人間みな宇宙産業の人財である
この記事は平成11年7月1日発行「観音たより」(発行人:本多碩峯)より掲載
「利益を上げられないのは罪悪だ」というのは、松下電器産業の創業者、故松下幸之助氏の持論だった。これは単に「もうけろ」と言っているわけではない。ヒト、モノ、カネの大切な経営資源を社会から預かって、赤字を出すような経営者は、社会に損害を与えている。企業を「公器」ととらえて、それを生かせない経営者は、経営資源を社会に返せという厳しい倫理観が背景にある。
松下幸之助は昭和七年経営の悩みを相談に天理教を訪れ大勢の信者が勤労奉仕に明るく働く姿を見て衝撃を受ける。自分の会社の社員は暗い顔をして働いているのに、彼らはなんであんな明るい顔をして喜喜として働いているんだろう、と。そこで幸之助は気が付いた「儲けるとは信者と書く」と。社員とは信者であり、ここに社員の明るく働く原点があると考えた。
それが松下流の「会社主義」が生まれ、先ず最初に、昭和十二年高野山に支那事変で死んだ社員の為にお墓を建立して今日の繁栄の基礎を作った。明治に近代化西欧化へまっしぐらに進んで今日に至った。
その中に明治の思想家、岡倉天心人物像に触れる機会があった。
明治維新の流れと異なり日本の仏教美術を通して日本文化を重んじ、インドや中国を旅行しアジアの連帯の重要性を提唱し大東亜共栄圏の思想を願った。後米国ボストンに渡り天心はボストン美術館の東洋部長として日本の美術作品収集に当たった。
近代化や西欧化にひた走った明治期の日本で天心は孤立してしまった。けれども時流の大勢に流されないスケールの大きな生き方の非常に魅力的な人 物」と今日評価されている。私達は経験したあの「大東亜共栄圏」とは非なるものである。若し自心を知るは即ち仏心を知るなり。
仏心を知るは即ち衆生の心を知るなり。
三心平等なりと知るは即ち大覚(だいかく)と名づく。
大覚を得んと欲(おも)はば、当 に諸仏自証の教えを学す応じ。 性霊集「空海全集第六巻」より
企業の倫理観や国家の近代化に伝統文化を重んじる自心が他人や他国を尊重する仏心に通ずる事になる。
米国の経営学者ピーター・ドラッカーと日本報道記者との会話の中で「孫は今、十五歳。コンピューターが好きでね。朝から晩までそればかり。我々の世代は車に熱中したが、今はコンピューターなんだね。
日本の十五歳はどうしている? やはり、受験勉強だろうか」と淡々と語ったとか、今日、米国人が日本の将来を案じているからかもしれない。
現在、日本の産業は全体で約三割の雇用と設備と債務の過剰を抱えていると言う。今こそ人の幸せを創造する活力を育むチャンス(有餘涅)であると確信するのであります。 合掌