壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

愚に暗く

2010年06月20日 21時33分17秒 | Weblog
        愚に暗く棘をつかむ蛍かな     桃 青(芭蕉)

 「愚に暗く」という言い方のおもしろさに加えて、そこに人生一般のことを暗に含めた作意である。こういう寓意的な手法は、荘子の寓言にもとづくものであって、談林の主流をなす手法であった。

 「愚に暗く」は、愚かで思慮の足りない意。夜の暗さを掛けている。
 季語は「蛍」で夏。

    「夜の暗さに、ただ蛍をとりたい一心で、深い思慮もなしに手を伸ばして、愚かしくも
     蛍ならぬ手に痛い棘(いばら)をつかんでしまった」


 おぶせミュージアムへ「荻原克哉展」を観にゆく予定であった。しかし、町会の当番で「形代」の頒布をするため、町会内の家々を一軒ずつ、注文取りよろしく廻らねばならなくなった。
 頒布を終えた午後、少し時間があったので“おぶせ”は無理だが、近間の美術館へ行くことにした。何の気なしに美術展のチラシを見ていたら、「ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち」の最終日が今日であることに気づいた。すっかり忘れていて未見だったので、六本木へ出掛けることにした。
 やはり観て良かった。本物はチガウ! だから画廊も小まめに通わなければ……と、つくづく思う。
 日ごろ、変人などとうそぶいているが、「ボストン美術館展」の名画80点に関しては、常人であると思っている。なぜなら、もっとも心を揺さぶられた三作品が、ミレーの「馬鈴薯植え」、モネの「積みわら(日没)」、ゴッホの「オーヴェールの家々」なのだから。

      七月の藁葺き屋根と白雲と     季 己