供 養 星島光雅 (岐阜県岐阜市円明院 住職)
お仏壇やお墓に、線香やろうそく、お花をお供えしますが、その一つひとつお供えする意味があり、心を込めて供養しなければなりません。それらの供養に六種供養あるいは六波羅蜜(ろくはらみつ)という教えがあるからです。
灯明をあげることは仏の知恵をいただく「智慧波羅蜜(ちえはらみつ)」、お花をお供えすることは耐え忍ぶ「忍辱波羅蜜(にんにくはらみつ)」、線香を手向けることはやりぬく心「精進波羅蜜(しょうじんはらみつ)」、お仏飯を食べていただくことは心の安定「禅定波羅蜜(ぜんじょうはらみつ)」、お水を飲んでいただくことはすべての人々に奉仕する「布施波羅蜜(ふせはらみつ)」、塗香を塗り身を引き締めることは戒律を守る「持戒波羅蜜(じかいはらみつ)」といい、お参りのときに、念珠や輪袈裟を用いるのも、持戒波羅蜜だと思います。
お大師さまは、これらすべての供養に菩提心ーーー仏の心を起こしましょう、と教えになっておられます。形や形式にとらわれず、あなた方の心でする供養が一番尊いのです。
ある夜、檀家さんの家にお勤めに行きました。インターフォン越しにお嫁さんが、「あれ、今日でした?忘れていました。お母さんはまだ仕事から帰ってきておりませんが、どうぞお勤めしてください」と言われ、仏間に通されました。
衣に着替えながらお仏壇を見ますと、花瓶にはお花が供えてありました。今日はお寺さんがみえるから、仏壇を掃除してお供え物と花を添えておかねば、という経験がおありかと思いますが、私はお仏壇の花を見て、ここの家族は毎日ご主人のご供養をしておられるのだと心温かくなりました。決して立派な花でありませんが、ご主人が亡くなられてから七年間、月命日に供えてある花はすべて奥さまが、プランターで作られた小さな花でした。愛情のこもった花です。
たとえば、道端に一輪のたんぽぽがさいていました。摘み取って捨てたなら、その花はゴミです。摘み取って家の中に飾ったなら、心の癒しさまにお供えしたら、そのたんぽぽは仏となのです。
この家族はお母さんから孫さんまで、全員私の後ろに座ります。経本と、三歳のお孫さんまで手には念珠を持っています。お布施は奥さまが息子さんに渡され、息子さんの手から私にいただきます。お母さんは、お父さんへの感謝や仏さまを大事にする行いを、身をもって息子さんやお嫁さん、そしてお孫さんに教えているのです。二人のお孫さんは、まだ左右も分からない小さな花ですが、この家庭に育てられることによって、将来はきっと多くの人から手を合わさられるような、立派な大きな花を咲かせることでしょう。
仏さまに、食べなくてもおいしいものを食べさせてあげたい、見えなくても美しい花を見せてあげたい、見えないものへする供養は美しい、見えないものへする供養は、この心こそ仏の心です。
参与770001-4228(本多碩峯)