壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

口切

2009年12月23日 22時52分41秒 | Weblog
          支梁亭口切
        口切に堺の庭ぞなつかしき     芭 蕉

 支梁(しりょう)の口切(くちきり)の茶事に招かれての挨拶の意がふくまれている。
 場所も深川のこととて、木の間がくれの海も見え、そこに堺の利休居士(りきゅうこじ)指図の有名な露地も、おのずから眼底に彷彿させられたことであろう。

 「支梁」は、江戸の蕉門であるが、詳しいことはわからない。その亭は深川にあったものらしい。
 「口切」は、「壺の口切」ともいい、新茶を壺に入れ密封して冷涼の地で夏を越させ、初冬のころ、この壺の口を切り、茶臼で抹茶にひいて行なう茶事。最も晴れの茶会とされ、茶人正月の名もある。
 「堺」は、大阪府堺市のこと。茶人紹鷗(じょうおう)・利休ゆかりの地。
 「堺の庭」については、『芭蕉句解』に、「泉州堺に利休居士指図の露地あり。句意是等によるか。此の露地は蒼海満々と見え渡りたるを、ことごとく植ゑかくし、手水(ちょうず)などつかふとき少し見せたり。ある茶伝の書に。海すこし庭に泉の木の間かな 宗祇」とある。

 季語は「口切」で冬。堺の庭を通しての利休への思いがそのまま挨拶となっている。元禄五年(1692)の作。

    「口切の席に列してまことに結構な庭を見ることが出来ました。これを見る
     につけ、茶事で知られた堺の庭が、しみじみなつかしく慕わしく偲ばれる
     ことです」


      冬うらら好きで集めし画の五十     季 己