壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

年の暮

2009年12月13日 21時18分02秒 | Weblog
        成りにけり成りにけりまで年の暮     芭 蕉

 謡曲の詞章を生かして、軽い口調でうたいあげたところが作者としての得意の点である。
 師匠の北村季吟も、「としの終になるこころを、成りにけりなりにけりまでといひなせる、ともに感情の所ながら、句は詞(ことば)づかひ一入(ひとしほ)なるべきものなるに、右の重詞(かさねことば)新しく珍重に候なり」と判詞の中でほめている。
 西山宗因にも、「年たけてなりけりなりけり春に又」の作があり、当時流行の発想であったことがわかる。

 「六百番俳諧発句合」に「歳暮」として所出。同書季吟判は延宝五年閏十二月五日と奥書があるので、延宝四年(1676)ごろの作といわれている。
 季語は「年の暮」で冬。

    「謡曲では、『なりにけり、なりにけり』というような繰り返しのことばで
     終わりになるが、一年もすっかりおしつまって、まさに年の暮に『なり
     にけり、なりにけり』というまでになってしまった」


      迫り来る年の瀬 片目だるまかな     季 己