私が編集者として図鑑を作っているときです。
文科省(このときは文部省)は突然、日本の分類体系の名称を滅茶苦茶にしてしまいました。
どう考えても科学的じゃない名称なのです。
ほ乳類では、かって系統的に肉食獣をまとめて「食肉目」と呼んでいました。
肉を食べる動物という分かりやすい、科学的な表現です。
外国の分類も同じ名称(Carnivora肉食動物)で、日本語はそれを翻訳していた訳ですが、科学的によく考えられて付けられた名称です。
ところが、文部省のお役人さんは、動物分類の名称には今使えない漢字が多くは入っている。
これをもっと分かりやすくしないといけないという、非科学的な理由から、科学的な名称をその目の代表種に変えてしまったのです。
つまり、食肉目はネコ目に、有鱗目はセンザンコウ目、偶蹄目はウシ目、奇蹄目はウマ目という具合に、
動物の仲間の特徴を表す漢字をことごとく廃止して、代表種の名前に変えたのです。
これでいいじゃないか!という人もいますが、分類の特徴を消すことで、科学的思考がストップしてしまいます。
私は今でもこの改悪は文部省の暴挙だと思っています。これを無視して自分の本には旧名称を使っている人もいますが、
学校教育では、文部省に従わなくてはならず、教科書、参考書すべて変えています。
食肉目イヌ科イヌはよく分かりますが、ネコ目イヌ科イヌ、なんて科学的じゃないですよね。
偶蹄目は蹄が2,4の偶数のひづめがある動物というのが、これが蹄が2つのウシ目に。4つの蹄のイノシシはウシ目イノシシ科です。
奇蹄目は蹄が1,3の奇数で分かりやすいですがこれが、一つの蹄のウマ目に。3つの蹄のバクやサイはウマ目バク科、ウマ目サイ科です。
いずれにしても、食肉目という肉を食べる猛獣たちがすべて、ネコ目になってしまったのですからね。
動物だけでなく、昆虫も、魚類も無茶苦茶です。日本人の科学的思考をダメにしようとする施策ですね。