昨日は日本中が皆既月食で盛り上がった。
そんなこととは関係なく、今日は「焼肉の日」(8月29日)である。いろいろな政治的、経済的思惑でやたら「~の日」が氾濫するようになってしまった日本では、皆既月食と違って「焼肉の日」もいまひとつ盛り上がらない。知らない人も多いだろう。
「のどもと過ぎれば...」の日本人の国民性で、今は忘れ去られた感のあるBSE騒動で青息吐息(かどうか知らんが)の「焼肉屋さん」がかわいそうだから今日は「焼肉」へのエールをこめて「焼肉」薀蓄本の紹介を。
本書は「焼肉」と「焼肉屋」の誕生物語である。
日本で最初に「焼肉」を提供した店は東京の「明月館」と東京で創業した翌年大阪千日前へ移転した「食堂園」であった。ただし当時は「焼肉」専門の「焼肉店」ではなく、「焼肉」は朝鮮料理屋の数ある朝鮮料理メニューの一つであった。
「焼肉」専門店が現れて「焼肉屋」と呼ばれるようになったのはそんなに古いことではなく、1980年代のことだそうな。本書によると日韓条約成立後、韓国系在日(民団)の勢力増大に伴って「焼肉」を出す料理屋は「朝鮮料理屋」か「韓国料理屋」かでもめ、妥協の産物として「焼肉」専門の朝鮮(韓国)料理屋を「焼肉屋」と称することになったとか。こんなところにも朝鮮半島分断統治の歴史的悲劇の影響が及んでいたのである。
そもそもタレにつけて食べる「焼肉」は、朝鮮料理の「プルゴギ」を在日が日本人向けにアレンジした日本独特の料理で、本場「プルゴギ」はもともとタレなどつけずに食べる「焼肉」である。今ではタレにつけて食べる日本式「焼肉」が逆輸入されて当地の韓国料理屋でも出されるようになっている。
ではバーベキューはどうなんだろう?在日の発明した日本式「焼肉」を今度は日本人が逆々輸入?して、さらに野外家庭料理として発展させたものであろうか。侵略にまつわる悲劇はいただけないが、このようなキャッチボールを通してそれぞれの国の食文化というものも変化し発展していくのだろう。