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爪の先まで神経細やか

物語の連鎖
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存在理由(4)

2010年10月14日 | 存在理由
(4)

 彼女の大学での生活が終わる。同時にぼくのそれも残り一年になった。就職した生活に完全にシフトする前に一緒に旅行しようということになり、荷物を作る。場所は、アメリカの西海岸にした。太陽のひかりと、深くものごとを追及しない日々。

 その地に、彼女の友人がいて、住む所は別にホテルを確保したが、時間をかなり、たっぷりとその友人は取ってくれ、いろいろな場所に車で連れて行ってくれた。快適な空と、友人が用意したコーヒーが入った魔法瓶とを道ずれにし。

 大きな橋を渡る。金門橋という日本語の名前。不吉にもその優雅なたたずまいとは別に自殺の名所にもなっていることを知る。この美しい空を無償で頂けるのに、なにに不満があるのだろうと、その時のぼくは思っていた。

 遊園地までぼくらを運んでくれ、そこで一日遊んだあと、友人がまた迎えに来てくれもした。旅行で、なにを食べるのか、なにを食べられるのかと、行く前に少し心配になったけど、その友人と旦那さんが一緒にレストランに行ってくれたり、自宅に招待してくれたりもして、不自由なく、その問題もクリアされた。そこには2歳になる女の子がいて、みどりによくなついた。彼女は、人間に対する時、自然と自分のバックグランドを総動員して、なににでもなれた。その時は同じ目線で、生まれたときからその女の子を知っているように、また、その小さな女の子の微かなプライドもつつくようにして、不思議な交友が芽生えていた。しかし、よく考えると女性たちは、そのようなことを誰に教わるでもなく出来るのだろうか? それにしても、彼女の振る舞いはとても自然だった。

 その小さな子の母親は皿洗いや、ぐずりだした女の子の面倒があるため、旦那さんがぼくたちをホテルに送ってくれた。普段、あの小さな女の子は人と親しげな関係になるには時間がかかると言った。そして、誰かと別れたり離れたりする時も、あんなには嫌がらないとも言った。たとえ、自分が出張で家を出る時も、そのことを逃れられない生活の一部として受け止めるような平然な顔をしていた。なので、今日の彼女は、すこし違っていた、と、その子のお父さんは印象を漏らす。

 そのことを、ぼくはホテルの部屋で考えている。彼女は、一日の疲れをシャワーとともに流している。ぼくも、多分、そんな別れみたいな予感だけで、今日の女の子のような振る舞いをしてしまうのだろうかとの憂鬱な予感をかみしめ、ビールの缶を二本、冷蔵庫から出した。