セミはカメムシの仲間!であることをこの本で初めて知った。
それはさておき、8月12日の「セミごよみ」でも書いたように、京都でも私が子供の頃と比べるとやたらクマゼミが増え、ニイニイゼミをまったく見かけなくなった。「地球温暖化と何か関係があるのだろうか?」という疑問もわいたがよく分からない。クマゼミの分布地域の北上については、マスコミで「温暖化の影響」をにおわせる論調もあり、誰かきちんと調べた人はいないのかとネット検索してみたが意外にないのである。そんなこんなでもやもやした気持ちが残っていたところ、あった!やっぱり調べた人はいたのだ。
ただしこの本では「セミの分布や増減と地球温暖化との関連性について」、「環境屋さん」が期待するような結論は示されていない。この本のよいところは、この問題を考察するためには現状の蓄積データでは限界があること、現状のデータではどこまでのことが言えるかを冷静、公正に説明し、科学的なものの見方・考え方について「セミと温暖化」を例に分かりやすく示しているところにある。
2003~2004年にいくつかの都市でセミの分布を調べたところ、大阪ではクマゼミ、和歌山では大阪より温暖なのにアブラゼミが多く、名古屋もアブラゼミが多い、東京ではアブラゼミとミンミンゼミ、仙台ではミンミンゼミ、札幌ではアブラゼミが多いが他で見つかっていないエゾハルゼミ、エゾゼミが見つかり、福岡・鹿児島ではクマゼミが多いだろうという予想に反してアブラゼミの方が少し多かった。これらの結果からクマゼミの生息には、温暖である以外に都市的環境が有利に働いていることが推測された。
大阪でも1980年代頃からクマゼミが増え始めたと多くの人が証言しているが、きちんと調査した記録はない。「前年と比べてクマゼミが増えた」というとマスコミなどはすぐ「地球温暖化の影響」と騒ぐが、科学的データに基づく検証は行われていないのでなんとも言えない。
温暖化とセミの数と分布とに関連があるかどうかを考察するためのデータとしては2つの調査結果が得られている。1つは、1993年からセミの抜け殻の数を数える調査で、セミの数は毎年ごとに増減を繰り返しており、4年ごとの合計で比較するとほぼ一定であるという規則性があることがわかった。2つめは、8月の平均気温が25.1℃以上かつ1月の平均気温が3℃以上の地域でクマゼミの発生が見られそれ以外の地域ではほとんど見られないことがわかった。しかし、これらの結果からただちに温暖化と結びつけるのは早計である。
セミの分布と増減についてのデータがとられ始めたのは90年代以降であり、温暖化が話題となる以前のデータがなく比較ができない。その他の様々な生物や生態系への地球温暖化の影響についても科学的に考察するに足る基礎データの不足は否めないケースが多い。例えばマツタケの発生と温暖化との関連についてもまずは考察に耐えるだけのデータの蓄積が必要であろう。
考えてみるとセミだけでなく、海面上昇や異常気象など温暖化の影響と言われている事象についても、一体どの程度批判に耐えうる科学的検証が行われているのか疑問がわいてくる。こうした自然環境の変化にすぐ「温暖化の影響があるのでは?」と考えてしまう思考回路自体、すでに洗脳されている証かもしれない(くわばら、くわばら)。
私はどちらかと言えば「環境保護派」「エコ派」であると思う。少なくとも「地球温暖化」や「自然環境破壊」と言われるような問題は確かにあるかもしれない、どうもありそうだという問題意識は持っている。しかし、どういう意図が働いているのか分からないが、最近の環境、エコブームは、疑問をさしはさむことを許さない「環境ファッシズム」とでも言いたくなるような情況を呈している。「地球温暖化」と結びつけてものを言うとマスコミにもてはやされ、予算も獲得できるということでこれらをネタにする「エコ屋」、「環境屋」、「温暖化屋」とでも呼んだ方がよいような人たちが目につき過ぎる。「環境にやさしいエコ商品」を売ったり、初めから温暖化ありきの「研究」や「エコイベント」で金とエネルギーを浪費しているような「本末転倒」のような人たちもいるから始末が悪い。そんな中で、「環境ファッシズム」に異論を唱えている人たちも少数ながらいることはいる。そちらに組するわけではないがこういう現状だからこそそうした意見にも耳を傾けたいものだ。「反環境ファッシズム」本についてはまた改めて書こうと思う。