こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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ちゃんと聞いて欲しい。

2013-05-07 22:26:01 | 訪問看護、緩和ケア
先日初回訪問で、患者さんから「最初にお願いしたいことがあります。」と言われました。

「僕は、言語障害があります。ですから、とても聴きにくいと思います。面倒かもしれませんが、どうか最後まで話を聞いてください。」

ゆっくりと、言葉を絞り出すように、一生懸命そう話してくれました。

多くの医師や看護師が、今まで彼の話を最後まで聞いてくれなかったそうです。

言葉がうまく話せないことと、彼の知的能力とは全く関係ないのに、時にまるで幼児に話しかけるように、幼稚な言葉をかけられることもあるといいます。
そして、大事な話は彼ではなく、付き添っている妻に伝えられるのだと。

まるで手短に伝えよと、言わんばかりに妻に向いて話をする人々。

それは「とても悲しい」ことだと、彼は私に言います。

「僕は、きちんと僕に向き合って、僕の伝えたいことを聞いて欲しいし、僕に話をして欲しいのです。面倒だと思いますが、よろしくお願いします。」


うーん。
こんなお願いをされたのは初めてだし、そんな風に思いながら日々を過ごされている方がいることに、改めてショックをうけました。

障害の重さと、本来持っている知的、文化的な質の高さは全く異なるはずなのに、言語障害や不随意運動を伴うだけで、一番病態を理解しているはずの医療従事者が、そんな差別的な対応を日々しているなんて・・。

それに、知的障害があったとしても、やはりきちんと本人と向き合って、まずは話を聞くところからはじめるのが当たり前のはず。

もしかして、今の今まで自分でも気づかないうちに、隣の人に話しかけていたのじゃないかと、ハッとしてしまいました。

担当をお願いしたスタッフにこのことを伝えると、彼女もショックだったようです。
「そんな風に、感じられていたんですね・・・。」

自分はどんな会話をしているのだろうか。
対話は、相手と対等になされるべきものだと、もう一度心に留めたいと思います。


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2 コメント

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Unknown (とし)
2013-05-08 17:13:27
読んでて涙が出てきちゃいました。
すっごーくよくわかるんです。
話が上手くできないとか、嚥下障害でよだれが垂れてしまうとか…
そんな自分ではどうすることもできないことで、知的な低下があるように扱われてしまうことがあります。
病院などでもあります。
付き添いに向かって話をされるのは日常茶飯事です。
医療職はむしろそれが当たり前のようにする人さえいます。

聞いてくれたとしても…
最後までちゃんと聞かないで、勝手に予測されてしまうこともあります。
まだ途中なのに、「あーわかったよ」と遮られてしまう。
相手は良かれと思っているのだろうけど、最後までゆっくりきいてほしいっていつも思います。
勝手に解釈されてしまって、自分の想いとは違った方向になってしまうこともあります。

ちゃんと聞いてほしい…

同じ経験をしている患者は多いと思います。

なんだか、いっぱい書いちゃってすみません。
ゆっくり話し終わるまでまってあげてください。
そんなことが嬉しかったりします。
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としさん、コメントありがとうございます。 (こぶた部屋の住人)
2013-05-08 22:04:32
申し送りで、スタッフ全員が、少なからずショックを受け、もしかしたら・・という思いで、記憶をたどっているようでした。
何気ない会話のなかでも、目線一つで対話の相手が誰なのかわかります。
もしかしたら、お話をするのが大変なのではないかと、勝手に思い込んでいるのかもしれません。
でも、そうではないのだと、改めて認識しました。
本当にありがとう。
辛い思いを、辛いと言ってくれる人は、実は少ないのだと思います。
対話、対話っていうけれど、大事なのは最後まで相手の話を聞くということですね。
できていると思っていたこと、もう一度見つめ直したいと思います。
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