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爪の先まで神経細やか

物語の連鎖
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存在理由(10)

2010年10月25日 | 存在理由
(10)

 環境の変化が避けられない事実として目の前にあるのならば、いま、ぼくはそれに向かいつつあった。そして、そのことを何より、楽しんでしまおうという気分を持って、生まれていた。時には、新たなことにチャレンジするのは怖いこともあったが、安楽がそれ以上に怖かった。もちろん、年代的にも、そのような安楽な場所に留まることには早過ぎていたのだが。

 大学も終わるので、その前にバイトを辞める必要があった。辞める前に、みんなでお別れ会のようなこともしてくれた。

 ぼくは、いまより大きな出版社に就職することになっていたので、そのことを良く思わない先輩たちもいた。自分には、その気持ちが分からなかった。そして、男性にも歴然として、嫉妬という気持ちが存在していることに、遅まきながら気付くのだった。

 それで、何よりの決意として、自分は将来、絶対にそんな気持ちを持つことはしないだろう、と誓うのだった。そんなことは、あまりにも自分に対してみじめになるだけだった。ショートとセカンドの守備範囲がまったく違うように、それらは単に優越というよりかは役目の問題でもある気がした。

 数人、そのような人もいれば、いままで接してくれた態度とは全く違う新鮮な言葉を投げかけてくれる人もいた。そのことは、いまでも多分ぼくを暖めてくれているのだろう。

 みどりと付き合っていることは、誰にも伝えてはいなかったが、それは周知の事実でもあったようだ。ある日、彼女の視線の先にぼくがいて、そのことをバイトの女性が気づき、それを広めたということだった。それは、別に秘密にしておく問題でもないので、どちらでもよかったが、最後になってひやかされた。

 何次会かをした後、自分の揺れる身体を心配しつつぼくは、それでもみどりと一緒に帰った。足の裏には枯葉が踏みつけられる音がした。環境の変化を愛しているとは言いながらも、この瞬間のことを、いつもぼくは覚えている。彼女の帽子。頬をなでる冷たい風とともに。