WESTWOOD -手作りビンボー暮らし-

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風柳荘のアン(原題”Anne of Windy Willows”)

2021年01月29日 | 面白かった本

「風柳荘のアン(原題”Anne of Windy Willows”)」はレッドモンド大学を卒業し、サマーサイド高校の校長に着任、「風柳荘」で下宿生活を送る、アン22~25歳のときの物語である。
「アン」シリーズ全体はアン11歳~53歳くらいまでの長編物語で、8巻のエピソード(シーズン)に分けて書かれている。なお、没後発刊された、アン40~75歳くらいまでの番外編「The Blythes Are Quoted」もある。

2017年、エイミーベス・マクナルティ主演でTVドラマ化され、Netfrixでも配信され、昨年NHKでも放送されたのはシーズン3(1,2巻)までで、ここまでは物語順に発刊されている。しかし、それ以降はアンの年代と発刊年は必ずしも一致していない。作者モンゴメリはシーズン3で終えるつもりだったのが、あまりの人気に押されて続編や外伝的な物語を書き続けざるを得なくなるのである。

アンの年齢順にいうと「風柳荘のアン」は第4巻(シーズン5)相当というところ。文春文庫版の訳者、松本侑子さんの解説によるとモンゴメリは日記の中で、本作「風柳荘のアン」は自身「最高傑作の一つ」と書いているそうだ。実際、物語のプロットそのものの面白さに加え、婚約者ギルバートへの手紙形式と物語形式の2本立て構成や、時に必要に応じてアン以外の登場人物の視点で語られる構成の妙や、およそ100年を経てなお”あるある的な”現代にも通ずる人間心理の解き明かしなど、アンシリーズの中でもとりわけ味わいどころ盛りだくさんの傑作であるのは間違いない。
よく知られている「赤毛のアン」と言えば、児童書や映画、アニメとして数々作品化されている、孤児としてもらわれてきたアンの天真爛漫でハチャメチャで明るく元気な子供時代の物語(2巻、シーズン3まで)のイメージが大きいが、「風柳荘のアン」はアンを通して語られた”大人の”物語である。ぜひ味わっておきたい作品である。

見どころの多い作品であるが、現代にも通ずる人間心理のおもしろエピソードを1つご紹介。
アンが下宿する「風柳荘」の住人は、主の2人の未亡人、偏屈だった亭主を好きになれなかった気にしいのチャティおばさんと亭主一筋だった無口なケイトおばさん、そしてケイトおばさんの亡き亭主マコーマー船長の遠戚ではあるが実質、お手伝いさんのレベッカ・デュー。レベッカ・デューはとても興味深い人物で、実情は雇われお手伝いさんではあるけれど、マコーマー船長の遠縁なのでただの家政婦ではないという微妙なプライドを持っており、「風柳荘」は「あたしが仕切っている」と思っている。また、町の人たちもそう見ていた。

「風柳荘」の下宿人希望者にはもう1人、若い銀行員の男性という身持ちの堅い「競争相手」がいた。
アンに「風柳荘」を紹介したブラドック夫人は、2人の未亡人は女教師のアンを下宿させたいだろうが、レベッカ・デューに押されて、てっきり銀行員の方を選ぶだろうと踏んでいたのだ。ところが、どういうわけかアンが選ばれた。そのわけは後に判明するのだが、主の2人の未亡人はレベッカ・デューの性格をよく心得ていて、あえて「銀行員を下宿させたい」と主張したのだ。「仕切りたい」レベッカ・デューは、それに反対してアンを選んだ(選ばされた)というわけなのである。実は「風柳荘」では一事が万事こんな調子で、押されていると見られていた2人の未亡人は、うまくレベッカ・デューの性格を利用して操縦していたのである。



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