硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「スロー・バラード」

2020-09-28 20:58:01 | 日記
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「実はな、あの子、皆でおる時は、キツかったけど、たまたま二人になった時、話したら、普通の女子やったのには驚いたわ。時々、ふふふっ笑ってくれるのを見てたら、告白したら付き合ってくれるんちゃうかと思う位やったで」
「マジで!!  お前っ、そういうことは、早く言わないと! 俺なんか相手にされないと思ってたよ。」
「今となってはお互いさまやな」
「お前、わざとだろ」
「そこまで頭、ようないわ」
「それで、優子ちゃんが、どうしたって? 」
「そうそう、高校中退して、東京へ出たらしい。なんや、下校中にスカウトされて、芸能人になるみたいなことを聞いたで」
「マジで! もっと、話しとけばよかった」
「ほんまやな~」
「いや、俺は東京で出会えるかも」
「そんなん、会っても知らんぷりされてしまうで。それに、芸能人になったら、業界の金持ちが野球選手と付き合うにきまってるやん」
「ボケ! 俺の夢壊すなよ! 」
「悪い悪い。けどさぁ、俺らの小学校の同級生の男子は、なんかしらんけど、結局、中学の時、誰も彼女出来やんだな。」
「それ、言うかぁ~」

田んぼの真ん中にある交差点の信号が赤に変わった。この辺も車が増えて、地元の人の要望で去年ついたって聞いたけど、こんな田舎にいるんかなぁと、思ってた。
ギアをニュートラルにして、信号が変わるのを待つ。カーラジオからは、最近放送し始めた、県初のFM局が、光GENJIのパラダイス銀河を流していた。
その間、ようじは窓の外の田んぼをじっと見ていて、信号が変わると同時に、呟くように言うた。

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