昨春仙台の知人から贈られ、小庭に地植えしておいたキレンゲショウマが咲いた。贈り主から、宮尾登美子の小説「天涯の花」で一躍脚光を浴びた花と教えられた。
私は、女性の主人公を描いた女流作品をあまり読まない傾向があって、長年山野草を愛好していながらこの花の存在とその小説をまったく知らなかった。花の色と形がこれとまるで異なる、一字違いのレンゲショウマは、山歩きで幾度か見たことがあったが・・・そちらはキンポウゲ科でこちらはユキノシタ科とか。
陽ざしに曝されない樹下の、涼しい風の通る場所に植え込んだことが、開花に恵まれた理由かもしれない。
小説とそのドラマ化で有名になった花はなんといってもスイフヨウ(酔芙蓉)だろう。高橋治の小説「風の盆恋歌」によって、「越中おわら風の盆」と「スイフヨウ」は遍く世に知られるようになった。この恋愛小説も読んでいないのだが・・・
あの物語を好むご婦人方(男性にもファンは多い)の目には、朝は純白で日中はピンク、夕べに紅みが強まるスイフヨウが、殊の外美しく映るものらしい。自己愛を擽ぐるのだろうか?小説がヒットした後、全国の園芸店では、この花がよく売れたという。私はこのインド由来のエロチックな花はどうも好きになれない。
キバナレンゲショウマとスイフヨウ、どちらの花も作品中のヒロインのイメージを暗示するために選ばれた花だろう。特に前者は、ひょっとしたら、慣れない山に喘ぎ喘ぎ登って漸く花を見た作者の創造力を、花そのものが刺激してストーリーを生んだと見たい。この花を見ると、それは確かなものに思われる。そんな想像は、作者への憧れが強いからである。
夏休みは、食わず嫌いを止めて、このふたつの花をモデルにした小説を読んでみることにしよう。
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