隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0467.競作 五十円玉二十枚の謎

2004年01月09日 | アンソロジー
競作 五十円玉二十枚の謎
読了日 2004/1/9/tr>
著 者 若竹七海・他
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 470
発行日 1993/01/20
ISBN 4-488-02404-1

東京創元社の戸川安宣氏については、前にどこかで書いたと思うが、そのユニークな編集方針で、特に本格ミステリーに向き合う姿勢に多くの本格ミステリー作家たちの共感を得ている(のではないかと、推測する)。
元来、僕は(僕に限らず読者は)ミステリーを読んで、作家には興味を持つが、編集者については、目を向けることはなかった。ところが、北村薫著氏と宮部みゆき著氏の対談などから、あるいは、創元推理文庫の編集方針などを見ていると、ミステリー全般に対して優れた感性の持ち主ではないか、という思いが涌いてきた。
一度、そうした思いを抱くと、事あるたびに、彼のそうした面での活躍というか、仕事振りが目に入るようになって、初めて、作家以外の人のファンになっていった。

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さて、本書もそうした戸川氏の働きの一つとして刊行されたアンソロジーである。しかも、競作アンソロジーという面白い企画だ。女流作家の若竹七海氏が以前、実際に体験したという謎に対して、プロの作家のみならず、一般から公募した解答編をもあわせて、13編を収録したものだ。否、最後にいしいひさいち氏の漫画と14編だ。
さて、その問題編はというと、謎の方だから書いても良いだろう。10年前に若竹七海氏が体験した謎は、大学生だった彼女が書店でアルバイトをしていたときのことだった。書店のレジ係をしていた彼女のところへある土曜日の夕方、一人の男が「千円札に両替してください」と言って、50円玉20枚を出したと言うのだ。そして、その後も土曜日のたびに男は同じように、50円玉20枚を持ってきて、千円札との両替をするように言った、というのが若竹氏が経験したことなのだが、
問題は
1. 何故、本屋で毎週50円玉を千円札に両替するのか?
2. その50円玉は、どうして毎週男の手元にたまるのか?
この二つが問題編の内容なのである。
これに対して、以下のごとくいしいひさいち氏の漫画を除いて、13篇の解答ストーリーが収録されているというわけだ。
この解答編の中で、一般公募から若竹賞に選ばれた、佐々木淳氏は、現在ミステリー作家として「猫丸先輩・・」(343.参照)や、「占い師辰寅叔父さん」(329.参照)でおなじみの、倉知淳氏である。

収録作一覧
# 摘要 タイトル 著者

1 問題編 50円玉20枚の謎 若竹七海
2 解答編   法月綸太郎
  依井貴裕
3 一般公募 若竹賞 佐々木淳(倉知淳)
法月賞 高尾源三郎
依井賞 谷英樹
優秀賞 矢多真沙香
優秀賞 榊京助
最優秀賞 高橋謙一(剣持鷹士)
4 プロ作家 老紳士は何故 有栖側有栖
五十円玉二十個を両替する男
または編集者Y・T氏の陰謀
笠原卓
五十円玉二十枚両替男の冒険 阿部陽一
50円玉とわたし いしいひさいち

 

 

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