壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

くらべみん

2010年06月30日 22時44分09秒 | Weblog
          木曽路の旅を思ひ立ちて、大津にとど
          まる比、先づ瀬田の蛍を見に出でて
        此の蛍田毎の月にくらべみん     芭 蕉

 眼前の蛍に見とれながらも、思いは一方、田毎の月に傾いている。いかにも旅に思いあこがれている心がうかがえる作である。
 『更級紀行』の旅に出る前、貞享五年夏の作。

 「瀬田」は蛍の名所。『滑稽雑談』に、
        「江州石山に蛍谷といふ所はべる。この地の蛍火、四月下旬、
         五月節に入りて後十日ほどに、盛りに出る」
 とある。

 季語は「蛍」で夏。

    「音にきこえた瀬田の水に映るこの蛍の風情を、心に深くとどめておいて、
     この秋に見る予定の、更級の田毎の月の風情と、思いくらべてみよう」


      星光りだす空っぽの蛍籠     季 己