田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『シン・ウルトラマン』

2022-05-13 17:29:17 | 新作映画を見てみた

『シン・ウルトラマン』(2022.5.13.MOVIX亀有)

 「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府は、班長の田村君男(西島秀俊)、作戦立案担当官の神永新二(斎藤工)ら、スペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立し、禍威獣対策に当たらせていた。

 そんなある日、大気圏外から銀色の巨人が突如出現し、禍威獣を倒す。このウルトラマンと名付けられた巨人対策のため、禍特対には新たに分析官の浅見弘子(長澤まさみ)が配属され、神永とバディを組むことになる。

 特撮テレビドラマ「ウルトラマン」を、『シン・ゴジラ』(16)の庵野秀明と樋口真嗣のコンビで映画化。庵野が企画・脚本、樋口が監督を務め、舞台を現代社会に置き換えて再構築した。

 『シン・ゴジラ』は、音楽やタイトルなどに過去作へのオマージュは示しつつも、過去作を縛った前提を全てリセットして、「今の日本に“初めて”ゴジラが来たら?」という新たなテーマを提示しながら、自由なアイデアを展開させた点がユニークだった。

 ところが、今回は、連続ドラマの「ウルトラマン」全39話の中から、庵野と樋口が自分好みの部分を抽出して、2時間にまとめた感じなので、どうしても語り口が急ぎ足になるし、いろいろと詰め込み過ぎて全てが中途半端な感じがした。しかも、ストーリーに縛りがある分、新鮮さや自由度も低い。「禍威獣(カイジュウ)」や「禍特対(カトクタイ)」という当て字もちょっと鼻につく…。

 また、専門用語が飛び交う早口のせりふ回しなのに、滑舌やアクセントが悪くて何を言っているのか分からないことが多い。特に、禍特対隊員役の有岡大貴と早見あかりがひどかった。

 では、この映画は救いようがないほどひどいのかといえば、決してそうではないのだから困ってしまう。

 例えば、カラータイマーがないところに違和感はあるものの、ウルトラマンの造型は決して悪くはないし、スペシウム光線や八つ裂き光輪の使い方も面白い。

 また、冒頭の「ウルトラQ」へのオマージュをはじめ、細部に見られるオリジナルへの敬意、ウルトラマンと禍威獣の対決シーンに流れる宮内國郎の音楽、そしてラストの“あの一言”などは、自分のようなオールドファンにはたまらないものがある。

 庵野秀明は自分と同い年だから、「ウルトラマン体験」には共通するところが多いと思う。だからこそ、わが意を得たりと思うところと、そうじゃないだろ、というところが相半ばして、複雑な思いにとらわれるのである。何だか、勉強が出来て理屈っぽい同級生の研究発表を見せられたような、妙な気分になった。

『シン・ゴジラ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a8b731deeb233a3524d3bb3be27b3bfa

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする