「小林秀雄全集」の中に読みたい文章があって、図書館へ。「医学書しかない」と評判の我が大学の図書館ですが、いくらなんでも流石に小林秀雄くらいはあるだろう、と。うちの大学は悪い意味で裏切りませんでした。小林秀雄、ない。ちゃんと文献検索したけど、ない。思わず、やっぱ総合大学行きたかったかも、と思ってしまいそうに…。医学のカリキュラムをどこよりも前倒しにするあまりに、全国でトップクラスに一般教養が薄いと噂される我が大学ですから、この蔵書の状況も致し方ないのかもしれません。もちろん医学書や医学論文に関してはすごいんです。学内LANからアクセスすればいくらでも最新の医学にアクセスできるほど。これは他大を凌駕するとも先生から聞いたことがあります。普段あまり使っていないのでその恩恵を感じたことは少ないですが(笑)。医科大学の図書館に文学や哲学を求める私が間違っているのかもしれません。恐らくそうした本の需要は医学部に於いてはゼロに近似されることでしょう。文学書のコーナーがあるだけまだマシなのかもしれません。漱石全集くらいはあったし。でも、どうも脆さを感じてしまうわけです。もっと幅広い知に触れる環境があってもいいと思うのですが。文句ばかり垂れていてもしょうがないので、むしろ「ない」環境がモチベーションに火をつけるのだと考えることで前向きになれました。「まさに科学が成り立たぬところにおいて、文学が成り立つのである」という加藤周一の言葉の意味を考えたいものです。医大生・たきいです。
さて、本日ご紹介するのが、この本。
ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫) | |
七月 隆文 | |
宝島社 |
帯にはこう書いてありました。
彼女の秘密を知ったとき、
きっと最初から読み返したくなる
こういうこと書かれてしまうと読んでて伏線に気が付いてしまうところがアレですが、それでも期待を裏切らない物語でした。
ベタな恋愛小説はあまり好きではないのですが、この小説はよかった。
最初の100ページは若い男女に嫉妬しかしませんでしたが、
最後の100ページは顔をくしゃくしゃにしながら泣きました。
切なくなってしまったよ。医学の勉強ばかりしていて乾ききった心に沁みる作品。医学部の学生のみなさま、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」を読んで人間味を取り戻してください。部屋に1人で籠って一気に読むのがオススメです。
こういう美しいお話が書けるようになりたいものです。
(最近医者よりも小説家になりたい気がしてきた人(笑))
ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫) | |
七月 隆文 | |
宝島社 |