杉の子のひとりごと

私の交友録などを中心に,思いを綴っていきます。

壮ちゃん!

2011年07月13日 | 日記

ある夏の日が終わりを迎えようとした頃のことである。
男は、薄明かりの裏通りを歩いていた。
頬をなぶる風は、生暖かい中にも少しばかり冷気を
含んでいて一杯飲んだ後には心地良かった。

たしか、鼻歌を歌っていたのではなかったか ?
薄明かりの向うから黒い二つの影が見えてきた、
こちらに気が付いた途端、ふたりは無言になった。

距離が段々と近づいてきて、俯き加減の男にも二人の
輪郭が見て取れた、見かけない顔である、
一瞬嫌な予感が脳裏を掠めた、
その内のひとりがツ-ト男に近寄って来た・・・

「何を、がんつけている ?」 彼の口から険な声が
発せられた !
(これは、困ったな !) 男は争いごとの嫌いな人間
である、近寄ってくる相手から後ずさりしながら、
彼の脳は物凄い勢いでどうすべきかを考えていた ?

(もう、こうなったら相手は許してくれまい ?)
(仕方が無い、) これが瞬間の彼の判断である。
男は、あえて弁解しなかった、言っても無駄な事を
雰囲気で察したのである。

「この野郎 !」 まったくもって理不尽この上ない ?
何の悪意も無い人間に勝手に因縁をつけてきて、
突然の暴力沙汰である。

男は、ふたりとの間合いを計算した・・・
相手の右の突きがボクシングのフック気味に飛んで来た、
それを左手で軽く受け流しながら、右の突き中高一本拳を
アッパ-気味にレバ-に入れた。

その時、もうひとりの男の蹴りが股間に飛んで来た、
拳を払った左手を、蹴り足に落とすと同時に右の蹴りを
相手の股間に蹴り込んだ。

多分、1分以内の立会いであったと思う。
ふたりは、男の足元で苦痛に呻いている。
その時になって家々の窓が開いて家人が顔を出して
来た、男はすばやく其の場を離れた。

その時のお月様が何故か脳裏から離れない。
其の後、男が何処へ行ったかは・・・内緒 ?

翌日、町の男たちが噂していた、
ある店で、さんざん飲んで乱暴を働いたチンピラが
夜道で這いずり回っているのを通りがかりの人が
見つけた。

「誰がやったのだろう! よくやってくれた!」
と云うものだった。
その内のひとりが 「 〇〇さん、心当たりはない ?」
と聞いて来たが、男は勿論、知らないと答えた !

結局、誰が正義の鉄槌を下したのか、判明せぬまま、
其の出来事は、ひとの口から忘れられていった。

港町に、まだ遠洋漁業の賑わいが盛んだった頃、
みかん景気に町が潤っていた頃の一幕である。

それからも、腕自慢、力自慢たちが喧嘩の結果を
誇らしげに言い合うのを男は笑いながら聞いていた。

男のポリシ-として、戦果は自慢するものじゃない !
内に秘めてこそ、相手へのいたわり !
この信念は、歳を重ねても変わることは無い。

故郷に夏祭りが近づいて来た、今年の花火はあがる
だろうか ?
浴衣を着た息子を肩車の新町夜市は、
遠い日の夜景・・・ 懐かしいな・・・・・!?

我が友、新町の壮ちゃんが笑って立っていた、
(あの、俺の太陽は、俺を残して先に逝った。)
それを想うだけで、胸がきゅんと来て涙がこぼれる !

「おおい ! 壮ちゃんよ! 逢いたいぜ !?」
窓の外で誰かが呼んでいる・・・?
「Ueさん、泣くなよ ! わしの従弟 Honmma頼むぞ !」

男と、がっちり友情を結んでいる、司法書士H先生の事を
心配しているのである。

「壮ちゃん! 心配するな、お前さんより良い男だよ !」

夏の夜風に、亡き友の声が、むせび泣いていた。・・・。。。

                                合掌


(八幡浜高校柔道部元主将梶田と私上杉は同期の桜である)
           
同期の桜 小金沢昇司・嘉納ひろし・香田晋 1996



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