と常々思っていたのですが、このように概念を言葉にしていただくと、よく分かります。地元と周囲の「思い」の差が目に見えた感じがします》。

《「奈良に東京からどのように行くのか」から説明する必要がある、というのは、勉強になりました。私には当たり前すぎて気付きませんでしたが、確かに、東京から奈良へは京都駅から近鉄が早い、ということをご存じない方は多いかもしれません。ちょっとしたことですが、奈良をPRするときに、そういう心遣いも必要なのだと思いました》。

印象に残ったことですが、マスメディアの力をよくご存じの武中さんが、口コミの重要性や応援団の養成・継承の必要性などを強調されていたことです。やはり、地に足がついた活動があってこそマスメディアに取り上げてもらうことができ、そして大きな力となる、ということがよく分かりました》。



また、翼果舎のAさんからは《皆さまの豊かな発想に圧倒されました。また、これからの奈良を担う、若い世代が多数参加しておられたのにも、感心至極でございました。これからは、その発想を具現化していくことそのものも楽しみでございますね。今後とも是非とも参加させていただきたいので、どうぞよろしくお願い申し上げます》とのメールをいただいた。もともと、このサロンは、若い奈良市職員さんから、「このような場を定期的に設けてほしい」というリクエストがあってできたものである。若手の参加は大歓迎である。

今回初めて、ならまちの「うとうと」の野村さんに配達していただいた家庭料理も、皆さんにご好評いただいた。ご主人の実家がある山添村で育てられた無農薬の野菜、自家製のこんにゃくなどを薄味で料理され、自家製の漬物も美味しい。だし巻き卵は、ちゃんと人数ちょうど。さらにたっぷりの炊き込みご飯もついていて、もう満腹になった。

次回のテーマは「“記紀・万葉プロジェクト”に期待する」。県職員からご説明いただいたあと、このプロジェクトに関する意見・要望を参加者から聞く、というスタイルである。これは次回も楽しみである。参加者の皆さん、予習・準備をお忘れなく!

当日の写真はすべて吉田遊福さんにお撮りいただきました。克明にメモをとって要約していただいたN先輩ともども、厚く御礼申し上げます。
コメント (13)
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