5. 2021年の8月との比較
2021年8月8日に同じ調査をしていたので、比較をしてみます。まず訪花昆虫が確認された花の数ですが、両年ともヨツバヒヨドリが最多で、シシウドがこれに次ぎました(図10)。どちらも2022年の方が多く、特にシシウドは倍増しています。これらが実際に増えた可能性がありますが、調査の条件が多少は違うので、この違いよりも全体としてはほぼ同じであったと読み取るのが妥当だと思います。
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図10. 2021年8月8日と2022年8月11日の訪花昆虫が確認された花の数
ところが昆虫の数は違いました(図11)。2021年にはアブが最も多く、これに次いでハエ、マルハナバチと少しずつ少なって行きました。ところが、2022年にはアブだけが突出して多く2位以下を大きく引き離しました。これは調査条件の多少の違いではとても説明がつきません。原因はわかりませんが、2022年にはハエ・アブが特別に多くなりました。その他の昆虫ではマルハナバチが大幅に少なくなりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/a7/3d83d8f0895e86a54f4387e4b89abaec.jpg)
図11. 2021年8月8日と2022年8月11日の訪花昆虫の数
なお、2022年にはヤナギランが目立って増えました。調査した8月11日の結果では、訪花昆虫の数は多くありませんが、2021年に1例だけだったのに対して、2022年には8例になりました。ヤナギランの開花期はややピークを過ぎていたので、もう少し早くに調べればもっと多かった可能性が高いです。
6.まとめ
8月中旬の調査で多くの訪花昆虫が記録されましたが、その数はシカの影響が強くて虫媒花が少なくなっていた2013年のほぼ10倍でした。2015年に柵ができて7年目で花と昆虫のリンクが戻ってきたということです。ただしこの数は2021年の同期とほぼ同じでしたから回復はもう少し前だったと思われます。花としてはヨツバヒヨドリとシシウドが多く、これも2021年と同じでした。しかし昆虫の内訳は両年で大きく違い、アブが突出して多くなりました。この原因は不明です。また訪花昆虫が最も多かったヨツバヒヨドリは筒型の花であるにもかかわらず、訪花していた昆虫はアブ・ハエが多く、花の形と昆虫の口の形の対応では説明がつかず、このことを説明するのは重要な課題です。植原さんと、
「調べるとわかることもあるけど、わからないことが出てきて、もっと調べたくなるよね」
とよく話しますが、本当にそう思います。
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