てつりう美術随想録

美術に寄せる思いを随想で綴ります。「てつりう」は「テツ流」、ぼく自身の感受性に忠実に。

嵐と祭の前夜

2007年07月14日 | 雑想
 あっという間に、7月も半ばである。7月といえば、京都ではいうまでもなく祇園祭の月だ。17日の巡行に向かって、あちこちで山や鉾が建ち並び、否応なく祭が盛り上がっていく。京都は今ちょうどそんな時季を迎えている。

 それにしても先月の梅雨入り当初は、どうやら今年は空梅雨かと思っていたのに、このところにわかに梅雨めいてきた。時節がら、祇園祭は梅雨と無関係ではすまされないが、多くの貴重な文化財を扱うため、関係者たちはさぞ気を揉まされることだろう。

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 大阪で夜勤の仕事をしているぼくは先日、仕事帰りに烏丸まで足を伸ばし、小雨のぱらつく中、組み上がっていく山や鉾をいくつか見て回った。大きな鉾になると大半はできあがっていて、すでに鉾頭(ほこがしら)をのせた真木が、ビルと張り合うかのように高々と聳えているものもあったが、木材が道の上に寝かせられたまま、雨に濡れながら組み立てられるのを待っているものもあった。

 小さな山をもっている町内では、まだ軒先に提灯がぶら下げられただけの、呑気なところもあった。だが「月刊京都」などを見ると、山建ての日付ははっきりと告知されていて、すべての行事はあらかじめ決められたスケジュールにのっとってとりおこなわれるようである。天気が悪いから明日に順延、というわけにはいかないのだ。

 それにしても、雨の中で山や鉾を組み立てる職人 ― 作事方(さくじかた)というらしい ― たちは、慣れているとはいえ、大変そうだった。山全体を青いビニールシートで覆って、その下で作業をしたりしていた。独特の“縄がらみ”と呼ばれるやり方で、蝶が羽を広げたようなかたちに縄を巻きつけ、釘を使わずに山を組み立てていく。宵山がはじまるころには、華麗な懸物の下になってしまってまったく見ることのできない、隠された美の技である。

 それとは別にちょっと気になったのは、山や鉾の事務所にあたる会所 ― 多くは古い町家づくりの建物だ ― のすぐそばに、今まさに高層マンションが建設されているところが少なからず見受けられたことだった。木を槌で打つ心地よい音に混じって、工事現場から金属のぶつかる音が響いてきたりした。京都には似つかわしくない音風景だが、これもまあ、時代の流れなのかもしれない・・・。

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 ところで夜勤の仕事をはじめた当初は、ひょっとして今年は宵山も、そして五山の送り火も見られないのかな、と落胆していた。だがカレンダーをよく見てみると、今年はうまい具合に3連休と重なるので、14日から16日の晩におこなわれる宵山のときには、仕事がちょうど休みになる。おまけに火曜日の朝からはじまる巡行も ― 連休はもう終わっているが、ここは夜勤の特権で ― 頑張れば見届けることができそうだ。やれ今年は、祇園祭を目一杯楽しむことができるかもしれないぞ、とぼくは内心ほくそ笑んでいた。

 だが、ここにきて、梅雨が活発になってきている。そこに加えて、今度は台風だ。これを書いている今、もうすぐ九州に上陸かというところまで接近してきているが、はたして祭への影響はどうだろう。京都を直撃するようなことは、まあないとしても、強い風が吹いては山や鉾へのダメージが心配される。

 そういえば去年の宵山もけっこう雨に降られ、山鉾巡行の当日にいたっては土砂降りであった。ぼくが京都に引っ越してきたのは、9年前の巡行の日であったが、その日は見事なまでに晴れ上がっていたのを思い出す(ただし、そのときぼくは祇園祭のことをよく知らなかったので、巡行の日と重なったのは偶然にすぎない)。

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 さて今夜は宵山(正しくは宵々々山という)へ出かけてこようか、今現在、大いに迷っているところだ。悪天候では屋台の食べ歩きができない、というぐらいは何でもないが、雨宿りの客で会所が大混雑するのは、なかなか耐えがたいものもあるのである。

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2 コメント

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Unknown (遊行七恵)
2007-07-15 22:57:33
こんばんは
ベルギーの随想も面白かったのですが、こういうノリのもナイスですね。
わたし、昨日の朝の間にハイカイしました。
文化博物館ではお囃子とか演奏する予定などありますよ。そういうのも楽しいです。

屋台でびっくりしたのは「高級フルーツ」にワインでした。テキヤさんも色々ですねぇ。
楽しみましょう!
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こんばんは (テツ)
2007-07-17 01:39:44
こちらは宵々々山~宵山までフルに楽しむつもりが、日ごろの過労がたたり、宵々山の日にぐるっと巡回しただけでした。でもその日だけで20近くは回ったでしょうか(それでじゅうぶんだろ、といわれそうですが)。
屋台は、ぼくもヤシの実を売っていたのには驚きましたよ。誰も買ってなかったですが(笑)、どうやって食べるんでしょう。ストローをさして飲むんでしょうか?

さて山鉾巡行はどうするか、今のところまだ決めてません。体力と天候次第ですかね(でも行きそうな気がする・・・)。
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