河野 啓一/花冠同人

河野啓一の俳句ブログ

11.09.16天の川

2011-09-16 11:12:21 | Weblog
★天の川たゆたう宙を仰ぎけり
★ゴーギャンの問いに応えて天の川
★銀漢や人は何処からどこへやら

好きな句★雲の陰のせて連山澄みわたる/安藤智久 伊豆連山に雲の影が流れゆき、空はあくまで青く澄みわたる。気持のよい大景を力強く描かれた好きな句です。

実物は見たことないが、おなじみのゴーギャンのタヒチでの名作「私たちはどこから来たか。何者か。どこへ行くのか」が中村圭子さんの著作’生命誌の世界’に引用された科学と哲学共通の命題となっていて、ずっと気になっていた。句作をするようになって「天の川」がその答になると気付いた。星の一生が宇宙科学の進歩によって一応のストーリーになってきたようだ。最近読んだ国立天文台渡部潤一Proの ”天文エッセイ「宇宙の事言の葉⑬星]によれば、
・星にも一生があり、太陽は後50億年ほど。宇宙に変わらないものはひとつもない。
・恒星は地球から最小40兆km、星の光るエネルギーは20世紀になって核融合によると解明されてきた。
・例えば太陽の表面組成比は水素75%、ヘリウム23%、残りの元素は2%。質量は地球の33万倍。中心部は1500度2千五百億気圧。この高温高圧で水素原子が2個融合してヘリウムになる。この時所謂質量欠損が僅かに生じ、アインシュタインのE=mc2によりエネルギーとして放出されて太陽を高温の星として保っている。
・水素は有限なので。あと約50億年。ヘリウムは自身の重みで収縮し熱くなって1億度を超えると3個融合して炭素になる。このときも質量欠損でエネルギーを生じる。星の質量によってはさらに炭素からより重い元素へと変化してゆく。いわば天然の核融合炉として次々と元素を作り出してゆく、そして最後が鉄。次第に中心部がつぶれてしまい一気に全体が大爆発が大爆発を起こす=超新星爆発。この、星の最後で鉄よりも重い元素、金、銀、白金、レアメタル、ウランなどが生まれる。
・要するに星は生きている間に核融合によって宇宙に鉄までの元素を供給し、超新星爆発で死ぬときに鉄よりも重い元素を作り出しバラまいている。水素とヘリウムしかなかったモノトーンの宇宙を多様な元素を供給することで今のような世界に変えてきた訳。
・さらに言えば我々生命も星のかけらと言える。地球が生まれるずっと以前、宇宙のどこかの星々作り出された物質が、その星の死に際して宇宙に拡散した。それらが水素ガス雲の中に取り込まれ46億年前に太陽が生まれると、その周りに集まって地球などの惑星を作る材料となった。偶々地球は太陽から適切な距離だったために表面に海が生まれ、その中で星のかけらたちが合成され私たちをはじめとする生命が生み出されたのだ。広大な時空の摂理を感じざるを得ない。