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恋の予感とともに、1990年を迎える。ぼくは、あと一年だけ学生生活が残っており、彼女は、そのまま簡単なテストを受けることはしたが、いま勤めているバイト先に就職することになっている。ぼくの目線内に、その存在があって当然という感じになってしまっているので、それは嬉しいことでもあるし、もともとその進路は、彼女の望んでいることでもあったようだった。
なので、これからも会う時間が減るということはなさそうだった。しかし、数回デートをしただけの男性を一体、誰が本気で考えてくれるだろうか。
いまなら、分かるのかもしれないが、その頃の一才という年齢の差以上に、彼女の考え方は大人びていたし、また逆に、これは当然なのかもしれないが、ぼくは、もっとも自分の都合の良いように地球が動いてくれるものだと認識していた。つまり、子供っぽかった。
それで、だんだんと一緒にご飯を食べる機会も増え、何度かはスポーツも観戦した。それ以外にも、時間を見つけては何をするということもないのだが、会う時間を増やしていった。
寒さが薄らいでいく、それでも、2月の終わりごろだったと思うが、あまりきれいでもない都会に流れる川を横目に散歩をしていた。彼女は、駅から自宅の途中にあるその川を愛していた。大学に入って、東京に出てきたらしいが、その暮らしの3年目を迎える頃、そこに引越し、それ以来、その場所に住んでいた。春の前兆を感じさせる風が吹き、ぼくは上着を脱ぎ、それを右手に持って、左手には、彼女の暖かい手の平があった。それは、ぼくにとって、とても安心感を与えるものだった。
恋の予感とともに、1990年を迎える。ぼくは、あと一年だけ学生生活が残っており、彼女は、そのまま簡単なテストを受けることはしたが、いま勤めているバイト先に就職することになっている。ぼくの目線内に、その存在があって当然という感じになってしまっているので、それは嬉しいことでもあるし、もともとその進路は、彼女の望んでいることでもあったようだった。
なので、これからも会う時間が減るということはなさそうだった。しかし、数回デートをしただけの男性を一体、誰が本気で考えてくれるだろうか。
いまなら、分かるのかもしれないが、その頃の一才という年齢の差以上に、彼女の考え方は大人びていたし、また逆に、これは当然なのかもしれないが、ぼくは、もっとも自分の都合の良いように地球が動いてくれるものだと認識していた。つまり、子供っぽかった。
それで、だんだんと一緒にご飯を食べる機会も増え、何度かはスポーツも観戦した。それ以外にも、時間を見つけては何をするということもないのだが、会う時間を増やしていった。
寒さが薄らいでいく、それでも、2月の終わりごろだったと思うが、あまりきれいでもない都会に流れる川を横目に散歩をしていた。彼女は、駅から自宅の途中にあるその川を愛していた。大学に入って、東京に出てきたらしいが、その暮らしの3年目を迎える頃、そこに引越し、それ以来、その場所に住んでいた。春の前兆を感じさせる風が吹き、ぼくは上着を脱ぎ、それを右手に持って、左手には、彼女の暖かい手の平があった。それは、ぼくにとって、とても安心感を与えるものだった。