すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

TPPと3年半闘って

2013-12-31 00:44:22 | Weblog
今年もTPPとの格闘一年、部屋を埋め尽くす書類の整理の手をとめて、ふっと年の瀬にこの一年を思い返した。昨年末の衆議院選挙で落選してから、党活動としても、参議院選挙があり、ツルネンマルティ議員の選対本部長として前半はそれに忙殺された。実は、落選をを機会に、一度ゆっくり色々と人生設計を考え直そうと思っていたが、「現職ではなかなか会えなかったので...」と多くの人が会いにきて、つぎつぎと色々な難題・課題が舞い込んできて、あっという間に多忙な365日だった。
海外出張も6度にわたり、そのうち1回は和解と平和構築のテーマだったが、やはり圧倒的にTPPの活動が多く重く、TPP関連でも結局この一年で、アメリカ、ブルネイ、マレーシアそして12月のシンガポールを転戦(写真は日本政府主催のステイクホルダー会合)。

その中でも、TPPへの疑問と不満を高めるマレーシアとのパイプが形成され、ヌルイッザ・アンワル議員やサンチャゴ議員といった、まさにマレーシア政治を揺るがしている反TPP運動の中心人物を日本に呼び、先行する米韓FTAの実害情報などを含め、日本・韓国・マレーシアの参加国NGO会議を生み出したのは、最大の成果だ。後になってみれば、このときが分水嶺だったとわかるはずだ。
この一年膨大な作業量・活動量だったが、それでもようやくTPPの怒涛のような攻勢は食い止めることに貢献したと思う。シンガポールまできて、これまでのように国際NGOのネットワークから情報をもらうだけでなく、その一員として、情報発信し、対応を協議し、さらに状況をアドバイスできるようになってきたと感じている。ある意味、アメリカ側は土俵際に追い詰められていて、だからこそまるで横綱らしからぬ張り手や強引な首投げが登場してきているが、その荒い手の間に隙間がはっきりわかるようになってきた。
まるまる3年半TPPと闘ってきて、日本でもこの貿易システムの構図への認知度も理解度も高まってきたと実感する。今ようやく多くの市民団体、識者、弁護士がTPPのリスクを声高に批判し始めたが、実はそのほとんどは3年前には明らかで、我々が必死にその危険性を訴えていたものばかりだ。
TPPはいよいよ2月の閣僚会議そして4月のオバマ大統領のアジア訪問で、最後のヤマ場を迎える。このすでに死に体と化しているTPPが再び息を吹き返してきて安倍政権いや日本の急所を突き刺さないように、年初から気を引き締めて準備しよう。

ハンナ・アーレントの「悪の平凡さ」はなぜ批判されたのか?

2013-12-26 20:51:41 | Weblog
ハンナ・アーレントはなぜ今、読まれ、そしてその言葉が我々の心に浸み入るのだろうか?
「ハンナ・アーレント」の上映が新宿のシネマカリテでも始まり、ようやく観ることができた。B1の入り口にたむろする同世代。皆髪が白いけど、これが観たいという意思が異様な雰囲気をかもしだしている。若い女性も学生もいて、老若男女入り乱れる不思議な気分。みんな、それぞれの思いと期待で来ているんだなあ!
まるで大河小説のようなアーレントの人生で、1960年のアイヒマン裁判傍聴は一つのイベントにすぎない。アイヒマン裁判のとき、今でも覚えている。戦争から何十年もたって、まだユダヤ人虐殺の犯人を追い詰めるイスラエルの諜報機関に背筋を寒くした。それが1960年だって!虐殺からたった15年後の話だったのか?!15歳の少年にとって15年間のユダヤ人の執念は驚異だったが、この年になると、そんなものは一瞬だったように思える。
ハンナ・アーレントは実物のアイヒマンを観て、何十万のユダヤ人を焼却炉に送り込んだ悪魔の実像が、そこいらじゅうにいる保身と責任回避の小役人と変わらないことに衝撃を受ける。それが「悪の平凡さ、凡庸さ」( Banalty of Evil )だ。想像を絶する残虐な犯罪が日常の凡人によって行われたこと、普通のごくありふれた平凡な市民が人間社会の構造と制度の中で、あれほどの巨悪を平然と行ったことによる、人間性自体に対する彼女の問いかけが、この言葉に表れていると思う。彼女は普通の人が悪魔になる原因を自分の行為がひょっとしたらとんでもない「悪」になるということを「考えないこと」「思考・思索の欠如」にあるとした。
しかし、この映画を観て、ユダヤ人の虐殺に協力したユダヤ人社会があったという話が、このアイヒマン裁判の中から証言されていたことを知った。アウシュビッツをはじめ、強制収容所のあった地域にはユダヤ人社会があり、アイヒマンに協力していたことは知らなかった。だからアーレントは民族浄化という人類の犯罪を、単に個人の人間や集団によるものだけでなく、またユダヤ人だけが虐殺被害者となっているのではなく、ナチスもユダヤ人も含めて、ごく平凡な一般人の中にある「悪」を、いうなれば「悪の普遍化」を指摘したのだと思う。そしてこのことが、ユダヤ人でもある彼女に対して、ユダヤ人の裏切り者としてユダヤ社会の激しい批判が加えられた原因であると初めて理解できた。ユダヤ人だけが絶対的な犠牲者でも被害者でもないという社会科学上の冷静な発見こそ、ユダヤ人だけが被害者であり、だからどんなに他を抑圧してもイスラエルという国を作ることに正義があるのだとするユダヤ人社会からは、絶対に許せないことだった。
逆に言えば、アーレントはユダヤ人虐殺という特殊問題ではなく、我々人間ひとりひとりが「悪」の責任者であるという社会科学上の解明を行い、そのことが、今の世界、今の日本社会に生きる我々に、思考と思索を停止した我々に、一条の光を投げかけているのだ。

南スーダン自衛隊銃弾提供美談の嘘

2013-12-24 20:30:30 | Weblog
南スーダンに韓国軍が展開しているのは当初から、自衛隊とは比較にならない危険地帯だが、そこから自衛隊に弾薬提供を国連経由要請されて、日本がこれまた国連経由提供したことに公式はなっているが、実態は単なる将来の米軍への軍事協力への布石の一石。南スーダンの騒擾と韓国軍への脅威のニュースを見て、官邸の小悪魔かNSCの新米が思いついた悪智恵だろう。
一万発と聞いてすごい量だと思われるかもしれないが、本当の戦闘になれば部隊が消費するのには数日でも数時間でもなく、数十秒の世界。本当に反政府軍と銃火を交えるなら、イラクやアフガニスタンの米軍と同じように、市場に流通している超安価な銃弾を大量調達する。液晶テレビの亀山モデルのような高価な日本製銃弾を戦場で使う馬鹿はいない。南スーダンで使う銃弾はそれこそ、イラクやアフガニスタンあたりから流れてきているのかもしれない。
一方、もともと銃火を交える可能性を否定して派遣している自衛隊PKOからすると、一万発の銃弾を他国に提供したら大変だ。部隊が所持している銃弾の量は任地にもよるが、小生の知る限り、かなり危険なA地でも総量が1万発だった。ちなみに、PKO部隊が所持している銃弾の量は「軍事機密」だ。小生は一浪人だが、公務員・準公務員なら特定秘密保護法で処罰対象か?
南スーダンPKOがどれだけの銃弾を所持して派遣されているか知らないが、もしほんとに一万発の銃弾を他国の部隊に移転したら、それは場合によっては丸裸ということになる。
この話は要するに、韓国軍への銃弾の提供→某国への銃弾の提供→某国への銃を持った人員の提供という、わかりすぎるほど単純明快な路線の起点だということだ。アメリカでよく留守番の子供が親の銃で幼い弟を撃ったりする悲劇が報道されるが、NSCといい、秘密法といい、銃弾提供といい、何かそんな雰囲気になってきた。ともかくはやく今の政権を終わらせないと、この国はどこまで沈むかわからなくなってきた。

タウンミーティングで「民主党→市民政治バンドへ」を説明

2013-12-20 11:30:02 | Weblog
TPPシンガポール会合に急遽出張することになり、タウンミーティングの予定がずれ込みましたが、ようやく14日に日吉の地区センターで開催しました。どんな話をしたの..という質問が多く寄せられましたので、レジメを掲示します。


2013年年末タウンミーティング             日吉2013年12月14日
                            市民政治バンド 首藤信彦
                               sutoband@gol.com
1.民主党離党顛末
2.市民政策バンドと新しい次元の政治
(1)政治の腐敗と退廃の根源としての選挙
   政治活動と選挙活動の混同
   日常活動の意義と疑問
(2)退廃の巣としての地方政治
   自分党・保守化・保身化
   行政との癒着
3.政党の逆機能
(1)定義の無い政治組織→党議拘束、交付金、党員、公認
(2)ローカルパーティ再評価、local-national-globalの新しい関係確立
4.バンド(band)について
(1)ピーター・ドラッカー:オーケストラからバンドへ
(2)人類最初の集団:同じ意思と方向とを持ち自発的に行動する小集団
(3)横浜バンド、札幌バンド(クラーク博士)、熊本バンド(八重の桜)......
(4)ネットワークからバンドへ
(5)金が腐敗と劣化の源泉→カモネギ主義
5.民主主義の土壌改善
(1)国民が悪すぎる
   勝ち取った自由と民主主義 vs 負けて貰った自由と民主主義
   政治教育欠如
   自覚欠如・考えない頭、情報から常識へ
政治教育
(2)政治家を目指す人材が悪すぎる
(3)行動をともなわない認識は、認識しないよりも悪い
(4)地域=国=アジア=世界
6.公民屈起
(1)老若男女の参加、高校生の政治教育
(2)統一地方選
7.とんでもない状況への対応
(1)すぐそこにある戦争
(2)落ちこぼれて行く人と社会

TPP協議:グリーンルーム方式の脅威

2013-12-15 12:22:47 | Weblog
今回のシンガポールでのTPP協議は完全秘密主義の帳の内側で行われ、日本から駆けつけた100名ものマスコミ大軍団も会場や自民党議員宿泊の5・6星の高級ホテルで何の情報も無く右往左往。まるでゴミのような微細な情報を求めて立ちつくしているさまを見ると、ああ、新聞記者にならなくてよかったと思う。学生のころにはあこがれていたんだけどなあ...ちなみに他国はほとんど記者が送られていない。何も結論がでないことが想定されているのに、なぜ金のかかる遠隔地に記者を送る必要があるのか..ということらしい。
今回はもう土俵際に追い詰められたオバマ政権が、横綱の面子も矜持も振り捨てて、乱暴な張り手や俵に足をかけての強引に首投げ、という感じだった。テレビ画面で見るフロマンも一時の大物面から、いまや心なしか縮んで小さく見える。
そのTPP協議が今回多用したのが悪名高き「グリーンルーム」方式。これは1999年のWTOシアトル会議(大暴動になった)から乱用された国際会議方式で、先進国主導運営に反対する発展途上国の交渉担当者を分離し、少数あるいは一人ずつ小ルームに招きいれ、運営側、それに同調する国々で周囲からガンガンにせめて署名させる...というような荒っぽい運営方式だ。それをGreenroomといのは、緑さんが泣きますね。この方式だと、閣僚は問題を把握している官僚や補佐官やさらに通訳もはずされて、孤立した状態に置かれる。それがまあ、このsmall-room open end方式の狙いだからね。
しかし、実は、今回シンガポールでアメリカがグリーンルーム方式で攻めると聞いて、「あ、こりゃ日本側の妥協はないな」と逆にうがった見方をした。そりゃ周囲でガンガン英語で攻められれば、最後は精神的に追い詰められて、妥協したり、自暴自棄になってサインしたりするかもしれないが、国際法務も英語のジャーゴンも人をののしるスラングも理解できない日本閣僚がその場でサインするはずないでしょう..
結果はみごとに日米決裂。フロマンはビジネスクールでnegotiationのレクチャーを取らなかったんじゃないかな?
しかしまあ、これからがアメリカの怖いところで、本来効果を生むはずの小部屋方式が失敗したので、今度は日本の官僚機構に手を突っ込んできて、高度な背景つくりをやるのでしょう。ともかくクリスマス休暇で救われた感もあります。年明けからの米国議会の動きも注目ですね。