果物料理と果物食品加工

ビタミン・ミネラルに果物の仄かな香りに目覚める フルーツソムリエ

曼陀羅の心  生か せいのち

2011-12-02 20:05:52 | 高野山
 

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曼荼羅の心 

             吉武 隆善 (大分県中津市 弘法寺の住職)

 もみじの季節になりました。私が住んでいる大分県耶馬漢(やばけい)は、全国的にももみじがきれいなところです。以前、私は高野山に住んでいましたが、大門から少し東に行った伽藍の手前のもみじは、オレンジと黄色が混ざったような色が朝日に反射して心が純真になるような色でした。テレビで見た嵐山のもみじは、それは鮮明な赤色でした。所が変わればもみじの色もいろいろと変わるものだなあと、つくづく感心しました。しかし、それもやがて落ち葉となって散ってしまいます。実に無常であります。

 「無常」とは仏教用語で、この世の万物は常に消滅流転してはかないものだ、という意味です。このように日常生活の中に溶け込んでいる仏教用語がたくさんあります。たとえば「精進する」とは、読んで字のごとし、精を出して進んでいくと いうことです。つまり、目的に向かって努力するといった意味です。また、「方便」という言葉もよくロにします。嘘も方便のように使いますが、方法を便利に使うというと ころから方法や手段のことを言います。止むを得ず嘘をつくことがあって も、それは相手のことを考える方法や手段の中で 嘘をついたということになるのです。

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 「因果」という言葉もよく耳にします。これも読んで字のごとし、原因があって結果があるということです。もみじは夏の間は青い葉ですが、太陽の光と秋の朝夕の冷え込み、雨の量などの原因をもらって、その結果赤くなるということです。ですから高野山のもみじはオレンジがかった色でしょうし、嵐山のもみじは鮮やかな赤、耶馬渓のもみじは真紅なのでしょう。そのもみじのどれがすばらしいか。好みはあっても、どれが良いかは言えないでしょう。

  私たち人間はどうでしょうか。私たちはみんな父親と母親から生まれてきます。父と母が結婚するという原因があって、その結果私たちは生まれてきます。また父や母やほかの家族にいろいろな育て方をされてきたと思います。家族構成もいろいろでしょう。だから十人十色といって、それぞれの顔、容姿、性格を持っています。そんな中で誰がすばらしい、誰が劣っているということがあるでしょうか。みんな違うからそれでいいのです。

 

 皆さんは曼荼羅をご覧になったことがありますか。曼荼羅には実にたくさんの仏さまが描かれています。優しいお顔をした如来から菩薩、また憤怒相の怖い顔をした明王や天、近くで見ると本当にさまざまな仏さまが描かれています。そんなたくさんの仏さまが入り混じって、調和と秩序を表し、私たちに安らぎをもたらせてくれます。曼荼羅は大日如来を中心にして、内に外に上に下にとお互いに供養しあう仏の世界を表しています。相互に札拝し、供養する尊厳な関係があります。

  いろいろな個性をもった私たちが、この曼荼羅のようにお互いを相互礼拝し相互供養すれば、この世が曼荼羅の世界、密厳国土の世界になるのです。それがお大師さまの願いです。一人ひとりが個性を生かしながら、曼荼羅のような世界をつくっていきたいものです。

参与770001-4228(本多碩峯)

 

 



 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


今、よみがえる『中門』  大いなる御誓願の追想

2011-12-02 16:40:50 | 高野山
 

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今、よみがえる『中門』

 

          ~大いなる御誓願の追想

        高野山開創千二百年記念大法会事務局

 

金剛峯寺が管理する森林は、二千ヘクタール(大阪ドーム約六百個分)もの広大な面積に及びます。

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 この度、八期中門の再建工事に用いられる木材は、この森林から産出した樹木を用います。このうち、主な用材であるヒノキは、樹齢三百年から四百年生のもので、 幹廻りは二メートル以上にも及ぶ見事な大径木です。

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 これらの優良なヒノキを産出する森林は、数知れない大師末徒のお力添えによって、先人が植樹、間伐など、適正な森林監理を行うことによって、育まれたのです。そして、私達の時代の中門再建工事に使うことが出来たのです。

  樹木は伐採された時点で、植物としての生命は終わりますが、育まれた土地で建造物となることで、千年以上存在し続けることが可能です。

  まさに樹木は形を変えて、「活かされて、生きていく」と言い換えることができるのではないでしょうか。

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 しかし、優良な木材、優れた建築技術、そして大師未徒の思いだけでは、再建された中門は末永く存在することはできません。

 個々の建造物には、それにまつわる文化があります。そして、その文化を守ってきた要因があります。
 高野山の場合、周囲を取り巻く自然、特に森林が存在したからこそ、真言密教という宗教文化が今日まで伝わり、私達大師未徒がお大師さまのみ教えに触れることが出来たのです。

  「密教文化の継承」と「森林の保全」は、これらを共に行っていくことが「高野山を守っていくこと」、つまりは「お大師さまのみ教えを後世に伝えていくこと」、ひいては「再建される中門を末永く後世に伝えていくこと」となるのです。

 お大師さまのみ教えには、「共利群生」という言葉があります。この言葉は、自然と人とがバランスを保ちながら、調和し、共に存在していくという意味です。

 平成二十七年の「高野山間創千二百年記念大法会」は、まさに「共利群生」を今一度考え、省みる絶好の機会であり、「中門再建」は、そのシンボルなのです。                            (TS

参与770001-4228(本多碩峯)

 

 

 

 

 

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一年を振り返って         高野山新報

2011-12-02 12:26:17 | 高野山
 

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一年を振り返って

 総本山金剛峯寺執行長

 高野山真言宗宗務総長

                       庄 野 光 

 

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本年は災害の多い年でありました。三月十一日発災の東日本大震災にはじまり、台風六号・十二号・十五号の来襲、極地的な集中豪雨などにより各地で大被害を被りました。さらに、福島第一原子力発電所の事故による放射能の拡散という事態まで発生しました。

  本宗におきましては、大震災発生当日に災害対策本部を立ち上げ、現地へ担当者を派遣し被害調査にあたり、援助物資の配付に着手しました。一方で、全国の寺院教会に義捕・支援金の拠出を依頼し、被災地の自治体、関係宗団へその金員をお届けし、被災した寺院教会へ復興助成金の配布をいたしました。現在は、宗教家の使命である「心のケア」を中心とした料援活動に取り組み、足湯隊による傾聴ボランティアと森林セラピー活動を続けています。

 資金を提供していただき、かつ地道で献身的な救援・支援活動を続けていただいている皆様方に衷心より敬意を表し、感謝申し上げます。

 明るい出来事もありました。三年後に迎えます「高野山開創千二百年記念大法会」の最大の事業であります「中門再建」の地鎮祭を七月十五日に松長有慶座主・管長現下のお導師のもと厳修いたし、いよいよ再建に着手いたしました。

 明春には法要日程を確定し、いよいよ実動体制に入ります。

 大法会の気運を盛り上げるために、事業内容につきまして、随時各部門より情報を発信して参ります。

  国際交流におきましても成果をあげることができました。

 念願でありました米国における現地法人の資格を取得することが出来ました。これによりまして、停滞気味でありましたアメリカにおける国際布教の宣揚に道筋がつけられることになります。

 高野山大学創立百二十五年記念事業として、ダライ・ラマ法王十四世のご来山を得ました。講演・対話をはじめ、チベット密教金剛界マンダラ港頂を開蓮していただき、感動と感銘を多くの参加者に体感いただきました。

 また「日本イタリア文化交流記念大会」が大師教会大講堂におきまして大々的に開催されたとともに、管長祝下の名代として四之宮東京別院主監を団長とする、声明・雅楽団がフィレンツェ・ヴエツキオ宮殿で公演し、ヴァチカンを表敬訪問をいたし、イタリアとの国際交流を深めて参ります。

 読者各位には、なお一層の宗・本の護持・興隆のためのご協力を懇請申し上げますとともに、新しい年が輝かしいものでありますようお祈り申し上げます。      合掌 

参与770001-4228(本多碩峯)