木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

吉田松陰から新成人へ

2009年01月05日 | 江戸の話
新聞で成人式開催のニュースを読んだ。
昔は、成人の日は一月十五日であり、成人式もこの日に行われるのが普通だったが、今はGWに行う地域もあるらしい。
新成人の前で識者と言われる人が挨拶するのだが、今の世の中で胸を張って若者の前で話をする資格のある「大人」がどのくらいいるのだろうか。
勿論、自分を含め、甚だ頼りない。
今から百五十年少し前に、元服する甥に幽閉先から成人の心構えを諭した人物がいる。
二十一回猛士こと吉田松陰である。

凡そ生まれて人たらば 宜しく人の禽獣(きんじゅう)に異なる所以(ゆえん)を知るべし

これは松陰の有名な言葉であるが、口語に訳すると「この世に生を受けたからには、人は動物と違う理由を考えなければならない」となる。
この文句は、「野山文稿」の中の一文で、士規七則と題されたものの第一番目にある文である。原文は歯切れのよい漢文で書かれている。
もともと、この文は松蔭が甥の元服を祝って書いたものであるが、この時、松蔭自身もまだ二十六歳。松蔭は松下村塾の塾長のイメージが強く、老成した人間と想像している人もいるかも知れないが、享年は三十歳であり、死ぬまで熱い思いを胸に抱く若者であった。
この士規七則の内容は、松蔭が常々考えていたことであるが、自戒の意味も込めて書いたのかも知れない。
現代の若者には、ぴんと来ない部分もあるだろうが、ごく大雑把に内容をダイジェストすると、以下の通りとなる。

一.人は生き方の基本が忠と考にあることを知リ得てはじめて、動物と区別される。(*原文下記)
一.天皇が日本を尊い国に足らしめている貴重な存在であることを知らなければならない。
一.質素倹約を心掛けよ。
一.武士道において最も大事なのは義である。義は勇気により行動に移され、勇気は義によって確かなものになる。
一.読書を通じて古今の賢者の言葉を知れ。
一.友を選べ。
一.死而後已。

最後の一句は「死して後にやむ」と読む。
桂小五郎や乃木希典もよく口にした言葉であるが、「死ぬまで努力し続ける」という意味。

松蔭は、上記の七則を要約して、まず志を立て、交友関係を慎重に選んだうえで、読書により先達の知識を学べば立派な成人になれる、としている。
現代でも十分通用するアドバイスではなかろうか。

(原文*)凡生為人、宜知人所以異於禽獣、蓋人有五倫、而君臣父子無最大、故人之所以為人、忠孝為本

先進社 吉田松陰・佐久間象山

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