50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

塔の都、パリ!?

2007-11-25 05:18:46 | パリ
華の都パリが塔の都になる・・・そんな気がしてしまうようなプロジェクトが、今話題になっています。ただし、塔と言っても、高層ビルのことなのですが。



22日付のフィガロ紙によると、パリ市が高層建築による地域開発案を提示したそうです。ただし、これでやりたいという決定案ではなく、11のラフなアイディアで、今後議論を高めて行きたい、ということのようです。フランス国内外の建築家たちによるさまざまなアイディア・・・そこに共通しているのが、高層ビル!

ご存知のように、パリ市内の建物の高さは37メートルまでという決まりがあり、厳格に守られています。パリではフランス革命以前から建物や軒の高さに関する規定があったようで、それが37mと決められたのは1977年と言いますから今から30年前、ジスカール=デスタン大統領時代にそれまでの25mが37mに引き上げられたそうです。19世紀のオスマン男爵による街づくりはもちろんですが、それ以前から今日まで続く厳格な建物の高さに関する規定によって、多くの人々を魅了する今のパリの街並みがあるのですね。そこに、高層ビルを・・・


(セーヌ河畔の建物もきれいに高さがそろっています)

レンタサイクル“ヴェリブ”を成功させたり、新しい施策を積極的に推進するドラノエ市長といえども、さすがに、パリの真ん中に高層ビルを、と提案しているわけではなく、候補に上がっている三ヶ所は、いずれも、パリ市の周囲を走る環状道路と鉄道などに囲まれて開発から取り残されているところです。



具体的には、18区のポルト・ド・ラ・シャペル、12区のポルト・ド・ベルシー、そして13区のマセナ地区。ただ、13区のセーヌ沿いには国立図書館やその南の再開発地区に新しいビルができています。しかし、それらと今回のアイディアが異なるのはビルの高さ。



このようなスケッチが提示されましたが、左側の案では120~150m、右側では131mの高さのビルを建設することになるそうです。一番上の写真で紹介されている案では、210mでモンパルナスタワーと競う高さ! 実はこのモンパルナスタワーが、パリッ子たちのトラウマになっているんだそうです。1973年の竣工以来、周囲と調和しない、パリらしさを損ねる・・・大不評で、このビル以降、パリ市内に高層ビルをという声はどこからもあがらなくなっているとか。12万人を対象に都市開発に関する調査を行なった際にも、60%の対象者が高層ビルの建設に反対したそうです。パリに高層建築は要らない!


(よく見かける街並みの一つですが、やはり高さはほぼそろっていますね)

それが、どうして高層ビルを? ひとつ言われているのは、土地の有効活用。それも住居用というより、オフィス用。パリ市内にオフィス用のスペースが不足している。そのため郊外に出て行く企業も多い。すると、法人税が減る。そこで、パリ市の周辺部を開発しよう、それも土地取得費を抑えられる高層ビルを、となるわけですね、たぶん。そしてもうひとつは、他の都市、特にロンドンへの対抗意識。ロンドンでは市内中心部に近々224mのビルができ、その先には306mをはじめ20近い高層ビルの計画が進行している。モスクワには、612mのロシアタワーが計画されており、ダブリンやトリノにも計画が相次いでいる。こうした趨勢の中に埋没しないよう、パリにも高層ビルを! ロンドンにまけてたまるか―――ただし、高層ビル嫌いなパリ市民に配慮して、37mという決まりはそのまま残し、特例として周辺部の三ヶ所に高層ビルを建てる・・・ドラノエ市長はこんなふうに考えているのではとも推測されています。

来年3月は、日本で言うところの統一地方選挙。多くの都市で市長選挙があります。パリ市もそのひとつ。ドラノエ市長も社会党候補として再選を目指して立候補する予定ですが、選挙戦のテーマのひとつにこの高層ビルを加えるそうです。再選されたら、必ずや実行したい! それに対し、対抗馬となると言われているド・パナヒュー女史(国民議会の与党・UMPの候補予定者)は反対するかと思ったら、パリの中心部での高層ビル建設には反対するが、周辺部での開発としては、良いのではないか。ただし、パリの人たちは高層ビルに暮らすのに慣れていないのだから、住居用ではなく、あくまでオフィス用にすべきだと言っているようです。この高層ビル案に反対しているのは、何と、社会党と連携している緑の党。建物の高さが問われるべきではなく、都市の景観を守れるかどうかが問題。周囲と調和しない高層ビルには反対だ。

開発、景観、税収、自尊心・・・パリに高層ビル群が立ち並ぶ日が来るのでしょうか。

↓「励みの一票」をお願いします!
 すぐ下の文字をクリックすると、ランキングにアクセスし、投票になります。

人気blogランキングへ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。