隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0434.奇蹟のボレロ

2003年09月23日 | 全集
奇蹟のボレロ
読 了 日 2003/09/23
著  者 角田喜久雄
出 版 社 国書刊行会
形  態 単行本
ページ数 386
発 行 日 1994/06/20
ISBN 4-336-03562-8

 

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書館で見つけた貴重な1冊。どこが貴重かというと、わが国屈指の名探偵・加賀美敬介のシリーズ作品が、「高木家の惨劇」(157.参照)を除く全長・短編が収録されているのである。
前の「高木家の惨劇」のところで少し書いたが、僕が初めて角田喜久雄氏の加賀美敬介シリーズを読んだのは、高三の頃だった。それまで、横溝正史氏の金田一耕助や、高木彬光氏の神津恭介は結構読んでいて、おなじみの探偵だったが、高木家の惨劇や、奇蹟のボレロを読んで、警視庁刑事のどっしりとしたキャラクターに強い衝撃を受けた。
特に、春陽堂の探偵小説全集の高木家の惨劇に、併催されていた(と思う)「怪奇を抱く壁」に、短編ならではの謎の呈示からシンプルな終結の見事さに感激したことを思い出す。

 

 

上野駅地下街のC食堂で、加賀美の目の前で男がトランクをすり替えた。男はそのトランクを持って駅前の郵便局に入ると、中身を出して小包をつくり宛名を書いて窓口に出した。加賀美はすばやくその宛名を見た。何とそこには、「警視庁捜査一課長・加賀美敬介殿」と書いてあったのだ。
というのが「怪奇を抱く壁」のスタートだ。他には、花屋と併設された上品で家庭的なカフェ-フランスはパリの匂いを漂わせるような雰囲気を思わせる-が登場する「霊魂の足」などは、シムノンのメグレ警視をモデルとしたことから来る著者の好みか?

 

 

書の巻末には、単行本では珍しい解説が載っているが、その新保博久氏によれば、角田氏の加賀美シリーズは1本も映像化されていないという。金田一耕助や、神津恭介シリーズにいたっては、数え切れないほど映像化されているにもかかわらず、なぜだったのだろう。と、僕も不思議な感じがするのだが・・・。
ストーリーが地味だったのだろうか?確かに今読んでみると、時代背景、戦後すぐの時代を色濃く反映しており、さすがに時代色を感じるのだが、決して映像に向いてないとは思えないのだ。
その昔、東映で制作されていた「警視庁物語」というシリーズ映画と一脈相通ずるところがあると思うのだが、もっともあちらは、チーム活動が描かれたもので、加賀美シリーズは単独行動が多いという違いはあるが・・・。当時警視庁物語に出ていた俳優の神田隆氏あたりは適役ではなかったか、と思うが、今となっては・・・・・。

 

収録作
# タイトル 年代 初出
1 緑亭の首吊り男 昭和21年 ロック
2 怪奇を抱く壁 昭和21年 句刊ニュース
3 霊魂の足 昭和23年 宝石
4 Yの悲劇 昭和21年  
5 髭を描く鬼 昭和22年  
6 黄髪の女 昭和22年  
7 五人の子供 昭和22年  
8 奇蹟のボレロ 昭和23年  

 

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