竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

ボート漕ぐ翼のごとく腕を張り 松永浮堂

2019-05-30 | 今日の季語


ボート漕ぐ翼のごとく腕を張り 松永浮堂

胸を張り、肩甲骨を引き寄せるボートを漕ぐ動作と、鳥の羽ばたきの動きは確かに酷似している。ことにレガッタなど数人が連なるボート競技を見ていると、腕とオールが翼と化して、水面を羽ばたいているように見えてくる。長い翼の中心に据えられた背中が、ことに鳥のそれを思わせるのだ。以前、デイヴィッド・アーモンドの『肩甲骨は翼のなごり』という書籍をジャケ買い(カバーの印象が気に入って買ってしまうこと)したことがある。残念ながら内容は生物図鑑とはまるきり関係なく、感動的な小説だったが、なにより翼のなごりが自分の身体にもあるのだということが、心を広々と解放させてくれた。とはいえ、体重10kgほどの大白鳥でさえ、両翼を開いた状態で2mを越える。人間が飛べる翼とはどれほどのものだろうと調べてみると、なんと片翼だけで17mが必要になるという。邪魔か。『遊水』(2011)所収。(土肥あき子)


ボート 三夏

貸ボート/ボート小屋/ボート番
西洋型の小舟で、オールで漕ぐものをいう。川、池、湖、海など
での乗物。昔は木製のボートが主流だったが、最近ではゴム製の
ボートが一般的で、舟遊びのほか釣や人命救助に利用されている。  



さようなら夏 湖上ボートの 白い軌跡 伊丹三樹彦
ついてくる鷲鳥にボートつひに勝つ 山口青邨
つつじ紅白少年のボート少女のボート 富安風生
ひとの死処ここかボートを漕ぎて過ぐ 山口誓子
ひと死にて温き海ボートより触る 山口誓子
アベックのボート鵞鳥を従へて 山口青邨
キヤンプより漕ぎ出したるボートかな 山口青邨
ボートにて湖来し大工チャペル建つる 中村草田男
ボートのあふりうけて家鴨の無辜の胸 津田清子 礼拝
ボートの櫂入ると出づると滑らかに 山口誓子
ボートの腹真赤に塗るは愉快ならむ 西東三鬼
ボートひとつ富士へ漕ぎ出す冬芒 百合山羽公 故園
ボート同じ男女同じ春の河濁り 西東三鬼
ボート屋の歩板女にふと長し 後藤比奈夫
ボート押出すときも少女はガムを噛む 富安風生
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