道々の枝折

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中国の政治

2021年06月23日 | 人文考察

資本主義と社会主義が合体して国家資本主義になると、覇権主義に向かわざるを得ないことを,中国が実証して見せてくれている。国民に土地資産を私有させない制度には、人性の常への配慮が根本的に欠けている面があるように思う。この国の民族の大半を占める漢人は、大昔から観念が先行する人々で、合理精神の乏しい点では、私たちの先輩、兄貴分である。

中華人民共和国は1949年の建国以来、土地の私有を禁じて来た。都市部の土地は国有、農村部の土地は、農業集団が所有する制度の下で今日に至った。

都市部の住民には土地の使用権が認められ、土地使用権の売買・賃貸が可能である。これに反して、一貫して農村の土地に資産性をもたせない政策のもと、農民はこれまで国力の発展による恩恵を享受できていなかった。

中国政府は、2018年の第18全人代で「農村土地請負法」の改正案を決議、それまでの農村の土地制度を改めた。都市部と農村部の経済的格差を是正することが、喫緊の課題となって来たからである。

中国は共産党独裁の社会主義的政権でありながら、途中で資本主義を便宜的に採用した国家である。共産党一党独裁による社会政策の効率性の良さは、スピーディーな資本主義化に貢献した。しかし、イデオロギー的矛盾は社会の分断を招かずにはおかない。農村部農民の不満、鬱屈は、年々高まっていると見てよい。
繁栄に慣れた都市部の人々も、物価、不動産価格の上昇、就職のための教育費の高騰などで、生活の不安と不満は増しているという。

政権が国民の不満を逸らすためには、その目を外に向けさせる効果の高い覇権主義(経済的植民地主義)を採り、他国を経済的に支配するのが手っ取り早い。中国は海外の軍事的・商業的な拠点を買収する政策を推し進めて来た。変形した植民政策である。〈一帯一路〉は植民をベースに覇権主義政策である。経済的支配ばかりか政治的支配も強め、更に同化政策による民族的支配までも推し進めている。

かつて西欧先進国が経験したとおり、植民地主義は軍事力の強化無くしては成り立たない。他国との権益争奪や保持の為と、植民地の民衆の反発を抑え込む必要があるからである。早晩中国も、被支配諸民族と隣接国の反発を招き、経済発展と覇権主義による国力の伸張に反比例して、国際的な信頼と支持は凋落の一途を辿るだろう。

彼の国が防衛戦略と海底資源確保のために、尖閣列島や南シナ海の島嶼・岩礁に目を向けたのは、明らかに誤った認識と判断である。それによって失われた国際的な信用失墜の影響は計り知れない。

中国の覇権拡大の野心は、第二次世界大戦まで南アジア・東南アジアに植民地をもっていた英仏蘭など西欧諸国(旧宗主国)の旧植民地への保護意識を触発させてしまった。旧宗主国というものは、自国の文化や政治・経済が色濃く及んだかつての植民地が、大国によって軍事的に侵害されるのを看過できない。NATO同盟国軍が遠い太平洋海域へ軍艦を派遣するのは、かつての植民地に対する強い保護意識の表れである。

旧宗主国と旧植民地国との関係には、宗主国側の言語や文化が植民地国側に色濃く遺るものである。その関係は、独特の政治的・経済的緊密性を固め、文化的共存意識を生み、〈依存〉と〈保護〉の関係が成立している。
旧植民地国は旧宗主国の文化を慕い、経済的に依存し、旧宗主国は旧植民地への保護意識を保ち続けている。一旦できた絆は、独立したからといって、切れるものではない。

一国の植民地にされたこと(香港・マカオを除き)も、植民地を持ったこともない社会主義中国の政権担当者には、南アジア・東南アジアの旧宗主国と旧植民地国との間における独特の連帯意識には理解が及ばないに違いない。視点が欠けていれば、モノは見えない。

EU、ロシア、アメリカ、我が国との経済的関係がどれほど濃密であろうともも、あらゆる面でそれらの国々と視点、視座を共有していない中国、潜在的には常に敵性国家と看做され続けるだろう。その不利益は測り知れない。

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