道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

酪酸菌

2023年11月14日 | 健康管理
私たち日本人の腸内には、善玉菌と日和見菌そして悪玉菌と呼ばれる細菌群が、2:7:1の割合で生息しているらしい。これらの細菌群は、腸壁に腸内フローラと呼ばれる細菌叢をつくり、拮抗を保って生活しているそうだ。

善玉菌の仲間には3種類があって、その酸素要求度に従って生育に好適な腸内の特定の場所に別れて棲み、腸内を通過する食物に働きかけ、消化と吸収の両面で寄与しているらしい。
「小腸上部」には酸素が無いと繁殖できない偏性好気性の糖化菌(納豆菌や枯草菌など)、「小腸下部」に酸素の有無を問わず繁殖できる通性嫌気性の乳酸菌、そして大腸の「結腸部」に、酸素が有ると繁殖しない偏性嫌気性の酪酸菌が棲みついているという。

酪酸菌という細菌は、糠漬けの手入れを怠ったときに、不快臭を発生させることでよく知られている。俗に「糠味噌臭い」といわれる臭いである。この臭いは物に着くとおいそれとは除れない。
糠味噌臭さは酪酸菌が糠床に存在している証拠である。糠床の手入れを怠って漬物に悪臭が付いても、その漬物は食べることができる。けっしてお腹を壊すことはない。糠床はダメになるが・・・

酪酸菌は酸素のある環境では芽胞という形態をとって休眠する細菌であるから、酪酸菌が増殖して悪臭を発するのを避けるためには、糠床を毎日よくかき混ぜ酸素を供給することが欠かせない。
ひと時代前には、妻を「糠味噌臭い女房」などと云って蔑ろにする夫が居た。彼らの多くが体調不良を免れなかったのは、自業自得というべきものだろう。

善玉菌の中では、かつて一大ブームを起こした乳酸菌も普及が一巡、最近は話題にもならない。それに対して、近年目覚ましく人気が高まってきたのが酪酸菌である。
酪酸菌がつくり出す酪酸に、高齢者の筋肉の萎縮(フレイル)の防止効果が期待されている。

日本人の腸内には、外国人(中国人も含め)に比べ酪酸菌が特異的に多く棲みついているらしい。海に囲まれた自然環境に適応した食生活(海藻食)がもたらしてくれた恩恵だろう。
酪酸には加齢で筋肉が萎縮するのを抑制する働きがあることがわかっている。高齢者が健康であるためには、動物性たんぱく質一辺倒の欧米型食生活でなく、私たちが先祖から受け継いできた酪酸菌を活性化させる食物を摂ることが大切である。
肉や魚に依存しなくても、酪酸菌によりたんぱく質をつくる食生活があることを私たちは詳しく知らねばならない。

日本の高齢者が筋肉の萎縮・減少を防ぐためには、腸内に酪酸を増やすことが大切らしい。日本人は酪酸が多い人ほど筋肉も多く、自然状態では、腸内の酪酸菌の量と筋肉量が比例しているという。酪酸が多い人ほど、筋肉が衰えにくいということになるのだろう。

日本人にとって身近で簡単に手に入る海藻・大豆・野菜は、酪酸を増やす(つまり酪酸菌を活性化する)食材だという。酪酸菌の好い餌であるらしい。したがって高齢者は海藻・大豆・野菜などを日常的に摂り、腸内の酪酸菌を増やすことが重要である。具体的には、海藻に含まれる「アルギン酸ナトリウム」という物質が酪酸菌を活性化させるという。差し当たり、ヒジキと豆とニンジンでつくった「ヒジキの煮物」などは、酪酸菌を増やす効果の高い、先祖由来の健康料理ということになるだろう。私も妻も、子どもの頃からこのおかずは好きでないが、意識して食卓に載せなければならない。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鈍の二乗 | トップ | 次郎柿 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿