こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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真夜中のお別れ

2010-09-23 22:34:17 | 訪問看護、緩和ケア
昨夜は、「なにもありませんように」という願いもむなしく、浅い眠りから深い眠りへと落ちていく意識の中で、ブルブルと震える緊急電話のバイブに目を覚ましました。

電話の向こうで、妻の震える声は、その時を伝えていました。

このあたりの、深夜2時の街はすっかり眠りについています。
ところどころ、窓に明かりはありますが、道は時たま車がすれ違う程度・・。
ステーションで車を乗り換え訪問すると、娘さんご夫婦も見えていました。

すでに、呼吸をやめてだいぶ時間が経過されたはいましたが、娘さんは涙ながら「酸素を、どうしても外すことができないんです・・。」と訴えました。

酸素をやめる事は、命の終わりを確定してしまうこと・・・

「私が、外しましょうね。」

2台の酸素濃縮器のスイッチををきりカニュレを外すと、穏やかなに眠るお顔がそこにありました。

昨夜、妻に手を握られ、さすってもらって眠りについたそうです。
1時半に目が覚めた時には、もう永遠の眠りについていました。

ベットはあるのに、夜はいつも妻と二人で寄り添って眠っていたのだそうです。

「入院したくない。」
そういって、泣いてハンガーストライキをした方です。
そんなに嫌なら、しょうがないって、体調の悪い妻も了解して、往診医をお願いして・・
I先生が「大丈夫。おうちにいようね。病院になんかやらないから。」って言った時の、満面の笑顔が忘れられません。

O先生もすぐに来てくれました。

「お疲れ様でした。奥様も、娘さんも本当に頑張って、よく最後まで見てくれました。ご苦労様でした。」
そんな言葉を伝えます。

妻は「家で見てやれて、ほんとうによかった。もう、逝ってもいいよ。お父さん。」そう言ってちょっと誇らしげでした。

それから、ご家族のご希望で一緒にお別れの支度をしました。

何を着ていこう?

どれがいい?

畑に行くのが大好きだったお父さん。
いつも、草取りを気にしていたからね。

あんまりきれいじゃないけど、畑に行く恰好にしよう。

そうそう、これこれ。

最後に、畑を見に行った時の格好だね。

泣きはらした顔で、一緒に着替えを手伝ってくれた娘さん。

3時半の夜空は星もなく、車のFMラジオから聞こえる騒がしい会話を止めると、妙な孤独感に包まれました。

思ったよりも早い旅立ちでした。

きっと、妻の体力の限界をきずかって、妻の寝息を聞きながら、早めに旅立ったのでしょう・・。

いつも、旅立ちの時期には、その方の意志を感じてしまいます。

勝手な思いこみかもしれないけど、いつも、そこに意図を感じるのは、私だけなのでしょうか?

幸いなことに今日は休日なので、4時過ぎに布団に入ってから、昼まで眠ってしまいました。

あしたもまた、忙しい一日が始まります。

時代も人も変わっていきます。

私も年を取っていく・・。

知人の訪問看護師が、亡くなっていたことを聞きました。

死は、だれの隣にもあるのだということを、時々強く感じます。

どんな明日になるのかなんて、誰にもわからないですから・・。


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2 コメント

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いや、 (gitanist)
2010-09-27 10:57:30
>勝手な思いこみかもしれないけど、いつも、そこに意図を感じるのは、私だけなのでしょうか?

自分も感じますよ。そういうことをご家族にお話しすると、「そうだよね。」と言われます。

いい旅立ちでといいお見送りでしたね。
返信する
やはりそうですよね。 (こぶた部屋の住人)
2010-09-28 00:29:39
そういう事を感じるというか、メッセージとして受け取るのって、ご家族にとっては、とても救われると思います。

本当に、よいお見送りができたと思います。
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