新潟へ行ってきたので旅行記を。まずは、営業運行を開始したばかりのJR東日本の新型車両に乗車した話。
来年2020年度、五能線などにも導入される「GV-E400系」電気式気動車。※2015年の導入発表時の記事
この車両は、普通列車用気動車(ディーゼルカー)・キハ40系(キハ40形、キハ47形、キハ48形をまとめた便宜的呼称)の代替。
新潟地区では、2018年度から試験を行い、2019年度に本格導入、2020年春にはキハ40系がなくなる。
秋田地区では2020年度に導入。五能線(リゾートしらかみ以外)のほか、津軽線、秋田以北の奥羽本線の各一部のキハ40系を置き換える。【27日補足・津軽線と奥羽本線では、701系電車に混ざって一部のダイヤに気動車が使われている】
※秋田地区でほかにキハ40系が走っている男鹿線は、今回の導入対象外。
※電気式気動車はリゾートしらかみなどの「ハイブリッド車両」とは別物(だけど通ずる点もある)。男鹿線の蓄電池式電車EV-E801系とも別。
新潟での営業運転開始は8月19日。
JR東日本新潟支社が6月27日に発表したものの、磐越西線のSL運行開始20周年イベントをメインにした文書の中で、新型車両展示会が告知され、営業開始はさらにその中で告知されているという、分かりづらいやり方。
しかも当初の投入ダイヤは現地に泊まらないといけなそうな、よそ者には乗りづらい時間帯。
それでも、運行初日には記念ハガキの配布が行われ、初乗車狙いの人が集まった(立ち客多数)とのことだが、全体的にはさほど注目されていない感じ。
これからどんどん増備され、春にはイヤでも乗れるからということはあるだろうし、新しいものより古いものを好む鉄道愛好家のほうが多いだろうし。
個人的には、あまり好きじゃないキハ40系の後継かつ新技術の車両ということで、期待をこめて早く乗ってみたかった(今後秋田に導入されても、秋田駅まで来るのは1日1往復だけのはずで、乗るのは難しそうだし)。
新潟への旅行を計画していた時に、運良く情報を得て、行程をやり繰りして乗ることにした。
19日から投入されているダイヤは、磐越西線と羽越本線の各一部。所属基地のある新津駅を拠点とし、新潟駅には乗り入れない。
17時台に磐越西線の新津-馬下(まおろし)1往復、新津に戻って羽越本線で新発田へ1往復、再度羽越本線で山形県境の鼠ケ関まで行って滞泊。翌朝9時前に新津へ戻って車庫に入るという運用。
新津も新発田も新潟駅から近いものの、この日は新潟市内の宿はほぼ埋まってしまい、長岡市に宿泊することになった。そのため、少しでも早い時間である磐越西線に乗り、終点の少し手前・五泉(ごせん)駅で降りて折り返すことにした。
運行開始からまだ1週間経っていないものの、新津駅にはそれ目当てで来た人は少なそう。高校がまだ夏休みなのか、新津発はこの時間にしては乗客も多くなかった。戻りの新津行きは、思いのほか行きより乗客が多かった。
両運転台のGV-E400形
GV-E400系は、両運転台・片運転台トイレあり・片運転台トイレなしの3形式があり、それぞれ1両ずつつないだ3両編成での運用。
片運転台トイレありのGV-E401形
GV-E400系はステンレス車体。先頭部がカクカクして「顔」が四角形じゃなく八角形のような斬新で独特なデザイン。「金属の塊から削り出した」というイメージだそう。
事前に写真を見た限り、どう評価していいのか分からない感想を持った。実物を見ても、同じだった。そんなに嫌いじゃないけど、そんなに好きでもない。
キハ40系や最近のJR東日本の普通列車用電車の車体断面は、車体の幅を限界までいっぱいに取って車体上部を広く、下のほうだけを狭めた「裾しぼり」形状。701系電車などはストンと一直線の箱型の断面で、その分、少し車体幅が狭い。GV-E400系は、最近には珍しく箱型。
前面から無塗装の側面にかけて、小さい正方形というかドットが並んで帯状になったものが6段。
そのドットの色は、上下方向に淡い色あいのグラデーション。新潟地区のE129系電車の帯(稲穂の黄色とトキのピンク色)と共通性を持たせている。秋田地区では青系統にでもなるかな?
正面右の帯の部分に「GV-E400」と書いてあるが、401や402形でも同じなので、ここは「形式」でなく「系」を記していることになる。ガラス左上に形式と製造番号を表記。
車内へ。新車の匂いが漂うが、男鹿線EV-E801系(2年以上経ってもまだ多少香っている)とは違う匂い。GV-E400系は川崎重工製造、EV-E801系は日立製作所だからメーカーの違い?
ボックスシートとロングシートが混在するセミクロスシート。オールロングじゃないのは何より。車内の全体的な光景は、最近のJR東日本の普通電車とほとんど変わらない。特に、新潟地区のE129系電車とは、座席布地の柄も同じ(優先席を除く)なので、統一感がある。【28日追記】外観と打って変わって、中はオーソドックスなのに安心。
※以下、写真は両運転台のGV-E400形。
ロングシート部分。左手前は排気筒か何かで出っ張っている
ロングシート部分では、車体幅が狭いことがなんとなく分かる気がする。
ボックスシート部分。右奥はトイレ
天井中央にピンク色の帯が入っている。床面の色が違うことはあるけれど、特に普通列車でこういう天井は珍しい。
ボックスシートは車体の半分弱ほどのスペースを占める6ボックス。片側が1ボックス4人掛け、もう一方は2人掛けでキハ110系と同じ配置。車体幅の狭さを補い、通路幅を確保するためか。
でも五能線のような閑散路線では、両側4人掛けでも間に合う気がする。
参考までに
E129系の車内。3ドアで中ドア向こうがボックス
E129系は、左右とも4人掛け×4ボックス。
客席の窓は間隔がまばらだったり、銀色の太い窓枠が目立ったり、ちょっと古くさい感じもしなくはないけど、特に暗くはなさそう。窓は下側が固定、上3分の1くらいが、内側に倒れて開くという、珍しい作りだそう。例によってカーテンはない。
ボックスシートは、そのまばらな窓割りに合わせて配置されているため、だいぶゆったりとしている。E129系も座席間隔としては同じではないだろうか。テーブルや小物置きはなし。
最近のJR東日本の普通列車の座席は、硬い座り心地が標準。ただ、見た目は同じでも、形式や製造時期によってクッションは別物のようで、微妙に感覚が違う。
仙台のE721系電車のボックスシートに座った時は、もうちょっと柔らかいほうがいいのではと感じた。でも、今回E129系に乗ったら、そんなに悪くないような気もした。
GV-E400系は、ボックス、ロングとも他形式よりもややクッション性・反発感があり、ホールド感が薄いように感じられた【2024年5月6日追記・しっかり座っても、浅く腰掛けているような感覚とも言える】。ロングシートでは、背もたれの角度が急なような若干低いような気もした。気のせいか、新しくてこなれていないせいかもしれない。
ワンマン対応だが3両編成なので車掌が乗務。それでも日本語と英語の自動放送(男鹿線EV-E801系と同じ声か)が流れ、液晶ディスプレイの運賃表示器で駅名を案内していた。
EV-E801系では、ドアボタンがドアの右側にあるところと左側にあるところがあって、戸惑うのが難点。GV-E400系では、車内側はすべてドアの右側で統一されているようなのはいい【27日訂正・左側にボタンがあるドアもあるようでした。片開きドアだからそのほうがいい場合もあるのかもしれない】。車外側では左にあるドアも。
走行。現行では旧車両用のダイヤをそのまま使っているため、新型車両では余力があってフルパワーではないはずなのは踏まえたほうがいいだろう。
詳しい知識はないが、電気式気動車とは、ディーゼルエンジンを発電機として電気を作り、その電力でモーターを回して走行する、「発電機付きの電車」といったところ。
日本では戦前~戦後すぐにも開発されたものの、当時の技術ではうまくできなかったのが、21世紀になって実用化。電車と共通の部品やメンテナンス技術が使えるので、コストダウンになる。ハイブリッド車のバッテリーがないものとも言えるが、バッテリーが高価ということらしい。
座ったのはロングシート部分【28日補足・排気筒? 機器室? らしき出っ張りがある、ボックスシートとの境付近。近くのボックスシートにも少しだけ座った】。走り出すと、エンジン音と振動はけっこうある。変速したりうなったりするようなことがない単調なもの。ツイッターによれば、かすかにモーターの音が聞こえることがあるそうだが、分からず。
速度が出て加速をやめると、一転、とても静か。減速時も目立った音はなかった。
そう言えば、冷房が作動しているが、その音も耳障りではない。
さらに、気動車と言えば駅で停車中にアイドリングしているものだが、それがなかった。【27日補足・停車中に空調などで電力が必要になった時は、起動するのだろうか。】
あと、エンジン以外のレールから伝わる揺れや振動もおとなしい。
つまり、加速時だけがうるさい。加速時だけ意識すれば従来の気動車とあまり違わないけれど、それ以外の場面は電車と同等。
ホームで発車していくのを見送ると、ガリガリゴリゴリとかなりうるさい。小さい子どもの中には泣く子もいるかも。
この翌日、秋田への帰路でキハ110系気動車と701系電車に乗った。
キハ110系は加速が良く居住性も良い、好きな車両であったが、GV-E400系の後だと、いろいろ音がするし、ボックスシートは狭く、ヘタってしまったのかふにゃっと感じられた。
701系は、速いのはいいけれどモーターやレール・車輪の音が車内に響き渡り、とにかくうるさい。冷房もうるさい。そしてふわふわと揺れる。
フルパワーを出せるダイヤや上り坂での性能は気になるものの、第一印象としてGV-E400系は居住性も性能も悪くない。
秋田向けも帯色(と座席の色?)以外は同じものが来るだろうか。ボックスシートがもう少し多くてもいい気もするが、期待できる新車両だと思う。
※予定通り、翌2020年に秋田地区に導入された。
4方向から路線が集まる新津駅。向こうのホームにはキハ110系とキハ47
そのほか新潟方面の話題をおいおいアップします。※次の記事
ただ、キハ40はしぶとく県内に来そうな。
件の721を置き換えるために仙台から大量に701や719が回ってきたように…
男鹿線の蓄電池車の増備の話は聞こえてこず、この分では、男鹿線がJR東日本のキハ40系のはきだめ&最後の牙城になるかもしれません。