殺人鬼フジコの衝動 | ||
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読 了 日 | 2013/08/06 | |
著 者 | 真梨幸子 | |
出 版 社 | 徳間書店 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 279 | |
発 行 日 | 2008/12/31 | |
I S B N | 978-4-19-862647-1 |
庫化されてから急激に売り上げを伸ばしたらしい本書を、古書店で買おうかどうか迷っていた。この読書記録を始めたころ、僕はサイコサスペンスにはまっており、よく「目を覆うような惨劇」などと形容される場面には、あまり抵抗なく入っていける。
だが、僕が最も読みたくないのは、陰湿ないじめや、子供が犠牲になる話だ。現実の世界でもテレビや新聞に現れる子供の虐待などは、特に心を痛める話題だ。障害児(僕の息子はもう今年46歳を過ぎたから障碍児でなく障害者だが、僕にとってはいつまでも障碍児である)を子に持つ親の立場として、そうしたニュースにいてもたってもいられない気にさせられる。
先達て、たびたび僕が話題にするBSイレブンの「宮崎美子のすずらん本屋堂」に、本書の著者・真梨幸子氏がゲストで登場した。番組が取り上げた「鸚鵡楼の惨劇」の著者としての出演だった。
画面の隅には「イヤミスの女王」というフリップがあって、MCの宮崎美子氏から、「イヤミスの女王などと呼ばれてどうですか?」と訊かれて、真梨氏は「うれしいです」と応えていた。彼女は人懐こい感じでMCのインタビューに楽しげな様子で、心地よい雰囲気をかもし出していた。
そこで、こんな著者がどんな内容のストーリーを書くのだろうと、ちょっぴり興味が沸いて、図書館で目に付いた単行本を借りてきた。
図書館に行くたびに、「そうだ、初めて読む作家の本は図書館を利用すべきだ」と思うのだが、そうは言っても目的の本がいつでも読みたいときに借りられるわけでもないから、その辺がネックになっている。
「イヤミス」とは文字通りちょっとイヤな呼び方だが、読んでイヤな気持ちにさせられるストーリーが、読者に好まれるとはどういうことなのだをうと、疑問を感じながら読み始めた。
み始めてすぐ、やはり図書館で借りたのが正解だった、という思いが湧き上がった。僕が読みたくないと思っていたような、幼児虐待が事細かに描かれるストーリーに、拒絶反応が起こったからだ。
これはフィクションなのだから、感情移入はほどほどにして、冷静に客観的に読もうと、自分に言い聞かせながらも、生理的な嫌悪感はいかんともしがたい。
事実をもとに女性作家が小説に書いたという、二重構造のストーリーとなっていて、主人公のフジコが母親から受けた虐待を自分の子供に繰り返さないように、と思いながらいつしか同じ行動をとるようになっていく過程も、これでもかといった具合にエスカレートする。
ある瞬間彼女の頭に浮かぶ、それまでをリセットするような感覚で殺人に到るところは、もうなんとも言えない。どうにか自分をなだめながら最後まで読んだとき、ざわめいていた心の幾分かを落ち着かせることが出来たが・・・・いやはや。
しかし、いくら僕がイヤだと思っていても、こういうストーリーを好んで読む人もいるのだから、一概に僕の感覚を押し付けようとは思わない。反対に僕がよかったと思う本も強いて人に勧めるといったことは出来るだけ書かないようにはしているが。本はそれぞれ自分の感性で選べばいいのだ。
同様のことは何度も書いてきたが、本は読んで見なければ好みかどうかなんてわからないから、その辺が悩ましいところなのだ。しかも、僕自身のつたない経験からも、時によって本から受ける感じは違ってくるので、イヤだと思った本も時を経て読み直してみるのも悪くない。まあ、僕などは残された時間がそれほど多くはないから、なかなか再読は難しいが・・・・。
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