医大生・たきいです。

医大生的独言。

患者様?患者さん?

2015-06-24 22:40:17 | 医大生的生活

立っている時間が長い1日でした。足がパンパン。先生方はわれわれ学生の1億倍くらい大変そうだけれど、俺って将来やっていけるのだろうかと今から心配になる毎日。医大生・たきいです。





「うちの病院では患者さんに“様”をつけないことになっている」

という話がカンファ中に出てきて、それまで眠かったはずなのに妙に目が覚めた。病態生理の話も、治療計画の話も、圧倒的知識不足であると自覚しながらもそろそろお腹いっぱいなだけに、こういう話のほうが興味をそそられる。きっとわたくし文系人間なのです。その話題はすぐに流されていったが、ついつい考え込んでしまった。

まず気になったのが、「うちの病院では」という発言。他はどうなのか。まさかうちの病院だけ「様」づけしないという驚愕の事実が得られてしまっては、これはブログには書きづらい事項となってくる(笑)

ググって得られた情報によると、

「患者」という名称は「患った者」という意味であるため、この言葉に尊敬語である「様」をつけるのは日本語として問題がある

と2006年に京大が発表して以来、「患者さん」「○○さん」という呼び方が一般的となってきたようだ。たしかに医学部の学生が病棟実習前に受験する“OSCE”という実技試験の対策ビデオでも、患者の呼称は「さん」付けだったかと記憶する。うちの病院だけではなく、全国的に「様」より「さん」が広がってきているようだ。

なぜ「様」が不適切かと考えた。蓋し、利潤の追求の香りがするからではないか。経営をうまく回していくためには、顧客を大事にすべき。顧客は敬ってなんぼ。「お客様」なのである。お客様は神様だ。しかし、かかる態度は医療現場において不適切だというのが、「様」が不適切な理由に違いないと考えた。確かに医療はサービス業ではあるが、お金を第一に考える態度は誤っているだろう。医療者側が――お金第一だ――なんて決して考えていないとしても、「患者様」と呼ばれながら会計に行って、受診費用が嵩んでしまった日には患者サイドにそう受け取られてしまいかねない。「様」という尊敬語にはいやらしさが見え隠れする。要は「金」の問題だろうというのが筆者の意見。

友達に意見を求めてみた。

医者―患者関係は対等なものでなくてはならない。医者が上位に来る構図はパターナリズムであるとして批判される。これは医学部生の正答率100%なんじゃないか常識問題としてたまに試験に出てくる。109回国試でもパターナリズムに関する問題が出題されてはいなかったか。対して、患者が上位に来る構図というのもよくないのではないかというのが彼の意見。「患者様」に医療者が「させていただく」という図式は治療に悪影響をきたしうる。医療者が最善の治療をしたとしても、服薬をきちんと継続してもらうとか、疾患によってはよく身体を動かしてもらうだとか、患者の協力なしには治療目標は達成されない。信頼関係を築いた上で医者―患者が共通した目的意識を持つことこそが治療に好影響を及ぼすであろうと。だから「患者さん」と呼ぶべきではないかとの意見。なるほど、「金」のことにしか考えが及ばなかったわたくしが恥ずかしくなるような模範的な解答を頂戴した。さすがは頭いいねぇ。

しかしながら。それなら医者を「先生」と呼ぶ風習もどうなのよと思わなくもない。この業界には、まだ医師免許を持たぬ学生まで「先生」と呼ばれるという変な風習がある。医者と患者は二人三脚で歩むべしという主張を過激に押し通したら、医者が先生と呼ばれるのは不適切ではないかとさえ思う。「先生」だなんて呼ばれてしまうから、天狗になって潜在的にパターナリズムの構図も生まれるのではないか。先生―患者様と呼び合うことで両者はなんとか対等な関係に近づくという考えも、個人的にはあまり支持はしないけれど、ありかもしれない。

なぜ先生と呼ばれるのか問題。そういえば、今夜はレポートを仕上げなければいけなかったので、この問題はとりあえず心にしまっておこう。笑






(今使っているパソコンがそろそろ寿命な気がしなくもない気がしてきた人(笑))