聖女の救済 | ||
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読 了 日 | 2013/12/02 | |
著 者 | 東野圭吾 | |
出 版 社 | 文藝春秋 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 375 | |
発 行 日 | 2008/10/25 | |
ISBN | 978-4-16-327610-6 |
頃はあまり取り上げなかったが、僕は毎週金曜日の午後10時からの、BSイレブン「宮崎美子のすずらん本屋堂」を欠かさず見ている。つい先ごろ見た回ではゲストに直木賞作家・村山由佳氏を招いて、最新刊「天使の柩」とそのシリーズ作品について、MCの宮崎氏と話が弾んでいた。
もうすっかりMCぶりが板についた宮崎美子氏は、インタビューの内容もつぼを心得た進行で、作家とのコミュニケーションもスムーズだ。そういえば宮崎美子氏は熊本大学出の才媛だった。常連のコメンテーターや再出演の作家などとのアットホームな雰囲気は、見ていて楽しい。
この回は他に人気作家の中山七里氏も、発掘良本と言うコーナーでお勧め本や、自身の最新刊を紹介するなど、二度目の出演と言うことで、打ち解けた感じをかもしていた。
早いものでこの番組もそろそろ3年になるのではないかな?こんな楽しい番組は長く続いて欲しいものだ、と見終わって感じたので改めて紹介した。
さて七月に読んだ「禁断の魔術」と順序が逆になったが、独立した話だからまったく支障はない。著者の作品、特にこのガリレオシリーズは、人気が高いらしく文庫がなかなかBOOKOFFの105円の棚に並ばないから、105円になったら読もうと思っていた。
ところが先日市内のBOOKOFFで、単行本の105円の棚に本書が並んでいるのを見かけて、買ってきた。
いや、近頃メガネの度数が合わなくなってきて、文庫の小さな文字より単行本の方が読みやすいと思っていたところだったから、なんだか得をしたような幸せな気分になった。
僕の身の丈にあった幸せとはそんな安上がりで、身近に感じられるものなのだ。安上がりに済まそうと思えば、刑事コロンボを見習って、もっと図書館を利用すればいいのだ。と言っても何のことだかご存知でない方もいるだろう。僕が刑事コロンボのどのエピソードを引き合いに出しているか、紹介しておこう。
先のシリーズ45本のうち、第6シリーズ(町田暁雄氏の「刑事コロンボ読本」では第7期となっているが、僕のNHK放送時の担当者のメモでは第6次となっている)の「死者のメッセージ」という、女流ミステリー作家の犯罪を描いたエピソードがある。アガサ・クリスティ女史を思わせるような、ミステリー作家・アビゲイル・ミッチェルが、海難事故で死んだ姪の死因は、その夫・エドモンドの仕業とにらみ、金庫室に閉じ込めて殺害すると言う復讐のストーリーだ。
ミッチェルの新作本が出ると、いつも一番に図書館で予約をするという話を、コロンボがミッチェルに話すシーンがあるのだ。本を買うのでなく図書館で借りると言うのが、いかにもコロンボらしくて、記憶に残っている。
このエピソードも、ファンの間では「秒読みの殺人」同様、女性の犯人と言うこともあって、評価はいまいちだが、僕は好きだ。僕の天邪鬼な性格のせいか?
余分な話がだいぶ長くなった。
ところで、本書は「容疑者Xの献身」に続いての長編ストーリーだ。
そして僕は「容疑者Xの献身」同様あるいはそれ以上の面白さを感じながら読んだのだ。
学の物理学研究室にいながら、同期で刑事になった草薙の依頼を受けて、警察捜査にアドバイスを繰り返し、ガリレオの異名を持つ湯川学の科学の目は、不可思議な犯罪の真相を見抜く力をも、持ち合わせている。
のみならず、このガリレオの魅力は人間観察の鋭さという点にもあるのだ。物理学者という立場から、物事を冷静な目で見通すと言うことが冷たい印象を与えるが、実はその底に人の心の動きも理解する、暖かさを持ち合わせているところが、多くのファンの心を惹き付けるのだろうと思っている。
今回は楽屋落ちとも見える福山雅治氏のCDが聞こえたりする場面もあって、このシリーズが多くのファンを摑みながら、長く続いていることへのサービス?も提供している。
女性を子供を生む機械のような感覚を持つ――男が亜ヒ酸を盛られて死亡する、というのが、今回の事件だ。草薙刑事の後輩として配属されてきた、若い女性刑事・内海薫は、殺された真柴義孝の妻・綾音を端から疑っていたが、彼女は夫が死亡した時刻には、遠く離れた北海道だった。
湯川がこの女性刑事の目の付け所や、捜査方針、ものの考え方などに共感を覚えるかのごとき言動を示し、好意的に接するところも今回の読みどころだ。
だが、ガリレオをしても、「これは、完全犯罪だ!」と言わしめるほどの事件は、はたして解決できるのか、足を使う内海刑事と、科学の目を使う湯川ガリレオの追及は遅々として進まず、苦難の道を歩むのだ。
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