広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

かもしかとくまげら

2010-11-12 21:04:19 | 旅行記
今回は秋田-弘前間の鉄道での移動について。前回の弘前の記事はこちら
僕は通常、弘前への往復には特急でなく普通列車を利用している。
それは、特急と普通の所要時間が1時間程度しか違わず、特急の設備がよくなく、特急料金を支払う価値がないと考えていること、時期によって特急は混雑することがあり、普通列車の方がかえってゆったりできるといった理由から。

でも、今回は、行き帰りとも特急「かもしか」を利用した(帰りは一部区間のみ乗車。後述します)。
こちらこちらで取り上げたとおり、12月4日のダイヤ改正で、「かもしか」は「つがる」になり、車両も替わる(同じ形式だがリニューアルされた車両)。
この車両は、ダイヤ改正後も、臨時「つがる」や小正月行事の臨時列車に使用されることは分かっているが、それが終わった来春以降はどうなるか分からない。廃車になる可能性もある。

だから、最後の記念の意味で、乗車したのだった。
ただ、僕は「かもしか」という列車愛称には、あまり思い入れがない。むしろ、「こまち」と「かもしか」の前身である、「たざわ」の方が懐かしい。でも、車両は「たざわ」から「かもしか」へ同じ車両が引き続き使われているため、車両との惜別の思いの方が強い乗車だった。


行きは、座席指定を取った。秋田から弘前まで1810円。かもしかの指定席を取ったのは初めてかも…
秋田駅の中央改札口の上にある「発車標」は、今年1月にアップしたようにたまにおかしな表示が見られる。この「かもしか3号」は、
日本語表示
英語表示に切り替わると…
日英混在!
2行目の日本語オンリーは恒例として、1行目のかもしかがおかしい。
1月の記事の画像では、ちゃんと「LTDEXP.  KAMOSHIKA 3号」と、「号」以外は英訳されていたのに、今回は列車名が日本語のまま。うーん。
特急「かもしか」(弘前駅にて)
かもしかは3両編成で普通車指定席は3号車1両だけ。
前日に「えきねっと」でシートマップ(座席表)を見て、前後に人がいない位置を指定して予約していた。でも、乗ってみると、前後の列にお客がいた。一方、前日の段階で埋まっていた一角は空席が多くガラガラだった。直前の予約/キャンセルが多いようだ。
といっても、指定席全体で10人ちょっとくらいしかいなかっただろうか。自由席はもう少し乗車率がよかった。

指定席のお客はビジネス客と観光客半々くらい。ほぼ全員が、秋田から弘前または青森までの利用で、弘前以外の途中駅での乗車/下車は少なかった。
「かもしか」は現在は、車内販売も、飲料の自動販売機もないので注意。秋田駅のホームでは、関根屋さんが駅弁を立ち売りしていた。
「かもしか」の“トレインマーク”
国鉄時代の特急列車のトレインマークは、手描きでデザインしていたのだろうが、図案も列車名の文字も、個性的だった。
でも、「かもしか」はおそらくパソコンで作ったのだろうか、文字は活字文字をイタリックにしただけのようで、味気ない。
テレビ番組か何かで、この動物は「カモシカ」でなく「エゾシカ」でないかという話が出て、ネット上で話題になったようだが、僕はそんなことよりも、動物のイラスト自体が小さいことと、「かもしか」の文字の背景の緑色の「Eヨ」みたいな雲みたいなデザインが何を表しているのか、気になってしょうがない。
「特急かもしか 青森」
側面の行き先表示は、旧国鉄が定めていた独特の書体「すみ丸角ゴシック体」。JRになった10年後に運行を開始した「かもしか」でも、律儀に採用していた。


かもしかに使用されている車両は、1968年から1979年にかけて国鉄が製造した「485系電車」。計1500両近く製造されたそうで、電化されていればどこでも走れる性能を活かして旭川から鹿児島まで、日本各地で活躍した。
日本の鉄道史に残る“名車”と言えるが、現在では、新車に置き換えられて廃車になったり、「いなほ」「つがる」のように大幅なリニューアル工事が実施された車両も多い。

かつて、秋田の車両基地には、「たざわ」「つばさ(後のこまくさ、現在は廃止)」「いなほ(現在は新潟の担当)」用に、たくさんの485系電車が所属していた。(たぶん100両程度)
しかし、新幹線開業などにより秋田の担当列車が減ったため、多くの車両が他地域へ転属して、秋田所属の車両は減っていった。(秋田の車両は比較的新しかったので、廃車になったものは少なく、現在もリニューアルされて活躍している車両が多い)。

そんな中、現在「かもしか」に使われる、3両編成×3本の計9両だけは、(おそらく製造直後から)ずっと秋田に所属しているので、おそらく、僕自身も子どもの頃の「たざわ」などで、何度も乗った経験がある車両のはず。
また、外観の塗装が変わった程度で大規模なリニューアルを受けていないため、国鉄時代の面影を強く残している。
この時の青森側の先頭車・3号車は「クモハ485-1005」
485系の中では最後に製造された“寒冷地仕様”の1両で、昭和53(1978)年に日立製作所で元々は運転席のない中間の車両(モハ485-1080)として製造され、1986年に土崎工場(現秋田総合車両センター)でトイレ・洗面所を撤去して代わりに運転席をくっ付ける改造工事がされ(その際に現車号へ改番)て、現在に至っている。
普通車車内
床材・シート・カーテン以外はほぼ国鉄時代そのまんま。
デッキとの仕切りのドアも、交換されていはいるが、手動式のまま。観光客の奥様グループは、自動ドアだと思ったらしく、しばらく突っ立っていた。
普通車座席
窓1つに対して席2列。今となってはやや窮屈(91センチ)な座席間隔。
国鉄時代は紺色のような青いようなシートだったが、後に少し背もたれが大きいシートに代えられ、さらに現在の黒系の布地に代えられた。
シート自体は基本的には国鉄時代のままの座り心地で、若干ぶかぶかした感じがするが、嫌いじゃない。

ところで、今や特急列車の座席といえば、リクライニングシートと前方に折りたたみテーブルが付いているのが常識。
でも、かもしかは違う。
リクライニングは、「するorしない」だけで途中位置で止まらない「簡易リクライニングシート」と呼ばれるタイプ。
【2015年4月21日追記】485系など国鉄特急の初期の簡易リクライニングシートでは、倒した状態で固定できず、上体を起こすと「バタン」と正位置に勝手に戻るものだったようだ。「かもしか」の車両は485系の中で後期製造のグループであるため、当初から倒した状態で固定できるものだったようだ。

また、前の座席の背には網袋しかない。テーブルは窓際の壁に造り付けのものが、通路側に折りたたみのもの(上の写真のオレンジ矢印)が設置されているが、小さい。
通路側のテーブルを出したところ
製造当初は壁のテーブルしかなく、通路側席用のテーブルがなかったので、それではあんまりなので、座席改修時に肘掛テーブルが追加されたようだ。
壁のテーブル
485系でも、背もたれに折りたたみテーブルが後から設置された車両では、壁のものは撤去されるのが通例なので、今や貴重なアイテム。
でも、狭いし遠い。これで弁当を食べるのはきつい。国鉄時代はこれが普通だったんだよなー
窓枠(窓かまち)が広くて飲み物程度なら置けるけれど、角張っていて、居眠りしてゴツンとぶつけて痛い思いをしたものだ…

3号車いちばん前(青森側)の席
「ベビーシート」と大きく表示され、「赤ちゃんとお母さんの優先シートです」などともあり、この座席は回転しない(青森方向に固定)らしい。前の壁には、折りたたみベビーベッドが備えられている。国鉄共通の装備ではなく、秋田オリジナルの設備だと思うが、これも懐かしい。
国鉄時代、「たざわ」に設置されていた設備がまだ残っているのだ。当時は、この車両が自由席として使用されていたはず。
でも、指定席として使われている現在は、回転しないこの席に、一般客が割り当てられてしまうことはないのだろうか? 車掌権限の“調整席”扱いなのかもしれない。


帰りは、弘前から東能代まで自由席。900円(クレジットカードのポイントでもらったオレンジカードで買ったから、実質無料)。
弘前駅。「八戸」行きや「かもしか」の表示はもうすぐ見納め
自由席には20人くらいが列を作っていたが、1両半にゆったりと収まった。
自由席は2号車全部と秋田寄り先頭車1号車の一部。1号車(クロハ481)は、改造により、秋田寄り3列(=12席)がグリーン車、残り14列(かな?=56席)が普通車自由席になっている。
グリーン車も、国鉄時代そのままといった貧相なもので、乗る価値は低いようだ。
1号車車内
車内に取ってつけたようなドア付きの黒い板(こまちのに似てる)がでーんとあり、普通車とグリーン車の仕切りになっている。天井はつながっていて、照明と冷房装置がまたがっている。
ところで、天井にある出っ張りが「冷房装置」。現在の車両では天井に穴があるだけのものが多いが、485系では存在感を示している。(2号車は別のタイプ)
このクーラーは【手動】定位置です 秋田車両センター」とラベルが貼られており、要は自動運転できないということなのだろう。たしかに、寒いほど効いていたり、全然効いていなかった経験もある。車掌さんも大変だ。
冷房をよく見ると、
「Toshiba」。昔の東芝のロゴマーク!
このロゴは「東芝傘マーク」と呼ばれるらしいが、僕は子どもの頃、ひらがなの「ぬ」に見えていた。海外では、「T」を「J」と誤読されることがあったので、1969年から現在の「TOSHIBA」のロゴが使われ始めたとのこと。

さて、グリーン車を外から覗いてみると、
矢印部分
一部鉄道ファンの間では有名な話だが、なんと、家庭用エアコンが設置されているのだ!
仕切りを設けた関係で、特に狭い空間となってしまったグリーン車の環境改善のためだろうが、おもしろい。室外機はどこにあるんだろう? 屋根上かな?
ちなみに、このエアコンも東芝製でした…

さんざん車内環境の悪さを並べ立ててしまったけれど、国鉄車両らしい重厚感のある乗り心地は悪くない。流れる景色を眺めるていると、いろんな思い出が浮かぶ。
秋の夕暮れの奥羽本線を行く(長峰-碇ケ関間かな?)

東能代で「かもしか」を降りた。
特急料金節約のためでもあるけど、乗り換える列車は快速「リゾートしらかみ」。まだ楽しみは残っている。
今回、乗車券代わりに使ったきっぷは、「五能線パス」。単純に秋田-弘前を往復するだけでもモトは取れるが、通常510円かかる「リゾートしらかみ」の指定席料金が無料になるという特典もある。
東能代で30分ほど待てば「リゾートしらかみ4号」が来るので、利用しない手はない。混雑期に東能代から秋田までといった短距離の指定を取ったらヒンシュク者だが、この時期なら空いているはずだし、発車直前に発券するのだから問題ないだろう。東能代での待ち時間にみどりの窓口で発券してもらった。
※「五能線パス」は2011年3月で廃止されました。

僕はリゾートしらかみには過去2回乗ったことがある。秋田→東能代で「青池編成」に、弘前→青森で「ブナ編成」と奥羽本線内の区間だけで、肝心の五能線区間で乗ったことがないのだけど。
やって来た「リゾートしらかみ4号」は、
「くまげら編成」(秋田駅にて)
2006年登場で一番新しく、乗ったことがない編成に当たった。これで3編成全てに乗車達成!(もうすぐハイブリッド青池が出るけどね)

リゾートしらかみ4号は、五能線内で夕日が眺められ、秋田で最終の東京行き「こまち」に接続するダイヤだけど、シーズンオフのためか、ガラガラだった。それでも観光客がそれなりにいるのだから、五能線の集客力は大したもの。
それにしても、
車内
車内は「かもしか」よりも居住性は高い。
特急でないので白い枕カバーはない(黒いレザー状のものが付いている)が、ほかの設備はすべて「かもしか」以上。
前に大きなテーブルはある(さらに肘掛けに小さなテーブルと、前にペットボトルホルダーもある)し、リクライニングは途中で止まるし、座面もスライドするし、座席の境目にも肘掛けがある。おまけにワゴンの車内販売(珍しいリンゴジュースなど扱っている)もちゃんとあって、至れり尽くせり。
観光列車とはいえ快速だから、この設備に乗車券と510円で乗れるんだから素晴らしい。
座席間隔はものすごく広い(かもしかより30センチも広い120センチ!)し、窓も大きい(特に上下方向)
座り心地はやや硬めで、首都圏の普通列車グリーン車(E231系)などに似ている。

ただし、古い普通列車用ディーゼルカー(気動車)を改造した車両なので、エンジンの振動や高速走行時の揺れなどは、それなりに感じる。
車内は大々的に改装され、普通列車当時の面影は少ない
デッキとのドアも木目調の自動ドアに交換されている。その周囲が、レンガというか茶系統の石畳のような模様になっているのが珍しい。※ブナ編成も同じデザイン。

前乗ったときはなかった自動放送があり、「いなほ」などと同じメンデルスゾーンの「春の歌」のメロディに続いて、新幹線と同じ声の日本語(フジテレビの堺正幸氏)と英語のアナウンスが流れた(内容が微妙に違うので別収録かも)。「Stop after ハチローガタ(八郎潟) will be オイワァケェ(追分)」なんて言うのにちょっと感動。
東能代-秋田間では、特急は森岳と八郎潟に停まるが、リゾートしらかみは森岳は通過し、八郎潟と追分に停まる。大潟村や男鹿の宿泊客の利用を想定しているのだろうか。

途中の北金岡駅で行き違い(列車交換)のため停車。青森行きの「かもしか5号」とすれ違う。
窓の大きさの違いが衝撃的
こっちが大きすぎるのもあるが、かもしか(485系)の窓がなんと小さいことか…

真っ暗な夜なので、車窓を楽しめるわけでなく、むしろ外から丸見えだっただろうけど、快適な54分間の旅だった。
いつも弘前からの帰りは、東能代を過ぎると早く秋田に着かないかと思うものだが、もっと乗っていたいと思った。

弘前のネタは、もう少し残ってます

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