すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

人質解放より施設解放を選択したアルジェリア政府

2013-01-18 22:01:41 | Weblog
アメリカ・イギリスや日本にも事前通告なくテロリストへの攻撃を始めたアルジェリア政府。1990年代の血塗られたイスラム過激派との抗争を知らない国からは、突然のアルジェリア軍の攻撃開始にはショックと同時に納得できないものがあるにちがいない。私にも昨日からメディアからつぎつぎと取材が入り、電話で説明するのだが、番組ディレクターから、「もう少し希望の持てる話はないのか?」と言われて、ああそうか、日本では真実や現実よりも「なんか前向きな姿勢」みたいなものが期待されているんだと理解した。しかし、国家予算の52%、貿易収入の95%を占めるガス・石油輸出に深刻な影響が予想される主要ガス田プラントの破壊をアルジェリア政府が認めることは絶対にない。失業率25%と言われる厳しい経済状態の中でかろうじてイスラム過激派や地域格差問題を抑え込んでいる現在のブーテフリカ政権は、この事件で、外国人の人質解放よりも国民経済を支えるガス施設の解放を選択したのは、当然の成り行きだろう。
もし、アメリカやフランスの外交圧力でテロリストへの反撃が遅れれば、テロリズムは基本的に劇場犯罪だから、テロ側はメディアを使ってマリやほかのマグレブ・サヘール地域への連帯を呼びかけるだろうし、マグレブのアルカイダはパキスタンやアフガニスタンでの同時多発攻撃を示唆するにちがいない。そうなれば、アルジェリア政府は世界列強とテロリストの狭間に落ちで、国内での指導力喪失そして再び激しい国内紛争が蔓延していく可能性すらある。アルジェリア政府はこの点からも、アメリカやフランスの介入前にテロ掃討に乗り出すほかの選択肢はなかったのだろう。
ロイターやアルジャジーラの報道を見る限りでは、我々も今以上の悪いニュースに直面する心構えが必要となる。軍事ヘリコプターからのミサイルやロケット弾攻撃を受けた車両はもはや車体の骨組みしか残らない。いまだにプラント諸施設での戦闘が続いていることを考えると、被害者の最終情報確認は遅れるのだろうが、このテロ対応を外交問題にせず、あくまで国内の治安対策の定義下で、国家主権を振りかざして掃討作戦を続けるアルジェリア政府も、せめて事件の概要と真実を国際社会に示してほしいものだ。

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