(「文春オンライン」の記事より)
「森さんは産経も早稲田も試験を受けずに入ったわけね」五輪汚職だけじゃない…森喜朗85歳の“黒すぎる功績”とは?
終わったはずの東京五輪のニュースが連日報じられています。先日は街でおじさんたちがこんな会話をしているのを耳にした。
「森さんまでいくのかねぇ」「どうですかねぇ」
森喜朗氏の功績をたたえるため、政財界人の15人が発起人になり、胸像制作の募金活動が行われているという。
森喜朗先生は差別や変わらぬ価値観を世界に発信して、今の日本を紹介してくれた。「女性がたくさん入ってる理事会は時間がかかる」などと女性蔑視発言をし、世界を驚かした。
そしてアスリートファーストとは程遠い興行屋たちの五輪の私物化ぶりを見せてくれた。札幌五輪どころじゃない現実を見せてくださった。これら負の功績はすごすぎる。
早稲田大学に入学した経緯
森喜朗先生が胸像を建てられるべき功績はまだある。それは「夢をあきらめない」ことだ。そもそも早稲田大学に入学した経緯が素晴らしいのです。もともと森喜朗青年は早稲田に入るには学力が足りなかった。
《父も学校に呼ばれ「あなたの息子さんは早稲田は無理ですよ」と言われて帰ってきた。父は反発した。「こうなったら仕方がない。意地でも喜朗を早稲田に入れてやる」と言い、早稲田ラグビー部監督・大西鐵之祐先生への紹介状を書いてくれた。》(『私の履歴書 森喜朗回顧録』日本経済新聞出版社)
逆境をはね返す男・森喜朗。父・茂喜は町長であり早稲田のラグビー部出身だった。一般学生とは違う「縁」を利用した。こうしてまんまと早稲田に入ったが、わずか4カ月でラグビー部を退部。
こんな経験があるのに『遺書 東京五輪への覚悟』(幻冬舎)では「途中で投げ出したらそれこそラグビーの敢闘精神に反する」と書いている。なりすまし……いや、なんと素晴らしい精神力でしょう。
産経新聞入社時にも…
次は産経新聞入社について。森喜朗先生は大学の頃にすでに政治家になろうと決めていたのだが、そのステップとして新聞記者という職業に就くことを考えていたという。
《私は早稲田に入るときに父の力を借りたので、就職だけは自力で打開したいと考えたが、私の成績で新聞社に入るのは相当困難なことも事実であった。》(『私の履歴書 森喜朗回顧録』)
大学生時代の森喜朗は安保反対運動に対抗して安保賛成運動をしていた。そこで出会った自民党議員に「君はどこに就職したいのか」と聞かれ、新聞社だと答えると「それなら産経新聞の水野成夫君を紹介してあげよう」と言われる。水野氏は紹介状に目を通し、「わかった。担当者に話しておこう」と言った。
これで入社は決まったと喜んだ森喜朗だが、卒業が近づいても産経新聞社からは何の連絡も来ない。人事担当者に「水野社長はそう言ったかもしれないが、うちは経営再建中で新人の採用予定はない」と言われる。しかし、へこたれない。
「試験は絶対に受けない」と白紙の答案を提出
《しばらくして「採用試験をやるから受けろ」と連絡があった。私は「試験をやって、その成績が悪いのを理由に採用しないつもりだな」と思ったので「試験は絶対に受けない。水野社長との約束を守ってほしい」と言い張った。》(同前)
しかし担当者が「試験を受けないと採用しない」と言うので、《仕方なく試験は受けた。試験では白紙の答案を出し、最後に「天下の水野社長は前途有為な青年をつぶしてはならない」と書き加えた。》(同前)
ここまでくると図々しさに感心してしまう。
2013年12月に出版されたある本で次の箇所をみつけた。
対談相手が「こう言っちゃ悪いけど、森さんは産経も早稲田も試験を受けずに入ったわけね」と尋ねると、森喜朗は陽気にこう答えている。
《そら、ちゃんと試験を受けていますよ。多少は下駄を履かせてくれたと思うけどね。日経新聞の「私の履歴書」でも、ぼくが勉強もしないで入学したということになっていて、大学が大騒ぎした(爆笑)。》
「爆笑」してるのである。怪しい入学方法が持ちネタになっているのだ。なんという図太さ。
森喜朗が講談社を排除して五輪スポンサーにしたというKADOKAWAが、汚職に手を染めていたとなると笑ってすまされない。元組織委会長としてすぐに記者会見をするべきではないか。どれだけ組織ぐるみで腐っていたか? もしくは今回の件は検察の暴走なのか? たくさん説明すべきことがあるはず。五輪には税金も投入されているのだ。森喜朗先生、記者会見をしてください。「時間がかかる」のは大歓迎です。きちんと説明してください。
胸像を建てるのはそれからだ。
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